連載ファンタジー小説「オボステルラ」 【第三章】6話「身勝手な独白」(5)
<<第三章 6話(4) || 話一覧 || 第三章 7話(1)>>
第一章 1話から読む
6話 身勝手な独白(5)
翌朝。
「…あれ…? なんだかベッドが硬いな……」
そう、呟きながら目を覚ましたリカルド。体を起こして見回すと、部屋の様子がいつもと違う。はっ、と一瞬で昨日のことを思い出した。そうだ、酔い潰れてしまって、ナイフに宿まで運ばれてきたのだ。
「おたくのキングサイズの高級ベッドと宿のを比べないでくれる?」
横で、すでに起床して身支度を調えているナイフが、リカルドを冷たい目で見ていた。
「…ちょっと飲ませ過ぎちゃったみたい、ごめんなさいね」
「…いや、僕の方こそ…、いろいろありがとう……」
ベッドの上で少しうなだれながら、ナイフに礼を言うリカルド。そして、今朝もまだゴナンが帰ってきていないという事実に打ちのめされる。
「…水をもらってきましょうか? 流石に二日酔いでしょ?」
「そうだね…。少しぼんやりするけど、大丈夫。水を1杯飲めば、多分すっきりするよ。僕、二日酔いってどんな症状か、分からないんだよね」
「そうなの? 記憶はなくなってない? 覚えてる?」
「もちろん覚えてるよ。お酒を飲むと記憶がなくなるっていうのも、よく分からないんだよね」
驚くナイフ。あの度数の強いキィ酒を瓶で3本は空けているのだ。普通だったら、どんなに酒が強い人でも一日動けないほどの酒量だが、これもユーの民の体質なのだろうか。
「それよりお腹が空いたよ。下の食堂で朝ご飯にしようかな」
「そうなさい。2人も起きていたら、今日の行動を話しましょう」
ナイフもぐっと背伸びをして、下の階へと向かう。ミリアとエレーネは、すでに朝食を食べ始めていた。
二人の姿を認めて、ミリアは鈴のような凛とした声で、背筋を伸ばして挨拶をする。
「おはよう、ナイフちゃん。リカルド、わたくしは昨晩は何も見ていないし、何も覚えていないわ」
「ん? ああ。おはよう」
首を傾げるリカルドに、ナイフとエレーネはクスッと笑う。なんとも素直なことだ。
「…ミリア、それでいいわよ。さて、今日はどうしましょうか?」
席につきながらナイフが切り出した。すぐに、エレーネが話し始める。
「昨日、馬を走らせていたら結局、鉱山に着いてしまったのよ。そこの管理人に尋ねてみたら、周辺は荒野だけど、オアシスのような水場が何ヵ所かあるようなの。リカルドが鳥を見かけた位置の西側にも当たるし、今日はその辺りで張ってみようかと思うのだけど」
「鉱山…」
リカルドがそう口にして少し考える。エレーネはその様子に気付いて付け加えた。
「…念のため、ゴナンのような少年が働いていないかも尋ねて、中を探させてもらったわ。でも、残念ながらいなかったけど…」
「あのツマルタ鉱山は国有地で運営も国の直轄だから、人の出入りはきっちりとチェックされているはずよ」
ミリアも付け加える。相変わらず、国内の様々な土地に関する知識が深い。
「そうか…。そもそも僕はゴナンにまだ、鉱山がどういう場所か詳しく教えてなかったし、もしアドルフさん…、お兄さんに教えてもらって知っていたとしても、初めて目指す場所としては流石に遠すぎるからね」
「ええ、馬でも半日近くかかったから、徒歩だと相当の距離ね」
はあ…、とリカルドは深くため息をつく。
「2人はそれで頼むよ。僕は…とにかく、……街の中をまた、総当たりするよ…」
「…、私は、また卵男の探索も兼ねて、飲み屋街を回ろうかしらね。昨日、オープン前から飲ませてもらったバーのマスターにお詫びにも行かないといけないし」
「……」
皆がそこで無言になる。行き詰まっている。事態は全く好転の兆しがない。いつまでゴナンを探し続けるべきなのか、そんなことも脳裏に浮かび始めている。

(……ゴナン…。僕に愛想を尽かせてしまってたっていい。とにかく、無事で、早く帰ってきて…。そして、ちゃんと話をしよう……)
リカルドはぐっと目を閉じた。彼は神なぞ信じてはいないが、それでも神に祈るかのように、そう願うしかなかった。
しかし、それから10日経っても、未だゴナンは見つからないままだった。
↓次の話↓
#小説
#オリジナル小説
#ファンタジー小説
#いつか見た夢
#いつか夢見た物語
#連載小説
#長編小説
#長編連載小説
#オボステルラ
#イラスト
