カーブドッチ物語 #32|音楽ホールとしてやっていけるのか
2025年4月から再開したジャズライブやクラシックコンサート。
この一年は、とにかく試行錯誤の連続でした。走りながら見えてきた現在地と、いま抱いている想いを正直に綴ってみたいと思います。
音楽ホールもピアノもあるのに
カーブドッチの創業期に建てた音楽ホール(カーブドッチホール)と、2000年に迎えた貴重なピアノ「ベーゼンドルファー ミレニアム2000」。
かつては、海外からもアーティストをお招きし、頻繁にコンサートを開いていました。でも、いつしか本業であるワインやレストラン運営に忙殺され、音楽会の開催は減る一方…。
そのおかげで、ワイン好きなら誰もが知るワイナリーへと成長できたわけですが、大好きな音楽のことは、いつしか心の隅に押しやられていました。
この頃の経緯は6回に分けて綴ってあります。お時間のある時にnoteのマガジン「カーブドッチと音楽」をぜひお読みください。

静かに佇む音楽ホール
25年かけて育てた音色
幸いなことに、ピアノはその後もウェディングやピアノ発表会などで大活躍。
長年メンテナンスをしてくださっている調律師さんから、「音色が変わってきましたよ。今、とてもピアノの状態がいいです」と何度も言われるようになりました。

美しいフォルム
調律を重ね、多くの奏者に弾かれることで、このピアノにしか出せない音色が育ってきたのだと思います。
ようやくベーゼンドルファーの真価を、皆さんに楽しんでいただける時がきた。そう確信し、昨年から音楽会を再開することにしました。
「ベーゼンドルファーを愛でる会」を発足
まずは、社内に運営体制をつくらなくてはなりません。企画から始まって、演奏者との交渉、宣伝広告、チケット販売、当日の運営までのすべてを担うプロデュース部隊。その名も「ベーゼンドルファーを愛でる会」を立ち上げることになりました。
とはいえメンバーは、この私と、ジャズ好きでバンド経験もあるS女史のたった二人だけという心細さです。見かねて、広報のK嬢も手伝ってくれることになりました。
通常業務を抱えながらの活動です。役員会から正式に発足の許可がおり、小さな一歩を踏み出したものの、実は不安でいっぱいでした。
なぜなら、お客様、アーティスト、そして私たちカーブドッチ、その三方が等しく満たされる、健全で持続可能な姿を作らねばならないと考えていたからです。
そもそも、チケットは売れるのでしょうか。私には多少の経験がありますが、それは10年以上も昔の話。当時とは随分時代が変わりました。
あの頃はSNSなどなく、電話・ファックス・手紙・口コミの時代でした。一人が一人に伝え、少しずつ広げてゆく。演奏会のチケットも一枚ずつの手売りが基本でした。
でも、今やSNSの時代。情報は瞬く間に拡散され、どこまでも広がってくれる分、人と人とのつながりは随分希薄になったような気がします。
音楽の楽しみ方も変わりました。わざわざ会場へ足を運ばなくても、YouTubeでライブの疑似体験ができてしまいます。
アーティストにお渡しする演奏料はどうでしょうか。諸外国に比べて物価はあまり上がってない気がするけれど、はるばる県外や首都圏からお招きする場合には、交通費や宿泊費も経費として必要です。
カーブドッチは株式会社なので、演奏会も利益が出なければ継続は叶いません。自治体が税金で行う文化事業とは、そこが大きく違う。たった200席の小さなホールですが、満席にするのは容易ではありません。
文化事業は儲からないと言われるけれど
そんなこんなで、不安を抱えながらの船出となった「愛でる会」ですが、それでも昨年4月からの一年間で、音楽会を5回開催することができました。どの演奏会も、ランチコース付きのコンサートです。
テーブルを囲んで、美味しいお料理を味わいながら、サックスやヴァイオリンなど、さまざまな楽器とベーゼンドルファーの共演を堪能する。ワインの香りと木のホールの響きが溶け合う、ここだけの体験をお届けできたのではないかと思います。

花束ではなくワインを贈呈しました

みんな大好きなジプシーヴァイオリン

オシャレなクリスマスライブでした

ハンマーダルシマーは
ピアノの原形と言われる楽器です

秋田慎治(ピアノ)
甘い歌声と甘いピアノに酔いしれました
コンサートの定員は、各回80人ほど。初年度としては、まずまずのスタートだったのではないでしょうか。
選ばれるホールを目指して
「カーブドッチの演奏会は、いつ来ても間違いない」
そんな評判が立つようなホールを、私たちは目指しています。
信頼を築くためには、質の高い演奏が不可欠。ですが、それだけでは数ある有名ホールに敵うはずがありません。では、カーブドッチにしかない価値とは何があるでしょうか。
それを見つけ、育てていくこと。しかもそれが、採算面でも大きな助けになればなおのこといい。そうしてお客様からも、演奏者からも選ばれるホールになることが、私たちの掲げる大きな目標です。
今はまだ大きな実績がなくても、素晴らしい才能を持つ若いアーティストも、心から歓迎します。
ここで奏でることが奏者自身の喜びとなり、次の一歩に繋がる活力になる。そんなふうに、アーティストの皆さんとともに成長していける場所でありたいと願っています。
*こぼれ話|今年もバラが咲き始めました
大にぎわいだったゴールデンウィークも終わり、カーブドッチはいつもの静けさを取り戻しています。
さぁ、これからは待ちに待ったバラのシーズンです。まずは、一番咲きのバラを紹介するところから始めましょう。
最初にレストランの塀を彩るのが「モッコウバラ」。中国原産のツルバラです。小さな花をたくさん咲かせる素朴で可憐なバラは、派手さはないけれど、カーブドッチの建物によく調和してくれます。

そして、大輪の「マリア・カラス」。世界的オペラ歌手に捧げられた、華麗でドラマティックなバラです。

これから続々と咲き誇る何百種ものバラを求めて、多くのお客様が訪れるバラ月間が始まります。
ちなみに、バラの世界には、著名な音楽家の名を冠した品種が多く「マリア・カラス」「ヨハン・シュトラウス」「モーツァルト」「エディト・ピアフ」などが知られています。香りや華やかさ、余韻、そして儚さなど、音楽とバラには、どこか通じ合うものがあるのかもしれません。
次回の演奏会は7月11日
「西村由紀江&三四朗サマーコンサート」
デビュー40周年となる西村由紀江さんをお迎えし、その節目を彩る記念公演をカーブドッチホールにて開催します。
▼詳細はこちらから
【コンサート】西村由紀江&三四朗サマーコンサート/2026.7.11
カーブドッチだからこそ届けられる価値。その輪郭が少しずつ見えてきました。次回はその「カーブドッチらしさ」について、さらにお話したいと思います。
次回もお楽しみに。
