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【第5回】「仕事」として地方へ飛び込む。都市の企業と地方の高校生が混ざり合う、新しい関係人口の形

便利さを求めて都市へ向かい、自由を得たはずの私たちが抱えるどこか浮いたような孤独感や、地方で静かに進む空洞化。

「地方との関わり方に興味はあるけれど、ボランティアや移住はハードルが高い」と感じているビジネスパーソンの方へ。

これまでの記事では、都市と地方の構造的課題や1次産業の現場、そして地域と移住者の「前提ルールの衝突」について紐解いてきました。

今回はそこから一歩進み、「都市の企業」と「地方の現場」が対等に混ざり合い、お互いの価値を高め合う新しい関係性のリアルについて書きます。

先日、私が拠点としている高知県須崎市で体験した、熱い2日間の記録です。

始まりは「海と酒」の縁から

愛知県と高知県。

物理的には遠く離れた2つの地域が、あるひとつのイベントをきっかけに熱く交差しました。

すべての始まりは、高知市で開催された「海と酒のイベント」です。

そこでの縁がきっかけとなり、春日井製菓さん(スナック春日井 note)と須崎市がつながりました。

この繋がりを機に、須崎市は愛知県の春日井製菓さんが中心となって開催している地域還元イベント「おかしなサマースクール(通称:おかさま)」に参画することになります。(公式ページ

そして、おかさまメンバーのみなさんが須崎市の熱量に共感してくださり、ついに1泊2日のサマースクールイベントを須崎市で開催する段取りが決定したのです。

宿泊先として選ばれたのは、一般的なホテルではなく、地域の拠点でもあるゲストハウス「サンテ」でした。

地元の高校生30名、地域おこし協力隊のみなさん、集落の方々、そして愛知からやってきた企業のメンバーたち。

地方の小さな町に、これだけの世代と地域を超えた「人」が集まりました。

大人と高校生が対等に混ざり合う、濃密な2日間

個人で事業を営む私にとっても、膝を打つような実証的な学びと気づきの連続に満ちた2日間でした。

印象的だったのは、どの時間も大人と高校生が真剣に向き合い、お互いの視点を掛け合わせていたことです。

  • PRワークショップ(企業の広報担当者 × 高校生)
    高校生と大人がペアを組み、相互インタビューを実施。「個人の『好き』がどう社会の役に立つのか」を紐解き、一つのストーリーへと仕立て上げるワーク。

  • 高校生がガイドする「須崎の街歩き案内」
    地元の高校生たちが自らガイドとなり、都市部から訪れた大人たちへ自分たちの目線で街の魅力を紹介・案内。

  • ライターワークショップ(プロのライター × 高校生)
    大人と高校生、それぞれの異なる視点から地元のプレイヤーにインタビューを敢行。多角的な目線で記事化へと落とし込む実践企画。

  • 地元企業が伝える「リアルなSNS発信術」
    須崎で実際に事業を展開する現地企業から、地域に根ざした泥くさくも効果的な情報発信のノウハウをシェア。

  • 新荘川でのワークショップと、豪快なカツオ料理
    美しい清流・新荘川の自然の中で学びつつ、高知ならではの豪快なカツオのタタキを味わいながら対話を深める時間。

  • 地域の人々を交えた歓迎会(土佐のおきゃく)
    集落の方々を囲み、手作りのピザやカツオ、そうめんなどを味わいながら、夜遅くまで膝を突き合わせて語り合う土佐ならではの温かな宴。

