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連載ファンタジー小説「オボステルラ」 【第三章】4話「ゴナンが消えた」(6)


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第三章の登場人物



4話 ゴナンが消えた(6)


 夜。

一行はリカルドの拠点にまた、集合している。

「工場街の方だけど、今日、話が聞けた工場では、ゴナンらしい子が来たっていう場所はなかったわ」

 まず、エレーネが報告する。テーブル上には、ナイフが飲食店街で買ってきた総菜が並ぶ。本当は食事に出ようとしたのだが、草原から帰ってきたリカルドの様子がますますおかしく、拠点に引き上げることにしたのだ。食事をしながら話しているが、リカルドは料理に全く手をつけない。

「今日はね、製鉄工場をいくつか回ったの。今、日雇いの工員の募集はしているんですって。最近とても忙しいから、そういう子が来てくれたらとても助かるのに、っておっしゃっていたわ」

 ミリアがしゃんと背筋を伸ばして、付け加える。彼女も食事に手を着けていないが、恐らく話し終わってから食べるのであろう。本当に隅々まで礼儀作法がきちんとしている。

「へえ…。今、繁忙期なのかな? 何か大口の発注があっているのか…。大体、この街の製鉄所が忙しくなるのは戦の前っていうのが通例だけど」

「…そうね…。でも、我が国では、今はそのような動きはなかったはずだわ。この3ヵ月でなにか状況が変わっていなければだけども」

リカルドも会話に参加しては来るが、やはり声音が暗い。ナイフはまた、パンを取ってリカルドの口に突っ込む。

「…うっ。ゴホッ」

「これを1個食べ終わったら、そちらの報告もよろしく」




ジロリとリカルドを睨むナイフ。リカルドは少し肩を落としながら、パンをもぐもぐと食べ、水を飲む。

「……ゴナンは見つからなかったし、なんの痕跡も見つけられなかったけど、巨大鳥を見たよ」

「…へえ、巨大鳥…」

スルーしようとしたナイフは、ハッとリカルドを見る。

「…! え? 巨大鳥?」

「うん…。僕の頭のすぐ上を飛んで行ったよ。ミリアの地図から得た予測は正しかった。巨大鳥を先回りできていたんだ、僕らは」

そう言うリカルドの顔は暗い。劇的な出会い、発見のはずなのに、人生の多くを巨大鳥探しに費やしてきた人物の表情には見えない。

「西の方に飛んで行ったよ。川に向かったか、もしくはその向こう側に水場があるのかもしれないね。しかも、ストネでちらっと見かけた、もう1羽らしき姿もあった」

そう語る口調も、とうてい嬉しそうではない。ミリアは首を傾げる。

「リカルド、馬で巨大鳥を追えなかったの?」

「…」

その言葉に、リカルドはうつむいた。

「うん、そうだね…」

「…?」

「追わなかったんだ」

ミリアはさらに首を傾げて、ナイフを見る。とにかく昨日から、リカルドらしからぬ言動が続いているのだ。ナイフはリカルドに尋ねる。

「何かにつけて鳥、鳥、鳥!だったあなたが、どうしたの?」

「…だって、僕、鳥を見た瞬間、今、自分がゴナンを探している最中だってことを、忘れてしまったんだよ…。そんな自分に、絶望して…」

「……」

「それに…。そうだ…、巨大鳥を見たってことは、やっぱり、ゴナンの身に何かが起こっているのかもしれない…。不幸を振りまく、鳥の、呪いが…」

「……」

ナイフはまた、少し苛ついた表情になり、うつむいたままのリカルドの頭を割と強くはたいた。勢いが強すぎておでこをテーブルにぶつけてしまう。「きゃっ」と驚くミリア。

「リカルド。あなた一体どうしたのよ。普段のあなたなら絶対に口にしない台詞のオンパレードじゃない。そもそも、仮に巨大鳥の呪いがあるとしたって、順番があべこべ。つまり、ゴナンとは、全く、何も、関係ないわよ! 気にしないこと!」

「……うん…」

テーブルにおでこをつけたまま、リカルドは小さく答える。エレーネはそんなリカルドをさておいて、ナイフに尋ねた。

「…飲み屋街の方も、特に情報はなかったのね?」

「ええ、ゴナンの情報はね。ただ、こっちは巨大鳥の卵がうろちょろしてるっていう情報が来たわよ」

「え?」

ミリアとエレーネは思わず声を上げる。リカルドもはっと顔を上げた。

「おかしなものよね、鳥や卵探しを中断してゴナンを探し始めた途端に、そっちの情報が入ってくるなんてね」

「卵がうろちょろって、どういうこと?」

リカルドが思わず尋ねる。

「飲み屋街を大きな卵を背負った男がうろついているんですって。それが巨大鳥の卵だって、このおとぎ話を信じる人たちの間で話題になっているみたい」

「…男…?」

「といっても噂ばかりが広がっていて、実際にその男を見たっていう人には会えていないんだけどね。ちょっと眉唾のような気もするけど…」

リカルドの表情が、さらに硬くなる。ゴナンも探さないといけない、でも巨大鳥も、卵も…。リカルドをせせら笑うかのような今の状況に、何を優先させればいいのか、全く判断がつかない。

「ゴナンか、鳥か、卵か……」

呆然と、リカルドは呟いた。

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