見出し画像

人間の全盛期は2~3歳


タタタタタタタタタタタタッ


足音がする。

来るなこれは、来るぞ、来た。

「パパー!これよんでー!!!!」

リビングのカーペットで横になりスマホを見ていた私に絵本を両手に抱えた次女がタックルをかます。勢い余って走り高跳びのベリーロールみたいに私の背中から目の前に転げ落ちる。痛い。

持っている絵本を見て私は安渡する。


すぐに読み終わるとまた絵本を抱えて去っていく。

タタタタタタタタタタタタッ


私は横になりスマホで続きを観る。

【高校サッカー夏のインターハイ決勝戦】

福岡県大会決勝は「飯塚高校vs東福岡高校」だ。

最近テレビで飯塚高校の特集を見たせいか、不思議と飯塚高校を応援する自分がいた。環境が整い過ぎているこの高校、私が高校生でサッカーが飛び抜けて上手かったならこの高校に入学したかった。

近い将来、プレミアリーグに昇格するだろうなと思う。あの若い監督が現役の内に「冬の選手権」「高円宮杯」と3冠の偉業を成し遂げる日がきても不思議ではない。そうなれば小説のネタにでもさせてもらいたいくらいだなとおもーー・・・

タタタタタタタタタタタタッ

次の絵本がきた。

振り返って待ち構える。

「パパー!これよんでー!!!!」

今度は正面から抱き抱える。可愛い。

今回の絵本も当たりだ。すぐに読み終える。

タタタタタタタタタタタタッ

私は座ったままサッカーの続きを観た。

かく言う私も高校サッカーを頑張った身だ。山口県出身の為、初戦から県大会という超アドバンテージのおかげで強豪校と難なく対戦が出来た。

山口県といえば「多々良学園」。もう名前からして強い。

「鈴蘭高校」や「鳳仙学園」に匹敵する強強高校名。もはやブランドだ。「西京高校」という対抗馬もなかなかセンスある名前だった。山口県って今思えばセンスある高校多かったよな。

そんな多々良学園も私の代から「高川学園」へと改名された。絶望的に教養がない私は、ただ校名が変わっただけなのに「弱くなっちょるかもしれん!」と、謎のロジックでチームを鼓舞し試合に臨む。

整列で高川学園と相対した私たちは思う。

いや、ちょっと待ちませんか?と、今日はサッカーの試合ですよ?と、あなた達はラグビー部ですよね?と、もしかして皆さん4月2日生まれですか?と、あなたに至っては親御さんですよね?と、息子さんが休みだからってそれはルール違反では?と、足首に重りを付ける等のハンデを検討願えますか?と、いくらなんでもその筋肉は異議をとなえーー・・・

タタタタタタタタタタタタッ

あ、来た。

手に持つ絵本を見て私は絶望する。

あぁ・・・終わった。

もう試合は観れないだろう。
スコアレスでいい試合だったのに。

次女の持つ絵本、それは「あかちゃんご おしゃべり えほん」と呼ばれるものだ。

1ページに一言といった具合でどんどん読み進められる。予想外の絵同士を上手く繋げるストーリー性はさることながら、何より絵が可愛い。子供と一緒になって読める有能絵本だ。

ただ、死ぬほど長い。

なんと96ページもある。読みながら「え、まだ終わらないの?」というマインドが8回は訪れる。完全に絵本界のハリーポッターだ。

ここ起承転結の「転」

これ1冊で「だるまさんシリーズ」を10回読むくらいの人件費が発生するのだ。

やっと読み終わり、スマホに目をやると気付けばPK戦に突入していた。凄いな、最近の高校サッカーは本当にレベルが高い。少子化を疑うほど次から次へと逸材が現れーー・・・

