【第574回】 Marketing Cloud Next : Personalize Paths による個別パス選択
Winter ’27 の新機能リリース では、Marketing Cloud Next Advanced Edition に Path Experiment に続き、新たに Personalize Paths が追加されました。

この Personalize Paths を使用すると、フロー内に複数のパスを用意し、各顧客について、どのパスがユーザーが決めたコンバージョンにつながる可能性が高いかを機械学習で予測して、そのパスに新たに進んできた顧客を振り分ける ことができます。
※ Winter ’27 は、現時点ではプレビュー段階のため、正式リリースまでに仕様やドキュメントが変更される可能性があります。
※ こちらは予測 AI による機能のため Einstein Personalize Paths と思っておくと理解しやすいかもしれません。
Personalize Paths を追加する
Personalize Paths は、Marketing Cloud Next Advanced Edition のフロービルダーから追加できます。
利用するユーザーには Add Path Experiment Element to Flows 権限が必要で、この権限は Marketing Cloud Admin と Marketing Cloud Manager の権限セットに含まれています。

Personalize Paths の設定では、大きく、
何を成果とするのか
どのくらいの期間で学習するのか
どのようなパスを比較するのか
を設定します。
Performance Metric を設定する
最初に Performance Metric を設定します。

Performance Metric は、Personalize Paths が 標準メトリクス や 独自に作成ができるエンゲージメントシグナルのどの項目を「成功の指標」として判断するのか を指定する項目です。この辺りは Path Experiment と似ています。
すぐに利用ができる標準メトリクスは、以下の 4 つです。
メール送信のカウント
メール開封のカウント
メールクリックのカウント
購読取り消しのカウント
また、Product Order、Opportunity、Web Engagement などを用いて集計された カスタムエンゲージメントシグナル も選択できます。
Performance Metric にクリックカウント設定した場合は、Personalize Paths にとっての成果とはクリックされた数です。
Product Order を設定した場合は、成果は「収益」や「購入回数」です。
つまり、この項目で、
「何を増やすためにパスを最適化するのか」
を決めることになります。
今回の私の例は「Revenue(収益)」が一番上がる形で自動調整されます。
Secondary Engagement Signal を設定する
Performance Metric に加えて、必要に応じて Secondary Engagement Signal を「複数」設定できます。
例えば、
Performance Metric を エンゲージメントシグナル Product Order
Secondary Engagement Signal を エンゲージメントシグナル Add to Cart
とするような構成が考えられます。

この場合、「収益」を成果としながらも、購入に関連する「カートへの追加」という行動もパス選択の参考情報として利用できます。
ただし、どの Engagement Signal が、機械学習モデルの中でどの程度パス選択に影響するのかといった内部ロジックは、現時点では公開されていません。そのため、ここではあくまで「関連する行動をパス選択の判断材料として追加できる」と理解しておくのがよいと思います。
コンバージョンまでにかかる時間を設定する
続いて、Amount of Time を設定します。

Amount of Time は、受信者がフローにエントリーしてから、Performance Metric として設定したコンバージョンイベントを完了するまでに、通常どのくらいの時間がかかるのかを指定する項目です。
設定では、Hours、Days、Weeks を選択できます。
例えば、Performance Metric にメールクリックを設定しており、多くの受信者がメール送信後 1 日程度でクリックするのであれば、1 Day のように設定します。
一方、商品購入をコンバージョンとしており、フローへのエントリーから購入まで通常 1 週間程度かかるのであれば、1 Week のように設定します。
この設定が必要になる理由は、Personalize Paths が、パスへ振り分けた直後にはその結果を判断できないためです。
例えば、ある顧客が Path A に振り分けられ、その 3 日後に商品を購入したとします。
フローへエントリーした直後や翌日の時点ではまだ購入していませんが、それだけで「Path A ではコンバージョンしなかった」と判断するのは早すぎます。
そのため Personalize Paths には、
「このコンバージョンは、フローへのエントリーから通常このくらいの時間をかけて発生する」
という時間的な目安を設定する必要があります。
つまり単純な学習期間ではなく、設定した Performance Metric の成果が現れるまでに通常必要となる時間を Personalize Paths に伝えるための設定と考えると分かりやすいと思います。
ただし、例えば 3 Days と設定した場合に、3 日を過ぎた時点で必ず「非コンバージョン」として確定される、といった詳細な内部処理までは公開されていません。
Amount of Time が機械学習モデルの内部で具体的にどのように利用されているのかについては、現時点ではブラックボックスになっています。
Total Personalization Duration を設定する
Amount of Time とは別に、Total Personalization Duration を設定します。

こちらでは、Personalization Window が終了する日付を指定します。
この設定で、現在から指定した終了日までの期間を使用してモデルを学習します。
この 2 つは似ているように見えますが、役割が異なります。
Amount of Time は、1 人の受信者について、フローへのエントリーからコンバージョンまで通常どのくらい時間がかかるのかを指定します。
一方、Total Personalization Duration は、Personalize Paths 全体として、どの期間まで学習や最適化を継続するのかを指定します。
例えば、
Performance Metric:Product Order
Amount of Time:1 Week
Total Personalization Duration:3 ヶ月後
と設定した場合、商品購入には通常 1 週間程度かかることを前提としながら、3 ヶ月にわたって発生するコンバージョン結果を利用して Personalize Paths を学習・最適化していく、と考えると分かりやすいと思います。
※学習が終了したときに、どのような挙動になるかは説明されていません。
Path Distribution を設定する
続いて、比較するパスを作成します。

