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連載小説「オボステルラ」 【第四章 狼煙の先に】  3話「子ども達」(3)


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第四章の登場人物



3話 「子ども達」(3)



「…ああ、そういえば氷っ子、巨大鳥と言えば…」

と、ジョージがふと何かを思い出した。

「お前さん、ウキの近郊にあるあの遺跡は、見に行ったことはなかったよな」

「遺跡…?」

リカルドは首を傾げる。ジョージはその反応を見て、ため息をついた。

「なんだ、また忘れちまっているのか? お前さんがこの街に来る度に、いつもあの遺跡の話をしているのに、すぐ忘れちまうようだな」

「そうでしたっけ? 巨大鳥と関わりがあるんですか?」

「どうだろうな? 私は専門ではないから分からないが。中の壁画に巨大鳥らしきシンボルが描かれているんだよ。どうやらこの街ができる前からあるようだから、そうとう古そうだが」

「巨大鳥が…?」

リカルドが驚いたようにジョージに尋ねる。巨大鳥に関わる情報を自分が忘れるなんて。

「僕はその話を、先生から聞いていたんでしたっけ?」

「ああそうだよ。巨大鳥と卵と、あとはなにか巨大な樹が描かれている壁画があるって話を、何度もしているんだが」

「巨大な樹…」

エレーネも不思議そうに首を傾げる。

「地域によっては、巨大鳥を畏れ卵を讃え祀るような宗教画があったりもするけど、樹というのは聞いたことがないわね」

「…」

しかし、リカルドの反応が鈍い。エレーネはリカルドの顔を覗き込む。

「リカルド? 何か気になることでもある?」

「…! あ、いや、なんだっけ?」

「……?」

その反応を不思議に思いつつ、ナイフはパン、と手を打った。

「まあ、半月は待ちぼうけしないといけないのだから、せっかくだからその遺跡を調べに行きましょうよ。そんなに昔からあるのなら、何か凄いヒントがあるかも知れないわよ。よく分からないけど」

「その遺跡は調査はされているの?」

エレーネはジョージに尋ねる。

「ああ、シャールメールから大学の考古学の連中が来て、基本的なところはな。まあ、仕掛けがあるわけでもなし、墓があるわけでもなし、何かの巨大鳥信仰を描いた壁画だとされているようだが」

そう言って、3人にニコリと笑った。

「遺跡まで案内したい所だが、明日でも良いかな? 今日は午後いっぱい、ちょっと用事があってね」

「ええ、もちろんよ。どこかにお出かけ?」

「いや、この家にはいるはいるんだが…。そうだ、うちに滞在するのは構わないが、ちょっと騒がしい時間があるかもしれねえから、それは勘弁してな」

「ええ、もちろん大丈夫よ」

そう言って、ナイフはリカルドを見る。3人が遺跡の話をしている間に、リカルドはフラフラと本棚の方へ行って、何かしらの本を手に取って熟読し始めていた。

「…リカルド? 聞いてた? 明日ですって」

「…ああ、ごめん。何だっけ?」

「遺跡には明日、先生が連れて行ってくれるって話よ」

「えっ? 遺跡?」

「…?」

ついさっきまで話していた遺跡のことを、今、初めて聞いたかのようなリカルドの反応。ナイフはエレーネと顔を見合わせる。そして、リカルドの顔を覗き込んで小声で尋ねた。




「…リカルド。体調は大丈夫? もしかして『あの発作』が起こりそう?」

「えっ? 大丈夫だよ。危なそうだったらちゃんと伝えるから。どうしたの?」

「……?」

どうにもリカルドの態度に違和感を感じつつ、ひとまずその場は解散となった。

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 今日は昼食もマリアーナが振る舞ってくれた。リカルドは食後に、マリアーナが作ってくれたカーユと薬を持って個室へ行く。

「ゴナン。またカーユを作ってもらったよ。調子はどうかな」

「うん、なんか、楽になってきた…」

そう言って体を起こすゴナン。額に手を当てて確認すると、微熱程度まで下がっている。

「熱が下がったね。もしかして、食欲も戻ってる? しっかりしたお昼ご飯を作ってこようか?」

「ううん、大丈夫。カーユを食べたい」

そう言って器を受け取り、パクパクとカーユを食べるゴナン。あっという間に平らげてしまった。その様子に安堵するリカルド。

「ねえ、リカルド。寝てばっかりで疲れたから、ちょっと外を散歩したいな」

「そう? だったら僕も一緒に行くよ、念のためにね。薬はちゃんと飲むんだよ」

肌の血色も良い。もう大丈夫そうだと判断して、リカルドはゴナンの身支度を見守った。マリアーナが処方してくれた薬草が、ゴナンにとても合ったのだろうか? ただ、ゼイゼイ息用の薬だと言っていた。ゴナンはこれまで、体調を崩す度に違う症状が出ている。今後も同じ薬が効くとは限らないが…。

(…でも、薬師の先生が身近にいるというのは、ゴナンが健やかに成長するためにはとても恵まれた環境だ。やっぱり、ゴナンをこの街に…)

いつものベストの装いに着替え、バンダナをキュッと巻くゴナンの姿を見ながら、リカルドは浮かんできたその考えを、また無理矢理押しつぶした。





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