新荘川でのワークショップ
PRとは?の講義


豪快なかつお料理

中でも強く印象に残ったのは、「世代と立場を超えた対話の深さ」です。

高校生たちは、大人が相手の魅力を引き出す「質問の技術」や、物事を深掘りしていくアプローチに目を輝かせていました。

一方、普段の業務では高校生と意見を交わす機会が少ない都市部の大人たちにとっても、彼らのまっすぐで率直な視点は大きな気づきとなっていたようです。

これだけの規模の人数を集め、プログラムを調整し、現場の学びをデザインされた運営の労力は計り知れません。

しかし、ここで最も本質的だと感じたのは、この「おかしなサマースクール」のバックボーンにある仕組みそのものでした。

「業務時間」で地域にコミットする仕組みの面白さ

この「おかしなサマースクール」が画期的なのは、参加している企業人たちがボランティアや個人的な休日ではなく、「会社の業務時間として」参加している点です。

一見すると企業の持ち出しのように見えますが、ここにはきわめて合理的な循環が生まれています。

1. 企業への確かな還元とPR

業務時間内での参加だからこそ、社員は自社のプロダクトや強みをイベント現場に持ち込み、参加者や地域にアピールして持ち帰る責任が生まれます。

単なるCSR(社会的責任)ではなく、実利のある事業PR活動として成立しているのです。

2. 「3社以上の掛け合わせ」が生むイノベーション

おかさまでは「3人以上(=3社以上)」のグループで企画を立案するルールがあります。

2社の掛け合わせであれば想像しやすい企画も、3社となると途端に難易度が上がります。

しかし、その制約があるからこそ、自社の枠組みを超えた「他にはないユニークな独自企画」が立ち上がります。

たとえば今回の取り組みでも、「映画館」「航空会社」「須崎市」という異色の組み合わせによる企画の種が生まれました。

映画館の大スクリーンにコックピットの映像を映し出し、愛知から須崎へ飛行機で移動するリアルな様子を上映するというアイデアです。
(参照:ぶっとびサマースクールイベントページ

「1社だけ」や「2社のコラボ」では絶対に生まれないこうした発想こそが、3社を掛け合わせる最大の面白さです。

3. 「人材育成への投資」という本質

会社にとっては、大切な人員を地域の現場に送り出すこと自体が「人への投資」です。

中には会社から背中を押されて参加した人もいるかもしれませんが、普段の組織から離れてカオスな地方の現場に飛び込むことで、参加した人々は一回り大きく成長して会社へと帰っていきます。


都会では出会えない「交差点」が、地方にはある

私が東京にいた頃を振り返ると、会社員という枠組みの中にいる中で、こうした地域外の多様な人々と深いつながりを持つことは決して容易ではありませんでした。

しかし地方では、少し足を伸ばして外のコミュニティに触れるだけで、都市部で第一線として活躍しながら「地方創生」や「地域との繋がり」に本気で熱を注ぐ魅力的な人々に出会うことができます。

「地方か、都市か」という二元論でどちらかを選ぶのではありません。

都市部の人々が「会社の業務時間や本業の文脈」を携えて地方へと飛び出し、地域の高校生やプレイヤーと混ざり合う。

これこそが、第2回・第3回でも触れてきた「関係人口」のさらに先にある、持続可能で風通しの良い「都市と地方の新しい結びつき」の形なのではないでしょうか。

おわりに

【明日からできる、小さな一歩】

もしあなたが、「今の仕事の文脈で、地方と関わってみたい」と少しでも感じたなら。

まずは自分の会社の強みや自分のスキルを、全く異なる環境(例えば地方の商店や学生)に当てはめたらどんな化学反応が起きるか、妄想してみることから始めてみませんか?

あるいは、気になる地域のキーマンが発信しているSNSに、一言感想を送ってみる。

そんな小さな「公私混同」が、新しい景色への入り口になるはずです。

この2日間、現地で溢れる熱量に触れながら、ふと自分自身の過去を振り返りました。

「もし私が会社員だった頃に、こんな機会があったらどうだっただろう」

きっと、目の前の業務の枠を飛び越えて、夢中になって全力で楽しんでいたはずです。

そう確信できるほど、ここには「組織」や「肩書」という枠を超えた、純粋な学びと人間味溢れる熱気が満ちていました。

「また、須崎に来たい」

愛知から訪れたみなさんがそう言って残してくれた言葉は、決して社交辞令ではなく、この2日間の密度の高さが物語っています。

愛知と高知。この小さな交差点から始まった化学反応が、これからどんな未来の風景を描いていくのか。

私自身も一人のプレイヤーとして、そしてこの街に生きる人間として、楽しみに追いかけていきたいと思います。


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