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連載小説「オボステルラ」 【第四章 狼煙の先に】  3話「子ども達」(5)


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第四章の登場人物



3話 「子ども達」(5)



 と、子どもの一人が「巨人がいる!」とディルムッドを見つけた。一気に皆が、ディルムッドの所に集まる。

「おい、貴殿等、今から勉強だろう?」

「大っきい! ねえ、肩車して!」

「腕につかまったら持ち上がる?」

「巨人を倒す!」

子ども達が次々とディルムッドに押し寄せ、あっという間に子どもの遊び道具になってしまった。ディルムッドも優しい笑顔で、子ども達を順番に肩に載せたり大人数を一度に抱えたり、倒されてあげたりして遊んでいる。

 と、続いてゴナンの手がくい、と引かれた。見ると、5、6歳の女の子数人が「遊ぼ」とゴナンを引っ張っている。「いいよ。何する? おままごと?」と、きっと妹のミィにも見せていたであろう表情で応じるゴナン。

「ふふっ。デカかったり無愛想だったりで怖く見えても、子どもってのは心根の優しい人間を見極めるものだな。氷っ子、お前さんも子どもと遊んで来いよ」

「…先生…。ご存じの通り僕は子どもが苦手だし、ご覧の通り子どもも寄ってきませんから…」

「確かにな。子どもは人の本質を見抜くものだ」




そうニヤリと笑うジョージ。その時、子ども達の声に惹かれたのか、ミリアとエレーネも屋敷から出てきた。

「ミリア。もう頭痛は大丈夫?」

リカルドはニコリとミリアに話しかける。

「僕は昨晩は何も見ていないし、何も覚えていないから、ね」

「まあ、ありがとう。うっかりで迷惑をかけてしまって申し訳ないわ。もう大丈夫。子ども達の声が聞こえてきたから、何か楽しいことでもあるのかと思って」

 含み笑いのリカルドに元気そうに答えるミリア。と、何人かの子どもが、ミリアとエレーネを見て叫んだ。

「わー! お姫様もいる!」

「……!」

 どきっ、と動揺する一行。夫妻は笑って、ミリアの元にたむろする子ども達の頭をなでた。

「この街じゃ、貴族の姿を見ることなんて滅多にねえんだ。ご令嬢は皆、お姫様に見えちまうんだなあ」

「はは…、そうですね…」

(子どもは人の本質を見抜く、たしかに…)

とはいえ、ミリアは貴族の装いをしているわけではないのだが。リカルドは冷や汗をかきながら、「まあ、わたくしは実は影武者の普通のミリアよ」などと、言わなくてもよい余計な設定を口にするミリアを見守っている。

「…ああ、そうだ。先生。ゴナンの体調が良くなってきたようなので、この青空学校に参加させてもらえませんか? 興味を持っていた様子で」

「ん? それは問題ないが…。学校に行ったことがない子なのか?」

「辺境の村育ちなんです。ただ、お兄さんに読み書き計算は習っています。多分なんですが、彼は勉強するのが嫌いではないと思うので…」

「ふうん、そうかい。もちろん大歓迎だ」

ジョージが快諾し、リカルドが嬉しそうにゴナンの元へと駆け寄る。すると、ゴナンと遊ぼうとしていた女の子達は、何となく離れて行ってしまった。

「ふふっ。僕は子どもには好かれないからなあ」

「そう? ミィは懐いてたのに」

「あ、そういえばそうだね。僕には珍しいことだなあ」

ゴナンは、キャッキャとはしゃぐ女の子達の後ろ姿を見て、少し遠い目をした。リカルドはそんなゴナンの頭をくしゃっとなでる。

「ゴナン。もし君がよければ、この子達と一緒に授業を受けてみない? 先生は大歓迎だって」

「……!」

やはり、ゴナンの瞳が嬉しそうに輝く。リカルドも笑顔を浮かべてゴナンの腕を引っ張り、改めてジョージに紹介した。

「ゴナンは15歳です。何か、興味のある分野はあるかな? ゴナン」

「…俺、わかんないよ。学がないから…。あの、ちっさい子達と同じことを勉強するので、ちょうどいいと思うよ」

「ふうん、そうかい?」

ジョージは興味深そうにゴナンを見る。そしてニコッと笑った。

「まあ、どのくらいの学力があるか確認しながら、やってみよう。ここにはいろんな年齢の子がいるから、それぞれに合わせた勉強をしているんだ。ほら、あっちの子達は、お前さんと同じ15歳だよ」

そう言ってジョージが指す方向に、3人の少年がいた。ゴナンの方を物珍しげに見ている。

「向こうも話しかけたそうだよ。授業が終わったら、しゃべってみるといい」

「はい…。よろしくおねがい、します…」

「あ、ゴナン。でも、具合が悪くなりそうだった、すぐに部屋に戻るんだよ。無理しちゃダメだよ」

リカルドの心配性にゴナンはこくりと頷き、無表情ながら瞳を輝かせて、子ども達の輪の中に入っていくゴナン。ジョージはまた、リカルドのそんな様子をじっと見ていた。

「…何か?」

「……いや、よくわかんねえが、まあ、良かったような気がするよ。でも、どうだろうな、度を過ぎると…?」

「?」

何やら含みのあるジョージの言いようにに、リカルドは首を傾げるだけだった。




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