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カーブドッチ物語 #21|トラヴィーニュでリトリートな時間を

オープンの5年前、目の前に広がる芝生をアルバリーニョの畑へと変えるところから始めた「ワイナリーステイ トラヴィーニュ」は、ぶどう畑に抱かれながら、ワインと美食を心ゆくまで愉しむためのオーベルジュです。

ここにいると時間が止まったよう

赤いスペイン瓦と白い壁が印象的な、どこか異国情緖を纏った佇まい。一度足を踏み入れた瞬間から、日常と異なるゆったりとした時間が流れ始めます。



ワインのある時間を、心ゆくまで

こじんまりとしたエントランスを抜けると、全面ガラス張りのラウンジがお出迎え。その先にはアルバリーニョのぶどう畑が広がり、さらにその向こうになだらかな稜線を描く角田山が望めます。

この抜け感に、思わず歓声がおきます

あまりの開放感に、一瞬ここがどこなのか分からなくなるほど。日常から非日常へふっとワープしたような感覚です。

お部屋に入っても、窓の向こうは一面のぶどう畑。このまま何もせず過ごしたいところですが、これから始まるワイナリーツアーへの期待に自然と胸が高鳴ります。

10の部屋にはそれぞれのインテリア
全部屋お見せできなくて残念です


この砂地で、どんなワインが生まれるのか

ワイナリーツアーの始まりは、いつもぶどう畑から。ぶどうに触れ、時には一粒つまんで口に含みながら、スタッフの話に耳を傾けます

足元に広がるのは、信濃川の川砂からなるサラサラとした痩せた土壌。栽培にハンディキャップはないのか…。そんな疑問にスタッフが答えます。

「ぶどうの原産地はコーカサスの砂漠。水捌けの良い痩せた土地です。つる植物のぶどうは、肥沃過ぎる土地だと葉や枝ばかりが伸び、良い実を成らそうとしません。栄養が限られているからこそ、危機感を感じ甘い実を残そうとする。甘やかしてはいけないのは、人間と同じですね」

思わず納得する話。トマトも水を控えた方が甘くなることを思い出し、感心してしまいます。

その後は醸造棟、樽貯蔵庫、地下セラーへ。普段は立ち入れない「ワインづくりの心臓部」を順番に巡ります

オーク製の樽はいい香りが

決まった台本はなく、その日の天候や参加者の関心によって内容が変わるのも魅力のひとつ。スタッフごとに語り口も異なり、何度参加しても新しい発見があることから、リピーターも増えています。

ツアーの締めくくりは、待ちに待ったワインの試飲

ワインづくりの苦労話や背景を知った後の一口は、いつも以上に美味しくどこか愛おしく感じられます。

スタッフからオススメのワインが聞けます


アペロから始まるワイナリーディナー

さぁ、いよいよディナーの時間。幕開けはアペロと呼ばれる食前酒と軽いおつまみです。

アペロの語源は、ラテン語の ouvrir(開く)。食事の前に、食欲や気持ちをゆっくりと開いていくための大切なひとときです。

目の前はアルバリーニョの畑

天気の良い季節には、ぶどう畑を望む芝生でアペロを
暮れなずむ夕陽のもと、スパークリングワインで乾杯すると爽やかな風と澄んだ空気が胸いっぱいに沁み渡ります。

やっと来れたね。カンパ〜イ!

時には地下セラーの鉄格子の中に、ご案内することもあります。

ドイツから運ばれた200年以上前の搾汁機や古樽に囲まれながら、その日その瞬間を味わう演出もトラヴィーニュならではです。

ブランドブランが体に沁みる

ディナーは、新潟の山海の幸や里の恵みに「ぶどう」を巧みに取り入れたフレンチのコース

ここではワインは主役ではなく、あくまで料理を引き立てる存在です。ソムリエお勧めの6種ペアリングは、料理に寄り添いながら絶妙なハーモニーを奏で、この土地でしか味わえないひと皿ひと皿を完成させていきます。

この地の恵み。料理もワインも
すべてがドラマです

春はぶどうの新芽をフリットに、秋は完熟の実をソースに仕立て、冬は剪定枝を敷いたダッチオーブンでお肉を燻し焼き。前菜からデザートまで、ぶどうが静かに顔をのぞかせ、ワイナリーならではの「食の物語」を紡いでいきます。

