連載小説「オボステルラ」 【第四章 狼煙の先に】 5話「凪の日に想う」(2)
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5話 「凪の日に想う」(2)
「さて、何して遊ぼうかな」
エドワードは、ゴナンと他の子ども達を引き連れて、クラウスマン邸の近くにある広場へとやって来た。ほかに、5歳~15歳頃の男の子ばかり7人が集まっている。
「今日は小さい子もいるから、ちびっ子と遊べるのがいいな…」
「ピックボールにしようぜ!」
「鬼ごっこ!」
「かくれんぼ!」
「ユーミーゲーム!」
「トランプで遊ぶ!」
子ども達が次々にエドワードに希望の遊びを口にする。エドワードはゴナンに尋ねた。
「ゴナン。どれかわかる遊びはあるか?」
無言で首を横に振るゴナンに、エドワードは驚く。
「鬼ごっこもかくれんぼも分からないのか?」
「…あ、でも、鬼ごっこなら、妹とやってたかも…」
といっても、常に鬼役はミィで、ゴナンが少しだけ逃げて必ずミィにつかまってあげるという遊びではあったが。
「そうか! ルールも簡単だから、最初は鬼ごっこにしようぜ! お子様の遊びだけど、仕方ねえ! よし、ルイージが鬼だ!」
エドワードがそう仕切って、同じ15歳のルイージは「がおー」と鬼の振りをし、他の子ども達はわっと逃げる。
「ゴナン、逃げよう!」
「う…、うん…!」
振る舞い方がわからないゴナンを、エドワードが引っ張る。
「ルイージにタッチされたら、今度はタッチされた方が鬼になるんだ。そしたらまた他の奴をタッチする」
「い…、いつまでやるの?」
「飽きるまで!」
そう言って、わー!と思い切り叫びながら逃げるエドワード。ゴナンも戸惑いながら、全力で逃げ始めた。

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「はあ、はあ…」
数十分後。ひとしきり鬼ごっこをし尽くした子ども達が、草むらにゴロンと横になっている。
「あー、疲れた」
「うん…、すごく、走った…」
ゴナンはぐったりと体を横たえている。そして、少しゼイゼイ息が出てきていた。
「ゴナン、苦しそうだぞ、大丈夫か?」
「俺、昨日まで、熱が出てて、体力が落ちちゃってるから…」
「そうだったのか、無理矢理引っ張ってきて、ごめんな」
エドワードははっと体を起こして謝罪した。ゴナンは横になったまま、首を振る。
「大丈夫…。体、動かしたかったし、なんか、楽しかった。一生懸命、追いかけっこしてるだけだったけど」
「そうだな、一生懸命追いかけっこしてるだけだったな。なんだよ、鬼ごっこって。15歳にもなって」
そう言ってわはは、と笑うエドワード。つられてゴナンも少し笑う。
「でもゴナン、足、速いんだな。ビックリしたぜ。すぐ追いつかれちゃった」
「そう…?」
「その、すごく遠い村?では、どんな遊びをしていたんだ?」
「…」
ゴナンはその質問に戸惑った。遊び、というのは、何のことを指すのだろう。
「…妹の面倒を見たり…。畑の草を取ったり…?」
「いや、それは子守りやお手伝いじゃん。遊びじゃないだろ?」
「…兄ちゃ…、兄貴に文字を習ったり…?」
「それは勉強じゃん」
「…晩御飯用のウサギを獲ったり…」
「いや、だからそれは仕事じゃないのか…?」
「…」
ただ走るだけとか、追いかけっこするだけとか、そのような「意味のない」ことで遊んだ記憶がないゴナン。子どもの頃から、毎日、暮らすこと、生きることに直結することしかしてこなかった。考え黙り込んでしまったゴナンを見て、エドワードはニコッと笑った。
「なんかわかんないけど、大変なところで暮らしてたんだな…。まあ、ここでは、ゆっくり遊べよ」
「大変…」
「ゴナン、ウキにはいつまでいるんだ?」
その質問に、ゴナンは体を起こしながら答えた。
「わかんないけど、半月以上はいると思うよ」
「半月以上? だったら、祭の日までいられるかもな」
「祭?」
聞き返したゴナンに応えるように、エドワードの目が輝く。
「もうすぐしたらキィの穂の収穫が始まるんだけど、それが終わるころに収穫祭をやるんだ。いろんな出店が出たり、踊りがあったり、楽しいんだぜ! みんな、この日はちょっとおめかしするんだ」
「へえ…。祭…」
「それまでいられるといいな! 一緒に買い食いしようぜ!」
エドワードは勢いよくゴナンに迫る。とても人懐っこい性格のようだ。ゴナンも勢いに圧されて頷いてしまう。
「よし、約束だぜ!」
そう言ってゴナンと無理矢理指切りげんまんをすると、エドワードは立ち上がり、「よし、次は何して遊ぼうか!」と子ども達に声を掛けた。ゴナンは自分の小指を見つめる。
「約束…」
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その後、かくれんぼをしたり、地面に描いた円の中でタッチを繰り返すゲームをしたり、ただ寝転がってしゃべったりしているうちに、あっという間に日が傾き始めた。
「あ、もうこんな時間か。そろそろ帰らないとな」
そう言って皆に解散を告げるエドワード。そして、ゴナンの体調を気遣う。
「まだ少しゼイゼイ言ってるな。大丈夫か?」
「うん…。熱も出てないし、寝れば治るよ」
「楽しかったぜ! ありがとうな。また来るよ!」
そう言ってゴナンの手を無理矢理上げ、ハイタッチをするエドワード。そして「じゃあな!」と帰っていった。
(…また来るよ…)
エドワードのその約束の言葉を、ゴナンは噛みしめるようにしながら、自身はクラウスマン邸へと戻っていった。
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