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連載小説「オボステルラ」 【第四章 狼煙の先に】  2話「ウキの街での一騒動」(1)


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第四章の登場人物



2話 「ウキの街での一騒動」(1)



 その後の道のりは平穏だった。あそこまで気合いの入った盗賊は、ア王国ではそうそう現れるものではないのだ。しかしゴナンは結局、道中、熱が下がることはなく、終始、幌馬車で寝込んだままだった。

 そして、ツマルタを出発して4日後。

街道の周辺に、少しずつ畑が現れはじめた。

「もう、ウキの街の区域内に入ったよ。街の中心地まではもう少し距離があるけど」

リカルドが幌馬車の中に声を掛けた。例によってエレーネにもたれかかりウトウトとしていたミリアは、ハッと目を覚まして、窓から外を見る。

「まあ…。自然が豊かで農業が盛んな街だとお城では習っていたけど、本当に広大な畑がたくさんあるのね」




ミリアの言葉にゴナンも体を起こし、外を見てみる。

「……ゴホッ……。すごい、広い…。きれいだな……」

馬車は左右を畑に囲まれた道を走っていた。ゴナンの目の前には、金色の海のように穂が揺れうねる、広い畑が果てなく広がっている。何かの穀物のようだ。ゴナンの不思議そうな目線に気付いて、リカルドが説明する。

「これはキィの穂だね。ほら、僕がよく飲んでいるお酒の原料だよ。もうちょっとで収穫期みたいだ」

「こんなに広くて、水まきとかどうやっているんだろう?」

北の村でも、干ばつ前は畑で作物を育ててはいたが、あそこは村人が食べるだけのものを育てるばかりだった。規模感がまるで違う。

「水路を計画的に張り巡らせていてね、その水の量を調整しながら育てているんだよ。この地域は川や湧き水も多くて土も肥えているし、気候も穏やかで平地が広がっているから、農業がとてもしやすい土地なんだ」

「へえ……」

ゴナンが、高熱でボンヤリとした表情ながらも、琥珀の瞳を輝かせている。北の村に泉が湧いたとき、リカルドが水路の計画を立てていたことを思いだしていた。このような大きな農業ができるようにとの計画だったのかもしれない。

「この街は野菜がとても美味しいんだよ。あと、養鶏が盛んだから鶏肉も美味しい。ストネで食べたクックー肉とかね。食欲が出てきたら、たくさん食べようね」

「うん……」

ゴナンはうなずいて、寝台にぐったりと横になる。ご飯を食べられていないから、また体が細くなってきているようだ。寝具に沈み込むように眠る姿を、リカルドは少し心配げに見ていた。

 それから1時間ほど馬を走らせると、道沿いに住宅などの建物がチラホラと見えて街の景色になってきた。人口3,000人ほどの規模の街で、そのほとんどが農業に従事している。ストネやツマルタほど大きな街ではないが、それでも中心街は活気ある雰囲気だ。木造のお店がいくつか並んだマーケットがあり、人通りもそこそこある。

「ただ、この街は観光客が来るような場所じゃないから、宿屋が1軒しかないんだよなあ…。部屋数はわりと多い宿だけど、もし満室だったら、どこかに野営をするしかないね」

リカルドはそう皆に話しながら、馬車を走らせる。外からの来訪者が珍しいようで、行き交う人々も物珍しげに一行を見ていた。

 やがて、ウキの街唯一の宿屋に到着した。午後も半ばにさしかかってきた頃合い。ちょうどチェックインの時間だ。幸い、部屋は十分に空いているとのことだったが…。ここで一騒動が起こることになる。


 「……ゴナンを泊められないって、どういうことかな?」

リカルドは冷たい微笑みを浮かべながら、宿屋の主人にそう尋ねていた。





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