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連載小説「オボステルラ」 【第四章 狼煙の先に】  9話「どちらが先か」(5)


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9話 「どちらが先か」(5)


 ルチカはさらに、ご丁寧にも説明を続ける。

「光る時の副石の成分調べて、他にもいろいろ試したの。そしたら、空気を放出させる反応を示す石が見つかってね。北方の国の鉱山から取り寄せたやつだったんだけど。発光石と同じように燃料消費なしで永続的に放出するから、結構すごいんだよね、これ。いろんな動力になりうるから。もうちょっと放出量が強ければベストだけど、それも副石の改良次第で向上の余地はある。で、その空気圧で棒が伸縮する仕組みを作ったの。中をどう密閉させるかと、縮ませる方の仕組みがネックだったんだけど、バネを入れて縮んでいる状態にこう固定して、空気圧で伸びるように風量やバネの強さをを調整して、あとは切り替えボタンの仕組みと空気放出の穴を工夫して、静音性はオイルを噛ませてるけどこの粘度が…。でもかなり小まめに手入れしないと、いつもあのようには動かないから、あとはバネ自体の強度と、そもそも剣にも対抗できるほどの躯体の丈夫さも……」

 と、棒の伸縮を操作しながら早口で長々と説明し始めたルチカ。リカルドは相づちを挟む隙もなく、呆然と聞いている。



「リカルドさん、聞いてる? 尋ねたのはそっちデショ?」

「あ、ああ、ごめん…」


 この類の話題であのリカルドを黙らせるなんて、ルチカもなかなかね、とまたほくそ笑むナイフ。

「…で、この棒の試作段階で、駆体の強度が足りなくて空気が外に放出しちゃったの。失敗だったんだけど、その空気の勢いがあまりに凄かったから、コレはコレで使えるって閃いて、空気の圧を飛ばせるように改良したのがこの空気砲。あの『銃』は、中で火薬を爆発させた勢いで金属の玉を飛ばして、目標物を撃ち抜くものだって聞いたよ。全然、違うデショ」

「あ。ああ…。そうだね…。似て非なるというか、でも違うけど結果、同じ方向に向かってきたというか…」

 リカルドは少し気圧されたまま答える。

「じゃ、空は? この翼は?」

「これも発光石。大きいのを入れてて、空気の噴射力を推進力にして飛び上がるの。本当はこの噴射力だけで飛べればいいんだけど、パワーが足りないし構造ももっと複雑になるからそれはちょっと保留中。で、肝はこの羽根の設計で、なるべく小さくしたかったんだけど、この形に行き着くまでなんども墜落した。上空で気流に乗って滑空するからコントロールする必要がある。素人では扱うのが到底難しいし、私だって相当、大怪我したんだからネ」

「これも、発光石…」

 リカルドは、これまで以上の好奇心の光を瞳に宿して、ルチカの翼の機械を見ていた。感激、いや、感動だ。あまりにも新しい世界だった。が、リカルドは首を傾げる。

「…ルチカ…。僕はいろんな国を旅して回っているけど、これだけの仕掛けは見たことがない。発光石がより強く光る仕組みや光る以外の反応だなんて、大発見だよ。それに人間がその身1つで空を飛ぶなんて、例え訓練が必要だとしても、世の中が変わる。これらだけでも、君は若くして偉大な発明を成し遂げた機械士として名を馳せられるし、やりようによっては国に迎えられ高位な階級を得ることだって、億万長者にだってなれる。この技術を周りに売ろうとか、考えないの?」

「…全然、興味がない。これは全部、卵を手に入れるために開発したものだから。私以外の人に使わせるつもりも、私から積極的にこの技術を広めるつもりもないし。まあ、他の人が同じことを思いついて開発できるんだったら、それはそれでどうぞ、って感じだケド」

「…?」

 機械の仕掛けを語るときは少し生き生きとしていたルチカの表情が、また厳しいものに変わる。ルチカが翼の機械から離れるよう指示し、リカルドはナイフ達の方に戻ってきた。

「ねえ、僕たちは協力できるんじゃないかな? 僕らが鳥を先回りできていたことは、君も見ただろう? 何やら荒っぽい連中も卵を追っているようだし、君も一人で立ち回るのは大変ではないかな?」

「はあ? 冗談! 協力なんてありえない。仮に協働したとしても私は絶対、抜け駆けするよ。大体あなた達こそ呑気に徒党組んで頑張ってるけどサ、もし卵を手に入れたらどうするの? 仲間で取り合い? だまし合い?」

「……!」

 そのルチカの指摘に、一同はぐっと言葉につまる。しかしリカルドは、微笑みを浮かべて反論する。

「…そんなことをしたくないから、僕らは先ず、巨大鳥とそこに乗る女の子を追っているんだ」

「…?」

「巨大鳥も、鳥という生き物だろう? 鳥が一生のうちに1個しか卵を生まないということがあるだろうか? それに、卵を生むということは、巨大鳥が次々に生まれていっているということだよね。その生態を知ることができれば、無理矢理、奪うように卵を手に入れる必要だってなくなるかもしれない」

「…ふうん、そういうこと…。ご立派なお考えで」

 また余計な情報を教えちゃって…、とナイフは少し呆れ顔だが、リカルドは本気でルチカに味方になって欲しそうだ。ルチカの反応を見守った。






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