連載小説「オボステルラ」 【第三章】17話「盃」(2)
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17話 「盃」(2)
ゴナンはディルムッドに、少しワクワクした表情で尋ねた。
「ディル。武器探しにも行くの? すごく強い剣とか探すんでしょ? 伝説の武器とか? ツマルタには、すごい武器工房もあるんだって」
「ん? そうだな…。まあ、武器はある程度の質のものであれば大丈夫だ。そこまでこだわりはない。どんな武器でも同じだ。できれば折れにくい方が良いが、それも扱い方次第だ」
「え、そうなんだ?」
意外そうにするゴナン。横でリカルドがクスッと笑う。
「…世の中には、こういう武器職人泣かせの御仁がいるものなんだよね、ゴナン。ディルムッド・ショーンが持ってしまうと、どんな鈍でも名剣になってしまうんだよ」
「へえ…」
そう言ってゴナンは、また目を輝かせてディルムッドを見る。
「すごいな…。俺も『どんな鈍でも俺が持てば名剣になる』って、言ってみたい」
「…いや、ゴナン。私が自分で言っているわけではないぞ」
ディルムッドは少しこそばゆそうな顔をした。ゴナンは、ことディルムッドに関しては、憧れのヒーローを見るかのように年相応の反応を見せる。リカルドはそんなゴナンの様子を見て、やはり嬉しそうだ。

「……そうだ…! 俺、今日、リカルドとディルに、ご飯をご馳走する…」
突然、ゴナンがそう口にした。
「? ディルに助けてもらったお礼をしたいの? それだったら僕は関係ないよ?」
「……ううん。リカルドには、今までもいっぱい、いろいろもらってるから……」
「ゴナン、だからそれは……」
そう言ってリカルドはまた、ゴナンに言い聞かせようとしたが、ナイフはそれを止めた。
「…ご飯の1回くらい、いいじゃないの。ゴナンがそうしたいのならね。ゴナンも一人前の男として振る舞いたいのよ。その気概を買ってあげないと」
「……」
ゴナンはリカルドに、訴えかけるような目線を遣る。彼の精一杯の自立心のような、そんな必死さを感じて、リカルドは微笑んで承諾した。ナイフはポン、と手を打って提案する。
「じゃ、せっかくだから、今夜は男子と女子で別々に食事しましょ。ミリア、エレーネ、私達はスイーツがおいしいお店でも探しましょっか。無骨な街だけど、1軒くらいはそういうお店もあるんじゃないかしら」
「スイーツ! 素敵ね! 楽しみだわ」
ミリアが目を輝かせ、エレーネも微笑みうなずく。しかし、ディルムッドが慌てた様子でミリアに立ち塞がった。
「……! ミリア様。毒味役もいないのに、巷のお店に立ち寄るなど…。しかもこれから店を探すとは…。中の構造が分かっていないと、護衛の計画が…」
「まあ、ディル。わたくしはもう何回もお外でお食事をしているし、屋台で買った果物も食べているわ。野に生えている草や木の実だってたくさん食べているし、泉の水も飲んでいるのよ。今更そんな心配、不要よ」
「……」
つい先日、攫われて怖い目に遭ったはずではあるが、たくましい王女様である。ナイフはディルムッドを小突いた。
「あら、ディル。その厳つい風貌で睨みを利かせて、私達の女子会に水を差すつもりなの?」
「じょ、女子会……。しかし……」
「ここにいるのは王女様ではなくて普通のミリアさんよ。普通の市民が狙われて毒を盛られるなんてことはまずないし、私達もいるから、心配しないで」
「……まあ、二人がいれば大丈夫ではあるだろうが…」
それでもまだ、不安げなディルムッド。
「それに、あなたはゴナンにご馳走になるのでしょ? せっかくの厚意を無駄にしてはいけないわ」
そういってゴナンの方を指すナイフ。ディルムッドも、目を輝かせて自分を見るゴナンに視線を向ける。
「…そうだな…。だが、頼んだ…」
「大きな体の割に、あなたは随分慎重というか、臆病なのね 。ミリアに関しては、かもしれないけど」
ナイフは少し意外そうにする。ディルムッドは図星を指されたような顔だ。
「……そうだ。どんなに見てくれが立派に見えても、私は弱いんだよ」
「その弱さの自覚があるからこそ、あなたは強い騎士なんでしょうね」
「……ん?」
そっと呟いたナイフの言葉に、ディルムッドは首を傾げた。ナイフは微笑む。
「じゃ、私達は女子会の会場探しに出発するわね。むさ苦しい防具探しは、男共で楽しんでちょうだい」
そう言ってミリアとエレーネの腕を引き、ナイフは工房街を後にしていく。男共は苦笑いしながら顔を見合わせていた。
ちなみにこの後、無事、スイーツが美味しい食堂に行き着けたものの、バースデーを祝う他の客のサプライズ演出に巻き込まれたあげく、暗い中でケーキを運ぶスタッフが足を滑らせ、エレーネがケーキを頭から被ってしまうという憂き目に遭うのだが、一行はまだそれは知らない。今日もミリアの引きの悪さは健在だ。
↓次の話↓
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