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連載小説「オボステルラ」 【第四章 狼煙の先に】  17話「巨大鳥」(5)


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17話「巨大鳥」(5)


 「…あれ?」

 ふと、ゴナンが左の方を見た。ゴナンは目が良い。その視線の先にはくだんの遺跡があるのだが…。

「…リカルド。なんか、あの遺跡から人が出てきた。たくさん…」

「……」

 『あの遺跡』の単語を聞いた途端、リカルドの意識がまた飛び散りそうになる。ぐっと頭に手をやるリカルド。

「…ひ、人…?」

「馬もあったみたい。こっちに来る。あいつら、あの、帝国人…!」

「……!」

 遺跡とこの泉はそんなに離れてはいない。馬ならあっという間だ。帝国軍人風の男達は、すぐに泉へとやって来た。街を襲ってきた6人が揃っている。

(…こいつら、まだこの付近にいたのか…。そういえばあの遺跡は、潜伏しやすい造りになっていると言っていた。ならず者が根城にしていたこともあると…)

 遺跡の入口の大石を動かしていたのは、ルチカではなく彼らだったのかもしれない。男共は馬を下りると、3人の前で抜剣した。そして、巨大鳥の姿を見て、ゴクリと息を呑んだ。それほどまでに、この鳥は大きいのだ。

リカルドとゴナンも剣の柄に手をやる。

「やあ、久しぶりだね。ゲオルクさんに追い払われていたと思っていたのに、しつこい方々だ」

「うるせえ。この界隈で巨大鳥が飛んでいるのを見かけたため、あの石室に滞在していたのだ。ここなら街からも見つからねえからな。そして今、鳥を見つけた」

 相変わらず、つつけばすぐおしゃべりしてくれる連中だ。リカルドは薄い笑みを浮かべる。

「…だからといって、いきなりこんな小さな少女に向かって抜剣とは、相変わらずマナーも何もなっていない連中だな。僕らが先に、紳士的におしゃべりをしていたんだ。せめて順番は守ってほしいものだけど」

「そんな悠長なことができるわけねえだろう。おい、そこの女。卵はどこだ!」

 そう威嚇する男達に、少女は強い目線でにらみ返す。しかし、いつものように鳥に乗って逃げ出す様子もない。巨大鳥の矢傷を気にしているのだろうか?

 何も答えない少女に、堪え性のない男共は、すぐに剣を掲げ襲いかかっていく。

(…どうしようか。僕らに、彼女を守る義理はないが…。彼らが少女を責めて卵の在処を聞き出すのを待った方がよいのか…?)

 そう思案するリカルド。しかし…。

ガキンっ!

と、鋼のぶつかる音がした。ゴナンが少女の前に立ちはだかり、自らの剣で敵の攻撃を受けていたのだ。

「ゴナン!」

「なんだ、お前? こいつらの仲間か?」

 ゴナンと剣をかわしている男がゴナンを威圧する。しかし、ディルムッドの厳しい鍛錬を受け続けて来たゴナンにとって、この男の剣はすでに受けられる程度のものになっていた。

「仲間…、なんかじゃ、ないけど…。こういうのは、ダメだ…」

「邪魔をするな…!」

 他の男も剣を振りかぶってくる。

(くそ、仕方ない…!)

 ゴナンが少女を守った以上、自分も続かなければならない。リカルドは自らも抜剣して応戦する。

「おいおい、バカの一つ覚えのように斬りかかるだけで、卵なんか手に入ると思っているのか? もっと冷静に行動してはどうだ?」

 ブンと剣を振り、男共を遠ざけて、そう忠告するリカルド。一瞬ひるんだ男共だが、すぐにまた斬りかかってくる。

「こうやって敵国を荒らすのも我らの役目なのだ。そして、卵を手に入れるために手段は選ばない…。何人、死人が出たって構わないのだ。死にたくなければ、邪魔をするな…!」

(敵国…? 荒らす…?)

 戦乱が終わっているはずの今のこの国では、耳に馴染まない台詞だ。おそらく、また余計な情報ヒントを口にしてくれている。その言葉の意味を分析したいところだが、今はそれどころではない。この男達一人一人の腕前は大したことがなくとも、2人対6人だと、流石に多勢に無勢だ。

「…っ!」

 と、ゴナンが少し身じろぐ。敵の剣を受け損ねて腕に傷を負ったようだ。そちらを気にした瞬間、リカルドも剣を受け損ね、胴に軽く斬撃を受けてしまう。

「リカルド!」

「ゴナン、僕は大丈夫だから!」

(しかし、この状況、どうすれば…)

 赤狼煙を上げようにも、荷物は泉の対岸だ。ゴナンをそちらに走らせれば、彼らはゴナンを追うだろうか? しかし、ゴナンが少女を見捨ててこの場を離れるとも思えない。リカルドは後ろの少女に叫んだ。

「ねえ、君! 逃げろ! それか、仲間の…、吹き矢の仲間はここにはいないのか?」

 なぜかその場を動こうとしない少女は、リカルドの言葉に首を横に振る。彼女が逃げてくれれば、まだこの場のしのぎ様はあるのだが。

(くそ、いないのか。肝心な時に…)

 さらに斬撃がリカルドの体に届き始めた。ゴナンも流石に持ちこたえられないようだ。リカルドは足元の砂をバッと蹴り上げ、マントを投げつける。男達は目を防ぎ、一瞬ひるむ。そのすきにゴナンの前に立ち、ゴナンを少女の方に押しやった。男達はすぐに剣をリカルドに向ける。リカルドは、剣だけでなく体で敵の刃を受け、血が飛び散る。

「…リカルド…!」

「君! ゴナンと一緒に、鳥に乗って逃げろ! 早く! さもないと、捕まって、死ぬぞ!」





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