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連載小説「オボステルラ」 【第四章 狼煙の先に】  3話「子ども達」(2)


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第四章の登場人物



3話 「子ども達」(2)



「気流…、ま、風だな。そこらでもしょっちゅう吹いているが、これは天気の変化によって吹いたり止まったりする。地面に水平に吹いたり、上に向かって吹いたりな」

「はい…」

「…ただ、それとは別に、雲の上には常に同じ方向に流れ続ける気流があるとされている。渡り鳥を観察していたとある学者がそう感じたというのが、この論文だ。鳥たちがその気流に乗って飛んでいるのではないかと」

「鳥…」

リカルドはその論文が綴られた本を手にするが、どうにも頭に入らず、すぐにデスクに置いてしまう。

「その上空の気流は、具体的にどこをどう流れているかまで、わかっているんですか?」

「大体の流れを予測している者はいるが、はっきりと突き止められている者は、私の知る限りではいないな。少なくともア王国内ではな。それこそ空を飛べれば、一気に解析は進むだろうが。ただ、この地図を見る限り、その予想と比べても矛盾はないようには見えるな」

「そうですか…」

リカルドは地図に目を落とし、落ち込んだように沈んだ声で呟く。

「…水脈に注目した僕の見当違いだったのかなあ…。ストネからは、それだけを頼りに動いてきたのに」

「おい、氷っ子。随分と視野が縮こまっているんじゃないのか?」

ジョージはリカルドに、少し呆れたように声をかけた。

「え?」

「…これは私の予想だがね。水脈か気流のどっちか、ではなくて、両方、という可能性はないだろうか?」

「……あ…!」

ジョージは、ミリアが飛んだルートを記した地図を指さしながら、自らの予想を語る。

「このルートを見て、その空飛ぶ人間が『気流』だと言ったことを鑑みて、そして現在あるかもしれないとされている気流の存在を合わせて見ても、この同じ地域を周回する行動については説明できないように思う。気流というのは、恐らくだが、こんなふうに小っちゃいエリアをクルクル回るものではないだろうからな」

「はい…」

「長距離の移動は気流に乗って、そして目的の水脈の地域についたらそこを周回して、そこで何かの目的を果たしたらまた気流に乗って次の地域へ。私にはそう見えるけどね」

「……」

リカルドはハッとした顔で机上の地図を見る。

「…確かに…。両方、ということはあり得るかもしれない…」



「そういえば、ミリアは…」

エレーネがふと思い出したことを口にしようとして、はっと言葉を止めた。そして、小声でリカルドに続きを話す。

「…ミリアは、鳥に乗っているとき、あまり揺れを感じなかったようなことを言っていたわ。常に羽ばたくのではなく、その、気流?風?に乗って滑空するような飛び方をしていたのかも」

ミリアが巨大鳥に乗っていたことは明らかにしていないため、ジョージに聞こえないように伝えたエレーネ。リカルドは頷く。そして、ジョージに向き直った。

「…先生、ありがとうございます。おっしゃるとおり、両方、関わりがあるのかも知れません」

「ふふ、少し見ない間に、随分、頭かっちんになってるんじゃないか? 氷っ子」

そう指摘するジョージに、リカルドは情けなさそうに笑った。その横でナイフがジョージに尋ねる。

「ねえ、じゃあ、巨大鳥が今後どう飛ぶかの予測はできるのかしら? 先生」

「そうだなあ…。その渡り鳥の研究家の説では、ア王国界隈の空の上の気流はこう流れていると予測されているんだが…」

そう言ってジョージは、ツマルタから南西に向かうルートを指し、その後旋回させてウキの街方面へと指を滑らせる。

「…ということは、やっぱり、今は帝国のオルステッド村付近にいる、という可能性が高いわね。その後、この付近にやってくる…?」

「まあ、この気流の存在が確かだったら、だけどな? 地べたから天を見上げて渡り鳥を追っかけながら予想しているに過ぎない情報だから」

「……」

リカルドは腕を組んで思案した。ルチカは恐らく、巨大鳥を追って帝国まで行っているだろう。それに、卵のためならば強硬な手段を厭わない帝国軍人達の母国でもある。しかし、今までだって彼らは巨大鳥を捉えることはできていないのだ。慌ててそちらを追うよりも…。

「…先生…。この予想で行くと、ウキの街付近に巨大鳥がやってくるのは、大体、半月後になりそうです。それまで滞在させていただいても構わないでしょうか? もちろん、宿代はお支払いしますので…」

「だから、それは気にしなくて構わねえよ。当分、来客の予定もないしな。私も妻も、人が多くて賑やかなのは好きなんだ。教え子とその仲間となれば、ひとしおな」

そう言ってニッコリとしわくちゃに笑うジョージ。

「でも、お世話になりっぱなしだと申し訳ないわ。ちゃんとお部屋の掃除も家事もするから。それに、たまには私たちがご飯を振る舞うわよ、先生」

「おお、それは楽しみだなあ、ナイフちゃん」

ナイフは厚い胸板を張って、ぐっと力こぶを作った。





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