連載小説「オボステルラ」 【第四章 狼煙の先に】 13話「子ども達の姿」(6)
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13話 「子ども達の姿」(6)
翌日も、巨大鳥の気配すら見つけられなかった。
夕方に屋敷へ戻ると、またゴナンが「おかえりなさい」と出迎えてくる。
「ただいま、ゴナン、戻ってたんだね。楽しかった?」
「うん…。エドのお母さんがご飯をたくさん作ってくれてさ。本当に、食べきれないくらい。村で食べられなかった分も食べなさいって。すごく美味しかった。それで、エドと、夜中までいっぱいしゃべって、今日はキィの収穫を手伝った。エドは遊びたがってたけど。あんなにたくさんの作物を一度に作れるなんて、すごいね。エドはサボりたがりだけど、でも収穫作業はすごく上手でさ。鍬の使い方も習った」
リカルドが相づちを打つ暇も与えないほどに、まくし立てるように話すゴナン。珍しく言葉数が多い。相変わらず表情は変わらないが、瞳は輝き、頬が紅潮している。少し日に焼けたような気もする。その健やかな雰囲気にリカルドはにっこり微笑んでうんうんと聞いて、ゴナンの肩に手を添えた。
「よかったね。ゴナンが楽しそうだと、僕も嬉しいな」
「今日、夕食作り、俺も手伝ったから」
さらにゴナンが目を輝かせる。それを聞き、ミリアがスッと出てきた。

「まあ、楽しみだわ。わたくしも食卓の準備を手伝うわ。お茶を淹れるわね」
「あっミリア、今日は疲れただろうから、君は休んでいて大丈夫だよ。ゴナンは今日は、鳥探しに出ていないから、ね」
リカルドが慌ててそう、ミリアを止める。ミリアはやはり、少し不満そうだ。しかしすぐに、はっと思い出す。
「そうだわ、ゴナン。あなた、この前、剣の傷を受けてしまったときに着ていた服、まだお直しはしていない?」
「あ…、うん。洗ったまま、放っておいた」
帝国男達が襲ってきた日、ゴナンは少し斬り傷を受け、上衣の両腕に何ヵ所か切れた箇所ができてしまっていた。リカルドはその服を捨てようとしたが、ゴナンが「直せば着られるから」と丁寧に血抜きをして洗っていたのを、ミリアは見ていたのだ。ミリアは大きな目を輝かせ、背筋をしゃんと伸ばす。
「では、わたくしがそれを直すわ。お城でも刺繍を習っていたの、針の扱いはまかせて」
「いいよ、自分でできるから。ミリアにそんなこと、させられないよ」
ゴナンは遠慮するが、ミリアは食い下がる。
「させられる、ではなくて、わたくしがしたいの。ね?」
「……」
ゴナンは少し困った表情で、リカルドを見た。リカルドは少し考える。
(…針…。…ディルの話だと、自分で刺繍したり縫ったものを王太子へ贈っていたそうだし、王太子もその出来を褒めていたそうだから、さすがに大丈夫かな…?)
「ゴナン、せっかくミリアがこう言っているんだから、甘えたら?」
「…え?…うん…」
「わたくしが縫うのは、イヤかしら?」
「いや、それは嬉しいけど…。…いいのかな…?」
「でしたら、任せて!」
ミリアはそう張り切って、そしてマリアーナに針と糸を借りるべく屋敷の奥へトコトコと駆けて行く。呆気にとられているゴナンとリカルドの元に、苦笑いのディルムッドがやってくる。
「…ミリアは、なんだか張り切っているね」
「…というより、自分が足手まといなのではないかと、不満、というか不安であられるようだ。とにかく、何かの手伝いをされたいご様子だ」
「ああ…」
とにかくミリアの“引きの悪さ“の実害を受けたくないがために、周囲がミリアの行動をそれとなく、いろいろ制限していることに、いい加減彼女も気付きつつあるようだ。
「ご本人は、『自分が王女だからと何もさせてもらえない、今は普通のミリアなのに』とご不満の様子であられるが」
「…とはいえ、試しに淹れてもらったお茶は、まあ、なかなかの泥加減だったものなあ…」
怖いもの見たさで、一度、ミリアにお茶を淹れてもらったリカルド。意味が分からないほどにドロドロに仕上がったお茶を思い出し、くすりと笑った。この縫い物ならば特に危険もないだろうし、彼女の特技を生かすことにもつながる。ミリアの気が済むのならそれでいいだろう。
(ミリアも、一時も立ち止まっていたくはない。そんな感じだな…)
リカルドは遠い目で、その後ろ姿を眺めていた。
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