テスト中は、設定された割合に従って顧客が各パスへランダムに振り分けられます。
そして Optimization が開始されると、ユーザーの行動に基づいてパスの振り分けが動的に調整されます。
つまり、最初から Personalize Paths が各顧客に最適なパスを知っているわけではありません。
まず実際に複数のパスへ顧客を振り分け、そこで発生したコンバージョン結果を収集します。
その結果を学習したうえで、後からエントリーする顧客について、どのパスがより成果につながる可能性が高いかを予測していく仕組みです。
例えば Performance Metric がメールクリックの場合、
顧客 A が Path 1 に進んでクリックした
顧客 B が Path 2 に進んでクリックしなかった
といった実際の結果が学習材料になります。
Personalize Paths は、そのパスを通った顧客が Performance Metric として設定した成果を達成したかどうかを見ながら学習していきます。
同じ顧客が再びフローへ入る必要はない
ここは少し分かりにくいところですが、Personalize Paths を利用するために、同じ顧客が何度もフローへエントリーする必要はありません。
例えば、先にエントリーした顧客のコンバージョン結果をモデルが学習し、その後に新しくエントリーする別の顧客のパス選択に利用できます。
つまり、
「顧客 A が前回 Path 1 だったので、次回は Path 2 にしてみる」
という仕組みではありません。
これまでに蓄積された顧客全体の結果をもとに、新しく入ってくる顧客について最適なパスを予測する
という考え方になります。
そのため、Personalize Paths は、一度にすべての顧客がエントリーして終了するフローよりも、新しい顧客が継続的にエントリーするフローとの相性が良いと考えられます。
ただし、一回限りのフローにおいて対象者がどのような単位で学習フェーズと最適化フェーズに分けられるのかなど、内部的な処理については現時点では公開されていません。
Path Experiment との違い
既存の Path Experiment とは目的が異なります。
Path Experiment の Automated Path Selection では、複数のパスをテストし、Performance Metric を基準として全体として最も成果の高い Winning Path を決定します。
Bayesian Prediction を利用し、他のパスを上回る確率が 95% 以上となったパスが Winning Path になります。
つまり Path Experiment は、
「どのパスが一番良いのか」
を探すための機能です。
一方、Personalize Paths は、
「この顧客には、どのパスが一番良いのか」
を継続的に予測します。
例えば、全体では Path A のコンバージョン率が最も高かったとしても、すべての顧客にとって Path A が最適とは限りません。
ある顧客には Path A が有効でも、別の顧客には Path B の方が成果につながる可能性があります。
Personalize Paths は、1 つの Winning Path に全員を集約するのではなく、個人ごとに成果につながる可能性が高いパスを選択し続けるところが Path Experiment との大きな違いになります。
どのように顧客ごとのパスを判断しているのか
ここは現時点では、かなりブラックボックスになっています。
Salesforce は、実際のコンバージョン結果を継続的に学習し、それぞれの顧客について最も成果につながりそうなパスを予測すると説明しています。
また、Secondary Engagement Signal をパス選択の判断材料として追加できます。
ただし、
どの顧客属性を使用しているのか
過去のどの行動を特徴量としているのか
それぞれのデータをどの程度重視しているのか
といった機械学習モデルの詳細は、現時点では公開されていません。
そのため、ここについては無理に推測せず、
「各パスの実際のコンバージョン結果や設定した Engagement Signal をもとに機械学習を行い、個人ごとに最適なパスを予測する」
という程度の理解に留めておくのがよさそうです。
いかがでしたでしょうか。
個人的には、Einstein STO(送信時間最適化)と同じように、「まずは設定して使ってみる」タイプの機能 だと感じています。
Einstein STO も、その内部でどのようなロジックによって最適な送信時間を判断しているのかを利用者が細かく理解しなくても、設定しておけば、顧客ごとに最適と予測された時間帯にメールを送信してくれます。
今回の Personalize Paths も、それに近い考え方ができる機能だと思います。
ただし、Einstein STO と比べると、Personalize Paths では複数のパスを用意し、それぞれで異なる CTA やメール、コンテンツなどを準備する必要があるため、事前の設計や制作にはそれなりの手間がかかります。
一方で、長期間継続するシナリオでは、事前にテストを実施し、その結果を分析して、その後に本番シナリオへ反映するといった手順を何度も繰り返すのも手間です。
Personalize Paths を利用すれば、どの顧客をどのパスへ振り分けるかという部分については、実際のコンバージョン結果をもとに機械学習が継続的に予測・最適化してくれます。
そう考えると、特に長期的に運用するシナリオでは便利な機能になりそうですね。
最初から完璧な使い方を考えるというよりも、まずは複数のパスを用意して実際に利用してみることが、この機能を理解する一番の近道なのかもしれません。
今回は以上です。
