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んの魔法 | 長編小説 | 第3章 スポンのルール(第4話)

これは、言葉と記憶と心をつなぐ、僕の再生の物語。

始めから読む方はこちら → 序章 海辺のバス停(第1話)
前回のお話はこちら → 第2章 終わりに「ん」のつく言葉(第3話)

本編はここから


ンタンタンは、僕の手から本を受け取り、そっとテーブルに置いた。マフはカウンターのすみで、食後のミルクティーを用意しながら、僕らの様子を横目でうかがっている。 

ンタンタンによると、この本は“僕の心の本”なのだそうだ。そう言われると、他人に見られるのはちょっと怖い。ページを開こうとした指が、ふと止まる。

もし、この本の中に、僕の今の気持ちが書かれているのだったら、誰にも見せたくない!
「……やっぱり、今はやめとこうかな」
と言うと、んたんたんが眉をひそめて
言葉の終わりに「ん」のつく物の絵が描いてあるだけじゃよ。」と言うのだ。

「絵が…?」
「日記みたいに、人に言いたくないような自分の気持ちが書いてあると思ったかの?それは不可能なんじゃ。なんせ、この世界そのものが言葉の世界なのじゃから、文字というものは、存在せんのじゃ。だから、開いても痛くもなんともないぞい!それでも、見たくない時は、ただページを閉じればよい。」

 僕の心の本には、いったいどんな絵が描かれているんだろう?心の中を見るのはとても怖いけど、少しだけ興味がわいてきた。ンタンタンが言うことを信じればだけど…。

「見られて困るような、恥ずかしい絵でも描かれてあるニャ?」と、いきなりマフの声がした。
「“立ちション”なら「ん」がついとるな~」と、ンタンタンも嬉しそうに言う。
「そっ、そんなこと…したことないよ!…開けるってば!」

意を決して僕はページを開いた。勢いよく開いたので、本の真ん中あたりがパーンと開いてしまった。

そのページは、左に“図鑑”(多分植物の)、右に“うどん”の絵があった。図鑑は先週の宿題で、春の草の観察をする時に使ったものだと思う。うどんは、昨日の晩御飯に違いない。

確かに何のことはない、絵が描かれているだけだった。


※登場人物「んたんたん」の表記を「ンタンタン」に変更しました。物語の世界観により沿うための調整です。過去話も順次修正しております。


次は、第3章 スポンのルール(第5話)につづきます。

「ん」の魔法 ~深淵の本と心の夜明け~ の固定ページはこちら → いらっしゃいませ!お茶ですか?それともお話ですか?

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