お皿の上で、料理が完成する瞬間


夜更けのラウンジ、そして静かな朝

デザートを終えると、舞台はホテルのラウンジへ。

夜が深まるなか、赤々と燃える暖炉の前でブランデーやカクテル片手に過ごす時間は、まさに至福です。言葉少なに、ゆっくりと夜が更けいきます。

気分を変えて、お酒も変えて

翌朝は少し早起きをして、朝モヤに包まれたぶどう畑を散策。噴水のある石畳の広場を抜けると、何処からともなく焼き立てパンの香ばしい香りが漂ってきます。

清々しい空気を胸いっぱい吸って

ぜひ、そのまま足を伸ばしてヴィネスパ温泉で朝風呂をお楽しみください。
源泉掛け流しの露天風呂は、化粧水のようにとろりとした湯ざわりで肌はすべすべに、体は芯から温まります。

ワイナリーで温泉、これ以上の贅沢があるでしょうか。

温泉は、究極のリトリートな体験


滞在の締めくくりは、心づくしの朝食

ほどよくお腹が空いた頃に、旅の最後の楽しみ、朝食の時間です。

山盛りの畑のサラダは一見食べきれないほど。でも、昨夜のワインで少し疲れた胃を優しく洗い流してくれます。

畑でとれたて、もぎたてです

焼きたてのパンは、ぶどうの枝に飾られて次々と運ばれてきます。

メインは、地元の「おはようたまご」を使った卵料理。コクのあるオムレツやふわふわのスクランブルエッグも定番ですが、私のおすすめは目玉焼き。シンプルだからこそ、卵の鮮度と旨みが一番よく分かります。

これは、オムレツです!
目玉焼きは地味だから…

「川作ファーム」のもち豚100%の自家製ハムソーセージ、「曽我農園」の濃厚なトマトジュース。さらに新鮮な果物をワインで煮込んだジャムや、ぶどう畑で採取した蜂蜜まで。カーブドッチ周辺は、まさに美味しいものの宝庫です。

特別に凝ったメニューではありませんが、出来立ての味わいと心のこもった手仕事は何よりのご馳走。朝食にスパークリングワインを合わせるのも、ワイナリーならではの贅沢な過ごし方だと思います。

ピッカピカの朝ごはん
どれも優しくて、体に沁みる

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ゆっくり、自分と向き合う時間

次はどこへ行こう、何を見よう。出発前から、果ては旅先でも、楽しむための情報に追われてインプットし続ける旅は確かに刺激的です。

でも、楽しいけれど、どこか疲れてしまう。ふと、そんな感覚を覚えることはありませんか。

トラヴィーニュの客室には、テレビはありません。あるのは窓の向こうに広がる景色と、静かな時間、そしてワインと美味しい料理だけ。ここで過ごしてほしいのは、「何かを得なければいけない時間」ではなく、「日々の忙しさから少し距離を置いて自分を見つめる時間」です。

自分を見つめるきっかけに出会うには、思っている以上に「心の余裕」が必要なのかもしれません。仕事に、家事に、育児に。忙しさに追われる日常のなかでは、本当に大切なことほど、気づかないまま通り過ぎてしまいます。

だからこそ、カーブドッチには「泊まる」ための場所が必要だと思いました。ただ訪れるのではなく、腰を下ろし、立ち止まる。その時間と心の余白を、きちんと確保するためのオーベルジュです。


「元気になる」を目的にしたくない

最近、リトリートという言葉をよく耳にするようになりました。

カーブドッチもワイナリーリトリートを目指しています。けれど私は、「癒される」「元気をチャージする」といった結果を前提にした表現に、少しだけ違和感を覚えています。

元気になるかどうかは、その人自身が決めることです。傷ついているなら、無理に癒えなくてもいい。とことん、その傷を見つめる時間があってもいい。どうにもならない気持ちを抱えているときに、「元気になりましょう」と言われても、心は簡単には追いつきません。

大切なのは、今の自分を評価も結論もつけずに静かに見つめる時間があること。変わる体験ではなく、気づきが生まれるための「余白」を持つことだと思うのです。


ただ、立ち止まれる場所があればいい

日常から少し離れて、本に囲まれ、好きな音楽を聴き、無心に季節の移ろいを眺めてみてください。

すると、「こんな景色があったんだ」「この音、いいな」「今の自分は、こう感じてたんだな」そんな小さな気づきが、考えようとしなくても自然と自分の内側に落ちてくることがあります。

変わらなくていい。元気にならなくていい。それも含めて人生なのだと、腑に落ちる瞬間が訪れるかもしれません。少し距離をおいて眺められるようになった時、私たちはまた日常へ戻っていけるはずです。

人生にそっと余白を取り戻すための場所でありたい。そんな思いを、カーブドッチに込めています。


季節とともに、少しずつ表情を変えていくトラヴィーニュ。いつ、何度足を運んでも、そのたびに新しい顔を見せてくれる場所です。次回は、カーブドッチに対して、今、私が感じている「まだ足りないもの」についてお話します。どうぞお楽しみに。

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