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連載小説「オボステルラ」 【第四章 狼煙の先に】  11話「やはり」(4)


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11話 「やはり」(4)


 そのまま、3人で他愛もない話に興じていた。が、心のおりが取れたからだろうか、すぐにゴナンがウトウトと頭を揺らし始めた。

「あら…、眠くなったわね。部屋まで戻れる?」

「うん…。ナイフちゃん…」

 そう言いながらも、睡魔が急激にゴナンを襲ってきている。ナイフは微笑み、自分のベッドの布団をめくった。

「ゴナン、こっちで寝ちゃいなさい。交代で私があなたの部屋で寝るから」

「うん…」

 寝ぼけ眼をこすり、ナイフに誘われるままベッドに入るゴナン。すぐにスヤスヤと眠ってしまった。

「ふふ…。子どものようだな。よく眠るのは良いことだ」

「弟さんを思い出す?」

 ゴナンを優しげに見守るディルムッドの目線に、ナイフが尋ねる。

「そうだな…、と言いたいところだが、キールは18歳までは『王太子の一人』だったから、表向きはキールが主で私が従属する関係だった。私も初陣以降は国境線で戦乱の最中にいることが多かったし、会える機会も少なく、普通の兄弟のような関わりはできていないな。それでも影では『兄上』と慕ってくれていたが…」

「あ、そっか。王子様の影武者だったから。そうなのね…」

 ディルムッドは、少し遠い目になる。

「…だから、キールにしてあげられなかったことを、ゴナンにしてあげたいと思っているのかもしれないな、私は」

「…そうね…。いいんじゃない? それで。きっとお互いのためにも。ゴナンも、すぐ上のお兄さんに対してはお兄ちゃんっ子だったようだけど、それでもあんまり家族に甘えてきていない様子だから。甘えさせてあげてほしいわ」

 ナイフはそう微笑み、さてリカルドの部屋に寝に行こうかと立ち上がろうとしたが、廊下でウロウロしている人の気配に気付いた。ディルムッドも感づいたようだ。思わず2人で吹き出す。

「…大きなお坊ちゃまもお目覚めのようね。仕方ないんだから」

 ナイフはそうつぶやき、部屋の扉を開けた。

「リカルド?」

「ああ、ナイフちゃん…! ゴナンが、ゴナンが消えてしまって…。また行方不明になったら…」

「こっちの部屋にいるわよ」

 泣きそうな表情でゴナンを捜し回っていた様子のリカルドに呆れつつ、リカルドを部屋にいざなうナイフ。

「ああ…、よかった、ゴナン…。でも、なんで?」

「…あなたが自分のベッドに入ってこないって、心配してこっちに相談に来たのよ」

「えっ?」

 聞いて、リカルドは少し嬉しそうな表情になる。

「…何? 違うベッドに寝たのは、ゴナンの気を引くための駆け引きだったの? 馬鹿じゃない?」

「ち、違うよ…。…ゴナンがいなくなっても眠れるよう、独り寝に慣れておこうと思って…」

「……」

 こちらはこちらで、妙に思い込みすぎているようだ。ナイフは少し面倒くさくなりながら、リカルドに説教口調で迫る。

「…リカルド…。あれこれ妙なこと考える前に、ゴナンときちんと話しなさいってば。それで、あなたのモヤモヤの9割は解決するから!」

「えっ? ゴナン、何か言ってた? 僕のこととか、何か…」

「あなたが直接聞かないと、意味がないでしょ? 始終一緒にいるくせに、なんで話も聞けないのかしら…」

 そう吐き捨てるように言うナイフに、シュンとなるリカルド。ひとまず…、とベッドでスヤスヤ寝るゴナンの方に向く。

「…ゴナンは僕らの部屋に運ぶね」

「きちんと一緒のベッドに寝てあげなさいね。ゴナンが心配するから」

「うん…」

 そこは少し嬉しそうに返事をして、眠るゴナンを抱えて部屋を出るリカルド。その姿を見送り、ナイフは苦々しい表情になる。

「…ナイフ…。言いたいことがありそうだな」

「…ええ…」

「…どうぞ」

ナイフは頭を抱えた。

「…好きな相手に告白できずにウダウダしている乙女かっつーの!」


*  *  *

 天気も回復し、翌日より巨大鳥探しを再開した。ミリアとエレーネも参加し、4手に分かれての探索。相変わらず遺跡があるエリアはゴナン・リカルド組以外が割り当てられる。

「誰かを見かけた途端に、鳥と女の子が逃げていってしまう状況は、結局どうするべきかなあ…」

 集合場所で今日の動きを打ち合わせる。リカルドはため息交じりに呟いた。

「もしコビナ衆国人だとしたら、言葉は通じるはずなのよね」

「うん、衆国は、ア王国や帝国と同じ帝語の語圏だから。ただ、閉ざされた部族の方だと例外はありうるかもしれないけどね」

「でも、ともかく、まずは敵意がないってことをなんとか伝えるしかないわね。とはいえ、こちらは投網に投げ縄も準備してしまっているんだけど」

 エレーネが手元の荷物を見ながら、行いの矛盾を指摘する。リカルドは肩をすくめた。

「まあ…。まずは話を聞いてもらう状態にならないとね」

 そうして大体の動きを打ち合わせて、四方に散った一行。リカルドは馬を走らせながら、後ろに乗るゴナンを意識する。

 今朝、起きたら、なんだか表情がすっきりしていたように見えた。ナイフ達と何を話したのかすら聞けないままだが、ゴナンが何かの決断を下したのかもしれないと恐れて、リカルドはさらにゴナンに何も聞けなくなっていた。ナイフがいらだたしげにリカルドを見ていた気もするが、リカルドの心中はそれどころではない。




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