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カーブドッチ物語 #30|ビールなのにワインと同じつくり方

新年度を迎え、新潟にも一気に春がやってきました。アヴェダサロンの庭の一本桜が咲き、まわりの山々は薄紅色の山桜に染まっています。

これからぶどうが芽吹き、やがて爽やかなバラの季節、そしていよいよ夏へ。今回は、夏に向けて喉を鳴らして味わっていただきたい、カーブドッチの新しい試みについてお話しします。


ライターズ・イン・レジデンスは
ちょっとひと息

さて、ライターズ・イン・レジデンスのプロジェクトは、原田マハさん、吉本ばななさんの物語の出版を終え、いよいよ恩田陸さんへと続きます。活躍中の女性作家三人の物語を揃えるべく、現在は装丁の準備に入っています。

恩田陸さんの作品はホラー小説。そういえば、滞在中にカーブドッチのあちこちを取材して回られていたようです。どこの施設にもあるような都市伝説や、〇〇スポットのような話を集めていたのかもしれません。私も耳にしたことはありますけど、カーブドッチでね。

ただ、そのまま表紙をデザインすると怖すぎるかも…ということで、ブックディレクター・幅さんのセンスにお任せすることにします。

発売まもない『砂山』。カーブドッチでしか手に入らない吉本ばななさんの一番新しい物語です。お取り寄せもできます。


カーブドッチのビール事情

ここからはちょっと気分を変えて、ビールのお話。カーブドッチはワイナリーですが、実はビールとも無縁ではありません。むしろ、もう20年以上も前からつくっているのです。


クラフトビールの黎明期

随分前にあったビールブームを覚えていらっしゃいますか?

最大のきっかけは、1994年の酒税法改正。ビールの最低生産量が、今までの2000㎘から60㎘へと、大幅に引き下げられたことです。この規制緩和によって、300以上もの小規模なブルワリーが、次々と観光地や温泉地に誕生しました。

当時の呼び名は「地ビール」でしたね。一気に増えたものの、醸造技術や経験の不足から品質にバラツキがあり、価格も大手に比べて高かった。結果、多くの醸造所が撤退・倒産しました。

その後、生き残ったつくり手たちが技術を磨き、アメリカのクラフト文化やIPAなどのビアスタイルが流入。一度しぼんだブームが息を吹き返し、現在の「クラフトビール文化」として花開きました。

カーブドッチでも、ビールをつくろうという機運は高まりました。けれども、醸造機器を揃えるには何千万円とかかりそうで、とても無理だと諦めていたのです。


思いがけず手に入った醸造機器

日本で最初の地ビール「越後ビール」を立ち上げたのは、すぐ近くの日本酒メーカーさんでした。テレビやマスコミを賑わせ、地元はその話で持ちきり。当時の巻町は、日本酒・ワイン・ビールの製造元が揃う、国内唯一の自治体だったのです。

そんな折に突然、池袋のとある会社から思いがけない話が舞い込みます。

その会社が運営していたのは、大型の地ビールレストラン。テーブル席のど真ん中には醸造機器が鎮座し、目の前で醸造作業を見ながらビールが味わえる、臨場感あふれるお店です。

お店の責任者さんが、「うまくいかなくて閉店することにしたのですが、醸造機器の処分にもお金がかかる。まだ3年位しか使ってないのにもったいなくて…。カーブドッチさんが持って行ってくれるのなら、全て無料で差し上げます」と言うではありませんか。

無料ならば、話は早い。「新潟から取りに行きます!」と、いつもの調子で即決したのです。


池袋から運んだ、執念の煮出し窯

真冬の2月に、ワイン製造部の屈強なスタッフ数名とともに、トラックを走らせ上京。夜遅く、池袋の地下2階にある店へ降り立ちました。煮出し窯、発酵タンク、ろ過機と、順番に機材一式をエレベーターで地上へ運び、トラックに積み込んでいきます。

ところが、最後の大物、煮出し窯がどうしてもエレベーターに入らない。わずか10cmほどですが、幅が足りないのです。角度を変えても無理。「そんな!一体どうやって搬入したの?」と首をひねるも、結局、持って階段を上がるしかありません。

池袋なので階段も狭く、ギリギリのサイズ全員で何百キロもある煮出し窯を担ぎ、地下2階から休み休み階段を上がりました。あの光景は今でも忘れられません。

トラックにやっと積み込んだ頃には夜が明けていました。気が呆けてしまった私たち、駅前の牛丼屋さんで食べた朝ごはんの美味しかったこと! 空腹に沁み込み生き返る思いでした。

右側に写っているのが、エレベーターに入らなかった思い出深い窯です


自家製ソーセージと地ビールのお店

その後、ドイツで技術を学んだスタッフを中心に製造体制を構築。無料で手に入った機械も無事に稼働して、2002年からビールづくりを開始します。そして、自家製ソーセージと地ビールで賑わう「レストラン薪小屋」がオープンしました。

レストラン薪小屋は、ドイツ風の建物
ビールの窯を背に、乾杯!
「越後もち豚」のかたまりを、薪の火で豪快に焼いて
薪小屋でつくる自家製ソーセージ。本格的です


ビールづくりは、人間力が100%

ビールづくりは、お料理と似ていました。

まずは、出来上がりをイメージして、レシピを作るところから始まります。原料は麦芽、ホップ、酵母、そして大量の水。日本では、水以外はほとんど輸入の乾燥モノを使っています。新潟は水が美味しいので、水道水でも十分でした。

それらをブレンドして、味を設計する。つまりビールは、人間の力が100%と言える飲み物です。

ビールの原料
上がホップ、左が麦芽、右が粉砕した麦芽です

それに比べて、ワインの何と不確かなことでしょう。

原料は果物なので、その年の天候によって毎年出来が変わります。自分たちが思った以上のぶどうが実ったり、その逆もある。使うのはその年にできたぶどうのみ。水すら加えないのだから、ぶどうの力が100%です。

これがワインづくりの面白さであり、難しさであり、「ワインは永遠のロマン」と言われる所以。人を惹きつけてやまない理由なのでしょう。何とも罪深い飲み物です。

ワインづくりを「農業」とするならば、ビールづくりは「食品加工」に近いかも知れません。私にはワインづくりに比べて、とても簡単に見えました。だから、気軽につくって、グビグビ飲むことにしましょう。


もし、ワイン醸造家がビールを仕込んだら

巡り巡って、今やクラフトビールの時代です。もし、ワイン醸造家がビールを仕込んだら…どんな味になるのか、気になりませんか?

そこで、今年、専用のビール工場を新設。カーブドッチでも本格的な製造に乗り出すことにしました。これまでの設備では、レストランで提供する量しかつくれなかったからです。

せっかく工場をつくるなら、つくり方も刷新しよう。これまでにないビールをつくってみたい。目指すのは、全国の酒販店に出荷できるほどの規模でありながら、カーブドッチならではの個性が光るクラフトビールです。

ビールもまた、「麦」という植物からつくる発酵酒。ならば、ワインづくりの延長で考えてみたらどうだろうか。そんな発想で、ジャンルの垣根を軽やかに飛び越えてみたい。長くワインと向き合ってきたからこそ、たどり着いた視点なのかもしれません。


さぁ、一体どんなビールが完成するのか。ワイン醸造家にしか考えつかない作り方とは。

次回は、満を持してお届けするカーブドッチブルワリーのラインナップをお披露目します。なんと最初から「2つのシリーズ」を同時に立ち上げることになります。

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