連載小説「オボステルラ」 【第三章】18話「彼方星の向こうから」(5)
<<第三章 18話(4) || 話一覧 || 第三章 18話(6)>>
第一章 1話から読む
18話 「彼方星の向こうから」(5)
「……」
まだ日も暮れていないが、夕食の準備が完了した。リカルドは石を組んで作ったかまどの焚き火の周りを見つめている。
チビーのソテーに、干し野菜との煮込み、そしてまた例によってゴナンがパパッと取ってきた野草に、なんとリカルドが好物だと言ったユリーネまで見つけてきて、おいしそうな焼き野菜に仕上がっている。そしてこれもまた、ゴナンが見つけた薬草で作った薬草茶。街からもってきたパンも添える。
「…だから、なんなんだ、この豪華な野営食は…。あっという間に仕上がってしまった…」
リカルドが表情を輝かせるのを見て、ゴナンもちょっと得意げだ。
「ああ、お酒も持ってくれば良かったな…。なんだか、もったいない」
「もったいない?」
「うん。この場が、とっても、豊かすぎて」
「?」
リカルドは上機嫌で、早速「いただきます」と野営食に舌鼓を打つ。
「ああ、美味しいなあ…」
「うん、美味しい」
ゴナンもチビーのソテーを食べる。村に居た頃も自分で獲った獲物を調理して食べていたはずなのに、この食事はどうしてここまで美味しく感じるのだろう。ゴナンは不思議に思いながらも、パクパクと食を進める。
「……」
と、リカルドがじっと自分の方を見ていることに気付いた。
「……どうしたの?」
「……」
リカルドは、何かを言おうとして、言いよどんで、やはり意を決したようだった。そして、一旦、椅子から立ち上がって、荷物から何かを持ってくる。
「……あ、この寝袋……」
「…結局、ゴナンの、買っちゃったんだけど……」
おずおずとした表情で、寝袋をゴナンに差し出すリカルド。ゴナンは受け取るのを 、やはり躊躇う。

「…僕はこれを君に使って欲しいんだけど…」
「でも…、こんな高価なの、俺にはもったいないよ。これはミリアに……」
「……」
そう言うゴナンに、リカルドは哀しそうな表情をする。しかし、言葉を続けた。
「……やっぱり、僕に施しを受けているように感じて、抵抗がある…?」
「違うよ。そうじゃないけど、俺、自分じゃ、買えないものだし……」
「……」
パチリ、と焚き火の火が弾けた。リカルドは火の勢いを収めるため、薪を動かす。その横で、思いを吐き出すかのように言葉を続けるゴナン。
「……俺、何もできないし、リカルドが故郷のことで落ち込んでいるときだって、どうしていいか分からなかった」
「……!」
リカルドが少し驚いた表情で、再びゴナンの方を見る。
「俺はリカルドにいろんなことをしてもらってるのに、リカルドのことは支えられないし、巨大鳥探しの役にも立たないし、お金も稼げないし、体も弱くてすぐ熱出すし、戦えなくてミリアを助け出せなかったし…。リカルド、ツマルタに来たときに言ってただろ? 価値があるものが、評価されるって。俺、価値、何にもないから…」
「いや、いやいやいや……」
リカルドはゴナンのその言葉に戸惑って、野営食を指す。
「……まず、まずね。あっという間に、こんな風にそろえられる人、そうそういないから。君は目も耳も良くて勘も鋭くて、そりゃあまだ腕力は足りないかも知れないけど、それなのに身を張ってミリアを守り切った。そんな君が、何もできないとか役に立ってないだなんて、悪い冗談だよ」
「……」
そう言われても、ゴナンは納得していない表情だ。ただ慰められていると思っているらしい。
「お金も大事だけどね。でも、君ができることは、お金じゃはかれないことばかりだよ。まだできないことも多いかも知れないけど、それ以上に君は、できることや、これからできるようになることがとても多いんだよ。もっと自分を誇っていい。できないことを数える必要なんて、ないんだ」
リカルドはそう、説得するようにゴナンにたたみかけたが、そこで一瞬、言葉を止めた。
「……いや、そうじゃないな……」
「……?」
「そういうことじゃないんだ。ゴナン」
リカルドはじっと、ゴナンの琥珀の瞳を見る。空では日が傾き始めてきたようだ。
↓次の話↓
#小説
#オリジナル小説
#ファンタジー小説
#いつか見た夢
#いつか夢見た物語
#連載小説
#長編小説
#長編連載小説
#オボステルラ
#イラスト
#私の作品紹介
#眠れない夜に