「パパ!こーえんいこ!!!」

嫌だな・・・

まだ返事もしてないのに「ままー!こーえんいってくる!」と外堀を埋めに行く。可愛いやつめ。

公園や幼稚園の体験といった自身に利となる事柄であれば死ぬほど聞き分けがよくなるゲンキンなやつ。秒で身支度を整えて家を出る。

チャッピー作


エレベーターの前に立つ。私たちの階まで上がってくるのに少し時間がある。

「○○ちゃんちょっとそこに立ってて」と言い私は数歩下がる。

「ん?なにー?」と言って訝しむ次女。

「いちについてー、よーいどん!」と私が言う。

察した次女は「キャーー!!!」と言いながら笑って私の胸に勢いよくとびついてくる。可愛い。

暇つぶしの恒例だ。

抱っこしたまま到着したエレベーターに乗り込む。

「どこの公園に行くの?」と訊くと

「えーとー、しらん!!」と答える。

可愛い。可愛すぎる。

一挙一動、一言一句。全部可愛い。

何かを尋ねた時の「えーとー」や「えっとねー」
何かを言いたい時の「あのねー」や「ねーねー」

この間投詞が死ぬほど可愛い。

突然使い始めたのだ。昨日まで使ってなかった間投詞をある日突然。

「あーごめん!」「ごめんごめん!」「ごめんね!」「ごめーん!!」と、何かにつけてフランクな「ごめん」を連呼する時期もあった。一体何を見て覚えたというのだ。

昨日まで出来なかった事、してなかった行動や言ってなかった言語を朝起きたら突然使い始める。「あれ?これ昨日できてたっけ?」といつも曖昧な感覚に陥る。2歳児は本当に目を離せない。成長の瞬間をいつも見逃すのだ。

もう「いただきます」を「いーたーりーれーら」と言う事は二度とないのだなと思うと寂しい気持ちにもなる。

きっと本人も楽しくて仕方がないのだろう。昨日まで出来なかった事が何故か出来るようになる。そのメカニズムは本人もおそらく分かっていない。ただただ爆発的な成長が楽しくてインプットが止まらないのだ。

そしてその様がとにかく可愛い。可愛い以外に形容できない。一生観察していたい。

2~3歳が人間という生物の全盛期なのかもしれない。8歳の長女も勿論可愛いし、4歳も5歳も当然ながら食べたくなるほど可愛かった。しかし言動や頭身的に2~3歳がベストな愛くるしさに思える。

成長を見るのが楽しいし嬉しいが、5年くらいは2~3歳のままでいて欲しいというジレンマを抱えて1分1秒を大切に脳に刻んでいく。


公園きた

先週きたこの公園、頑張ってもネットを登れなかったはずなのに今日は足の置く位置を教えただけで難なく登れるようになる。

登れた事が嬉しいようで10周くらい繰り返していた。また一つ成長する。

嬉しさのあまり地面で滑って転びヒザを擦りむく次女。瞬間的に泣き喚くが、なだめるとすぐに泣き止みまた遊びだす。

転び方があの日の高川学園戦での私に酷似していた。開始5分、相手ボランチのショルダーチャージにより私は数メートル吹き飛び、芝生にも関わらず肘を擦りむいた。

ピッチ内、ベンチ、観客席、至る所から爆笑が起こり緊張が緩和される。「お前のおかげでベストな動きが出来た」と、試合中にも関わらず腹を抱えて笑うFWの顔を未だに覚えている。

ノーファールを訝しむ私をよそに試合は普通に続く。

カサ蓋は1週間で取れたが、心の傷はまだ癒えていない。20年近く経った今なら分かる。あれはファールではない、傷害だ。あのボランチめ、ジジイになったら将棋で全駒してやるから首を洗って待っていろ。


寝る前にアレを最後尾に移動しておこう。



みんなも是非買って読んで欲しい。



良かったら他の記事も読んでくれると嬉しいです。

また書きます✍️

いいなと思ったら応援しよう!

ぱんだマン ベーゼンドルファーのフラッグシップモデルは 47,080,000円(税込)です。

この記事が参加している募集