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#05|企画を動かすために「Builder」がしていること

【この記事で学べること】
企画を止めている本当の原因を見立て、動く状態をつくる方法

1分でわかる、この記事のポイント
・企画が止まるのは、誰かが怠けているからとは限らない。情報、人、技術、判断基準など、次へ進むための何かが欠けている場合が多い。

・Builderは、目の前の作業をこなす前に、「この企画を止めているものは何か」「何がそろえば動き始めるか」を見極め、AIで仮説や試作品を速く形にし、人や現場へ見せて確かめる。その反応から、表現だけでなく企画の前提まで見直す。

・複雑な状況を相手ごとに判断できる言葉へ変え、誰が、いつまでに、何をするかを具体化する。Builderは何でも屋ではなく、実際の一歩が始まるところまで前へ進める人というお話。



Builder | Issue #05
第1章 | Builderとは何者か



前回の記事では、AI時代にさらに求められるのは「考える人」であり、Builderとは、動きながら考え続けられる人ではないか、という話を書きました。

では、そのBuilderは、実際の仕事の中で何をしているのでしょうか。

企画を考えるのでしょうか。会議を仕切るのでしょうか。それとも、関係者の間に入って調整するのでしょうか。

どれも間違いではありません。ただ、それだけではBuilderの仕事を説明し切れない気がしています。

OpenAI、Amazon、Googleなどが使っているBuilderという言葉は、職種も担当範囲も同じではありません。一方で、それぞれの求人を読み比べると、企画や技術を考えるだけで終わらず、実際に使われ、成果が生まれるところまで前へ進めようとする共通の動きが見えてきます。

今回は、その共通点を、私自身の経験とも照らし合わせながら整理してみたいと思います。


企画は、誰かが怠けているから止まるわけではない

新しいプロジェクトでは、関係者のほとんどが、それぞれの仕事をきちんとしています。

企画担当者は企画書を作ります。営業担当者は顧客の反応を気にします。エンジニアはシステムとして実現できるかを確認し、法務は契約やリスクを精査します。経営者は、投資に見合う成果が得られるのかを判断します。

誰かが明らかに間違っているわけでも、仕事を怠けているわけでもありません。それでも、プロジェクトが停滞してしまうことはよくあります。

企画はある。しかし、最初に提案すべき相手が本当に決まっているのか。

技術的には作れる。しかし、現場は本当にそれを求めているのか。

必要な関係者はそろっている。しかし、何度会議を重ねても結論が出ず、曖昧なまま次回へ持ち越されている。

特に新規事業のような新しい取り組みでは、既存の部署や肩書きだけでは処理できない問題が次々に現れます。私は、企業が求めるBuilderの役割は、まさにこうした場面で表れるのではないかと考えています。


まず、企画を止めているものを見つける

私がBuilderに必要だと考えるのは、目の前にある作業を速くこなすことだけではありません。

この企画を次へ進めるために、今、何が足りないのか。

この問いから考え始めることです。

意思決定者が決まっていないのであれば、誰が何を判断すべきかを整理する。顧客の反応が分からないのであれば、資料を完成させる前に意見を聞いてみる。議論が抽象的なままなら、AIを使って試作品や比較案を作り、具体的に話せる状態にする。

不足しているものは、案件によって違います。

情報が足りないこともあれば、人や技術が足りないこともあります。予算や契約条件が決まっていない場合もあれば、関係者の間で目的の理解がずれているだけの場合もあります。

だからこそ、目の前に並んだ作業だけを見ていても、企画が止まっている原因には気付けません。

何がそろえば、プロジェクト全体が動き始めるのか。その一点を、幅広い視点から、かつ深く考える。私は、ここにBuilderらしい仕事の進め方があると思っています。


AIで速く形にし、人や現場に確かめる

「多角的に考える」と言葉にするのは簡単ですが、以前は、それを実行するだけでも多くの時間がかかりました。

仮説を確かめるために市場を調べ、複数の案を作り、比較資料や試作品を用意する。そこまで進むだけで数日、場合によっては数週間を要したため、一度作った企画を途中で大きく変更するのも簡単ではありませんでした。

AIの進化によって、この仕事は大きく変わりました。

複数の仮説を短時間で調べ、比較し、企画や資料、試作品として形にすることができます。だからこそ、頭の中だけで正解を探し続けるのではなく、早い段階で形にし、人や現場へぶつけられるようになりました。

ただし、AIが作ったものを、そのまま正解として使うわけではありません。

誰に伝える資料なのか。相手は何を不安に思うのか。現場で本当に運用できるのか。お客様は、その企画を魅力的だと感じるのか。そもそも、AIへ出した自分の指示は適切だったのか。

