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mbn_310
厄介な記憶
荒い息がこだまする。
汗か涙か区別がつかないけれど顔が熱い。
頭ががんがんする。
身体がずきずきする。
うずくまったままの体勢から
恐る恐る顔を上げると
そこにはタバコを吸いながらテレビを見る母がいた。
掃除機は私を罰するための道具。
玄関の扉が開く音が聞こえて
おばあちゃんが散歩から帰ってきた。
私はようやく安堵する。
今日の時間は終わった。
時計の針が「1」になったら、もうすぐ。
時計の針が「2」になったら、どっどっどっ。
時計の針が「3」になったら、行かないで。
時計の針が「4」になったら、声が出せなくなり
「4」の針のまま「2」「3」「4」「5」
おばあちゃんは散歩に出て、友達のところに行くんだって。
怒号が鳴り響き
床が地震のように揺れる。
「ギュイーン」
勢いよく唸る、そいつは
私を痛めつけるための怪物に変化する。
意識が遠のいたり、戻ったりしながら
必死で時計の針を探す。
「6」が来るところまで耐えれば。
もしかしたら今日は「5」の数字のままのところで
終わるかもしれない。
疲れたら。終わる。
呼吸が乱れ出したら
荒い息が聞こえ出したら
そしたら、もうすぐ終わる。
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いつの間にか
おばあちゃんも父も帰ってきていた。
私は起き上がり
頭がぼーっとしたまま
母が作る夕飯をテーブルまで持って行く。
母はもう怒っていないように見える。
けれど、私は解っている。
明日も明後日も明明後日も
さっきまで行われていた惨劇が続くことを。
私は、ずっと記憶を抱えているまま。
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