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連載小説「オボステルラ」 【第四章 狼煙の先に】  15話「祭」(5)


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15話「祭」(5)


 一方、ルイージら他の少年達は、ミリアを誘いに行こうかとモジモジしている。しかし、スッとした立ち姿のミリアから溢れ出る高貴なオーラを感じてか、なかなか声を掛けられない。結局、誰も勇気が出せなかったようで、大人しく引き下がっていき、ミリアはポツンと1人になってしまった。少し羨ましそうに、踊るエレーネやディルムッドを見ている。

 と、ゴナンがそんなミリアの前に来て、ずいっと右手を差し出した。

(…おっ…?)

 さっきまで踊らないと言っていたはずのゴナン。予想外の行動に、リカルドは驚く。ミリアも意外そうに、ゴナンに声をかけた。

「まあ、ゴナン。どうしたの?」

「いや…。一人ぼっちになってたから…」

「…」

 寂しそうにしているミリアを見ていられなかったようだ。ミリアはそのゴナンの手をじっと見て、そして自分も右手を差し出す。

「でも、ゴナン、踊れないのではないの?」

「…あ、そうだった。どうしよう」

 今さら気付いたゴナン。我が身はともかく、とにかくミリアを放っておけなかったようだ。そんなゴナンの様子にミリアはふふっと微笑み、そして右手をゴナンの手に預けたまま、左手でスカートの裾を持ち上げ、優雅なお辞儀をした。

「ゴナン様、ダンスのパートナーをお受けしますわ。さあ、参りましょう」

 そう、貴族然とした言葉遣いで微笑むミリア。一瞬この場が、舞踏会の会場になったかのようだったが、そんな雰囲気を知らないゴナンは、自分が誘ったはずなのに慌てるばかりだ。





「…あ、うん…。でも、どうやって踊れば良いか…」

「あの中に行ってしまえば、何とかなるのではないかしら」

 そう言って、ゴナンの手を引っ張り、ダンスの輪の中に連れ出すゴナン。ミリアは楽しそうに、周りで人々が踊る様子を見る。

「…ほら、そんなに難しくなさそうだわ。こう、足を交互に出して、離れたり、近づいたり…」

「あ、うん…。おっと…」

 ミリアは流石の王女様で、舞踏会などで踊るダンスとは違うはずだが、素晴らしく品のある動きですぐに街の踊りを身に付けている。ゴナンはそんなミリアにリードされながらも、持ち前の器用貧乏ですぐにそこそこ真似できるようになってきた。

「…わ、なんか、分かってきた…」

「まあ、上手よ、ゴナン。その調子なら、ワルツもタンゴもすぐに踊れるようになるのではない?」

「…え、何? ワルツ? タンゴって…」

「ふふっ…!」

 ミリアは楽しそうにしている。そんな様子を見て、ゴナンもホッとしたような表情を見せた。そして、踊れるようになってくると、自身も少し気持ちが高揚してくる。

「…音楽に乗って動くのって、こんなに楽しいんだな」

「そうよ、ゴナン。音楽もダンスも素晴らしい文化なのよ」

「ふふ…、ははっ」

 珍しくゴナンが笑顔だ。ミリアの両手を取りながら、スムーズにクルクルと踊っている。リカルドとナイフは、そんな2人の様子を微笑ましく眺めていた。

「とんだ王子様が現れたものだ」

「ほんとね。可愛らしいわね」

 その時、ダンスの輪とは反対側の方で、「きゃっ」と声がした。思わず振り返るリカルド。あれは…。

「…ルチカ…?」

「えっ?」

 ナイフも驚いてそちらを見る。ルチカが、長い黒髪の女性の腕を勢いよく引っ張っており、その女性が驚いて声を上げていたのだ。しかしルチカは、女性の顔を確認すると、「人違いでした、失礼」と頭を下げている。そして賑やかしいダンスの場に一瞥もくれず、その場を通り過ぎようとしていた。

「…ルチカ…!」

 思わずルチカを追うリカルド。危ないのでは、とナイフは引き留めようとするが、構わずリカルドはルチカの元へ行った。

「ルチカ! ケガは治ったの? 体調は大丈夫?」

「…!」

 ルチカは2人の姿を見ると、少し不機嫌な表情になる。

「…ご心配ありがとう。おかげさまで。じゃ」

「君も祭を楽しみに来たのではないの? ほら、みんな楽しそうに踊ってるよ?」

 今までのあれこれをさて置いて、リカルドがルチカを取り込もうとしているらしい様子に、ナイフはコッソリと嘆息する。ルチカはチラリと会場の方を見たが、すぐに目線を戻した。

「ああ…。なんか賑やかだと思ったら…。私は食料を買いに来ただけだから。じゃあね」

「ルチカ、祭だよ、楽しいよ」

 機械見たさか、さらにルチカを止めようとするリカルドだが、ルチカはめんどくさそうな表情を返すだけだ。

「…あんまり、そういうのに興味ない。時間の無駄だしね。宿に戻ってメンテしたいの。じゃあね」

「あ…、そう…。ん? 宿?」

 そう言い捨てたルチカに、流石に諦めるリカルド。しかし、宿の主人はルチカのような男性は泊まっていないと言っていたはずだが…。そのままルチカは去って行った。

「…なんというか…。あの子は何かと、変わってるわね。こんな楽しそうな現場なのにね。…ていうか、彼に盗まれた遺跡の資料、取り返さなくてよかったの?」

「ルチカは、さっきの巨大鳥には気付いてなかったみたいだね。ああ、彼と協力できればなあ」

「……」

 こんな祭の最中でも、やはり遺跡の話題は完全にスルーし、残念そうにするリカルドを、ナイフは興味深げに見ていた。



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