【事例共有】貸せない物件もある。現場で起きた判断の話。
今回は実際にあった事例をもとに書きます。
特定を避けるため一部脚色していますが、内容はほぼそのままです。
相談の内容
神奈川県内の人気路線から徒歩15分ほどの築約50年のマンション。
いわゆるビンテージマンションと呼ばれる物件です。建物全体の管理状況は良好でした。
ただ、相談者ご本人は住んでいません。
相談者の親族が住んでいて、室内の状態が正直よくわからず、またそこまで多額の費用はかけたくない。そういった状況での賃貸相談でした。
まず確認したこと
室内の状態を確認したところ、新築当時からの設備もあり、専有部の給排水管は更新されていませんでした。
築年数的に鉄管の可能性もあり、今後赤水が出たり漏水が起きるリスクがあります。
この様な場合、フルリノベーションが最適なのですが、貸し出すにあたって最低限必要なのが「表層リフォーム」です。
表層リフォームとは、壁紙(クロス)の張替え、床材の張替え、水まわりのクリーニングなど、見た目や清潔感に関わる部分の修繕のことです。設備の入替えや配管の更新は含まず、あくまで表面的な部分を整えるリフォームを指します。
約60㎡のこの部屋では、表層リフォームだけでも100万円近くかかりそうでした。さらに賃貸向きにフルリノベーションした場合は約800万円程度になりそうです。
100万円か、800万円か
つまり選択肢は2つです。
表層リフォームに100万円かけて最低限の見た目を整えるか、フルリノベーションに800万円かけてしっかり仕上げるか。
ただ、そこで私たちは「100万円かけても意味がない」という正直な説明をさせて頂きました。
それはなぜか。
給排水管の更新がされていない以上、賃貸中に漏水や赤水のトラブルが起きる可能性が残ります。
見た目だけきれいにしても、配管が古ければ根本的なリスクは消えません。
また中途半端な修繕は結果として根本改善がされていない状況を作り出してしまうリスクがあります。
今までは親族が住んでいたから多少のことは我慢できたかもしれません。
でも賃貸に出した場合、オーナーには借主に使用収益させる義務があります。
トラブルが起きれば修繕費用が発生し、場合によっては借主様への損害賠償問題にもなりかねません。
100万円の表層リフォームで貸し出すことが、かえって相談者にとって大きなストレスとリスクになってしまう状況でした。
800万円の費用回収シミュレーション
ではフルリノベーションはどうか。
リフォーム済みの状態で想定される賃料は月額11万円程度。
800万円÷11万円=約73ヶ月。実際には空室期間や修繕費も加味すると、回収まで約80ヶ月、7年から8年近くかかる計算です。
相談者にとって、この金額と期間は現実的ではありませんでした。
出した結論
「貸すのであればしっかりリフォームすべきです。それが難しいのであれば、売却のほうがいいと思います。」
正直にそうお伝えしました。
相談者はもともと賃貸を希望されていましたが、費用回収のシミュレーションとトラブルリスクを整理したうえで、売却という判断をされました。
この事例から伝えたいこと
すべての物件が賃貸に向いているわけではありません。
築年数が古い物件は、見た目をきれいにするだけでは不十分なことがあります。給排水管・電気設備・ガス設備など、見えない部分のリスクまで含めて判断する必要があります。
費用回収のシミュレーションが厳しい場合、無理に貸し出すよりも売却のほうがオーナーにとって良い結果になることもあります。
大切な資産です。
思い入れもあったことだと思います。
だからこそ「貸したい」という気持ちはよくわかります。
でも、その物件が本当に賃貸に向いているかどうかは、感情ではなく数字とリスクで判断してください。
管理会社を選ぶときに確認すべきポイントは、こちらにまとめています。