AIが作ったものを自分でも確認し、人に見せ、反応を聞く。違和感があれば、表現だけではなく、AIへの指示や企画の前提から見直す。必要であれば、もう一度ゼロから作り直す。

AIを使うBuilderに求められるのは、完成品を一度で作ることではないと私は考えています。

「考えるための材料を速く作り、それを現実と照らし合わせながら、何度も見直せること。」

それによって、仮説を立て、試し、学び、修正するサイクルを、これまでとは比べものにならない速さで回せるようになります。


相手が判断し、動ける言葉まで具体化する

仕事は、論理だけでは動きません。

同じ企画を見ても、経営者は収益性や将来性を気にします。現場は業務の負担が増えないかを心配し、営業は顧客へ説明しやすいかを考えます。エンジニアは要件や実現性を確認し、法務はリスクを精査します。お客様は、会社が伝えたい価値ではなく、自分にとって本当に便利か、魅力的かで判断します。

それぞれの立場には、それぞれの正しさがあります。

企業が求めるBuilderは、こうした違いを無視して、全員を無理に同じ方向へ向かせる人ではないと私は思います。

相手が何を大切にし、何を不安に感じているのかを理解する。そのうえで、同じ企画を、それぞれが判断できる言葉へ置き換える。

経営者には、なぜ投資する意味があるのかを伝える。現場には、実際の運用方法と負担を示す。エンジニアには、必要な要件と優先順位を明確にする。お客様には、その商品やサービスによって生活や仕事がどう変わるのかを伝える。

単に人と人をつなぐだけではありません。

複雑な状況を、相手が理解し、判断し、次に動けるところまで具体化する。

私は、ここにBuilderの重要な役割があると考えています。


次の一歩を、誰でも動ける形まで決める

企画が止まっている会議では、議論そのものが不足しているとは限りません。

話すべきことは十分に話している。それでも、

「結局、誰がやるのでしょうか」
「次回までに、何を確認するのでしょうか」
「どの状態になれば、次へ進めるのでしょうか」

という部分が決まらないまま、会議が終わることがあります。

私は、こうした「次の一歩」を曖昧なままにしないことも、Builderに求められる重要な動きだと考えています。

今回の会議で何を決めるのかを整理し、誰が、いつまでに、何をするのかを明確にする。すべてを一度に完成させようとするのではなく、最初に何を小さく試すのかを決める。その結果を、何を基準に判断するのかも決めておく。

次にやることが具体的になれば、人は動けます。
人が動けば、それまで分からなかった新しい情報が集まります。その情報をもとに、企画や進め方をもう一度考え直すことができます。

私は、この繰り返しを止めないことが、企画を実現へ近づけるのだと思っています。


何でも屋でも、単なる調整役でもない

ここまで書くと、Builderは頼まれた仕事を何でも引き受ける人や、関係者の間に入って調整する人のように見えるかもしれません。

しかし、私は少し違うと考えています。

Builderは、頼まれた仕事を何でもする人ではありません。また、調整すること自体を目的にしているわけでもありません。

目指しているのは、まだ形になっていない企画を、関係者が理解し、判断し、実際に動かせる状態へ変えることです。しかもこれまでより遥かに速いスピードで。

そのために必要であれば、AIで調査し、資料や試作品を作り、専門家を探し、現場へ足を運び、会議の進め方を設計する。途中で前提が崩れれば、自分の考えや進め方も修正する。

ここで重要なのは、担当外の仕事を抱え込むことではありません。企画を実現するために不足しているものを見極め、自分で担うのか、誰かに任せるのか、AIに任せるのかを判断することです。

Builderとは何か。私は、この連載を通じて、今も考え続けています。

ただ、現時点では、次のように捉えています。

Builderとは、複雑な仕事を、相手が理解し、判断し、次に動けるところまで具体化し、実際に動き始めるまで前へ進める人である。

これは、世界のすべての企業が共有するBuilderの定義ではありません。

OpenAI、Amazon、Googleが使うBuilderという言葉には、それぞれ異なる意味があります。その求人内容と、私自身がこれまで経験してきた仕事を重ねたときに見えてきた、現時点での私なりの解釈です。

次回は、その違いをもう少し詳しく見ていきます。

同じBuilderという言葉でも、企業によって、求めている役割や専門性は少しずつ異なります。その違いを知ることで、Builderという仕事が持つ可能性を、さらに広く考えてみたいと思います。

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