連載小説「オボステルラ」 【第四章 狼煙の先に】 9話「どちらが先か」(4)
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9話 「どちらが先か」(4)
「私のこの空気砲のほうが『先』なの!」
ルチカはいらだたしげに、空気砲を指しながら答えた。
「あの『銃』を真似して作ったわけじゃない。そもそも、形は似てるけど、発想も仕組みもまったく違う武器なんだから!」
「先…?」
「そう! これは私が子どもの頃から改良に改良を重ねて作ったものなの。信じられないなら、パパに聞いてよ! ディルさんは面識あるデショ?」
「パパ?」
ナイフが首を傾げて、ディルムッドに尋ねる。
「…機械士のゴードン・ロスという人物だ。元々、国王陛下に呼ばれてゴードン殿が城に出入りしていた関係で、その子どもであるルチカも出入りするようになったと聞いている」
「へえ、親子2代で王族のお抱えなんて、よっぽどの技術力なのね…。で、ルチカのフルネームはルチカ・ロスというわけね」
とはいえ、もちろんディルムッドがゴードンに訊きに行くというのは現実的ではない。それでもディルムッドは納得のいかない表情をしている。
と、はっと振り向いて叫んだルチカ。
「ちょっと、リカルドさん、触らないで! 危ないから」
妙に静かだと思っていたら、リカルドはルチカの翼の機械の方へと移動して興味津々に観察し、まさに触れようとしていた。リカルドはワクワクした表情で、早口でルチカに尋ねる。

「いやあ、僕も飛べないかなと思ってね。ね、飛んでいるところをはっきり見ていないから、見たいな。この翼は広がると羽ばたくの? どういう仕掛け? 何が危ないんだろう?」
「……、これは扱いが難しいから、相当訓練しないと飛ぶのは難しいよ。それに羽ばたくような複雑な機構は流石に私でも難易度高いし、実現できてもその箱のサイズには収まらないでしょ」
意外にも素直に答えるルチカ。回答をもらえたことで、さらにリカルドは目を輝かせて質問を重ねた。
「え、じゃあ、どうやって飛ぶの? この箱に付いている2本の円柱は何だろう? 穴が空いてるね、何かが中から出てくるんだろうか?」
「……」
リカルドの好奇心むき出しの質問に、ぐっと言葉を飲み込むルチカ。リカルドはさらに続ける。
「そもそも、あの、ストネで卵の真贋をチェックするときに使っていた手のひらサイズの、超小型の発光石の照明。あれも不思議だったんだよ。ツマルタのどこを探したって、あれだけ小型であれだけの光量を、しかも一方方向だけに放つ照明は見つからなかった。それにその棒! そんなに静かに素早く伸縮するなんて、仕組みが全くわからない。ね、どうなっているんだろう?」
さらに前のめりになって質問を畳み掛けるリカルドを、睨むように見るルチカ。「ちょっと、リカルド、空気を読みなさいってば」とナイフが制しようとしたとき、ルチカはぐっとゴーグルをたくし上げて、口を開いた。
「…発光石の照明は、副石の成分を割り出して何が反応しているのかを調べて、それを圧縮させたものを反応させてるの。そうすれば発光石が小さくても光量が格段に増える。光の指向性は、単に周りを包んでいる容器とレンズの工夫。中の光が強いからどうにでもなるから」
「…あら?」
急につらつらと語り始めたルチカ。これは、どうやら…。
「…この子も、リカルドやタイキさんと同類っぽいわね…」
「ああ…、そのようだな…」
ディルムッドも少し拍子抜けした表情で、2人のやり取りを聞いている。おかげで少し頭が冷えたようだ。そういえば今までも、リカルドに機械のことを聞かれる度に妙な間があったが、ルチカも自身の機械のことを語りたくてたまらなかったのかもしれない。2人の問答はまだ続いている。
「ね、じゃ、じゃあさ、それは? その棒」
「これ? これも発光石デスヨ」
「えっ?」
その回答に、リカルドはもちろん、機械にさほど興味のないゴナンもナイフもディルムッドも驚く。
「いや、でも、それ、光るものじゃないよね」
「そもそもさあ…」
とルチカは、少し呆れたような表情を浮かべた。
「…発光石を発光石って名付けて、光るだけのものだってハナから決めつけているのが、どうかと思うんだよね。光る性質があるのがわかったら、『じゃあ、他には何か反応しないのかな?』って考えるものじゃない? フツウ」
「普通…。え…、そう、かな…?」
「リカルドさん、学者でしょ? その割に頭固すぎじゃ? それとも、机上のお勉強ばかりだとそうなっちゃうのかな?」
「…」
そう言われて、リカルドは返す言葉もない。ナイフもこっそり、ほくそ笑んだ。
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