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美味しさは思ったよりシンプルだった♯3〜塩からあげ〜

当時は自分が何味を食べているかなんて
意識していなかったけど
今思えば高校生まで
塩味のものを唐揚げとして認識していた。

父親が作る、我が家の唐揚げは
鶏もも肉を3〜4枚分、
大きな揚げ物バットが2枚食卓に並ぶ。

食卓にバットが揃う前に、
私と姉は待ちきれず、つまみ食いをする。

1枚目のバットが無くなりそうな頃、
父が次のバットを持ってくる。

「おいおい、もう食べたんか。
次はもっと揚げんといけんの。」

そう言いながら、
父はどこか嬉しそうに笑っていた。

(唐揚げのときはつまみ食いOKの日
だったので遠慮なく…)


広島を離れ、東京の大学に進学。

上京してから、私は少し驚いた。
唐揚げといえば醤油味が主流らしい。

にんにくや生姜を効かせたもの。
甘辛い下味のもの。
お店で食べる唐揚げの多くがそうだった。

でもわたしの頭の中にある唐揚げは少し違う。
探しても、なかなか出会えなかった。


ある日、父に聞いてみた。

「なんで父さんの唐揚げは美味しいの?」

返ってきた答えに拍子抜け。

「わからん。たいしたことない。」

コツを聞いても、

「とくにないけんのう。
まー怖がらんことじゃね。」

と言う。

たぶん本人にもわからない、
何十年も繰り返してきた手の感覚。

揚げる音。
肉の状態。

そういうものが積み重なっているのだと思う。



父の味を思い出しながら、
自分でも塩唐揚げを作るようになった。

まったく同じ味にはならないが作るたびに思う。

塩唐揚げには、シンプルだからこその良さがある。

醤油を使わない分、焦げにくく
余計な水分が少なくてカリッと揚がりやすく
とても作りやすい。

そして何より、
鶏肉そのもののおいしさがよくわかる。

今回は私なりのレシピで
大したことはないのだけど書き残しておく。

〈 材料 〉
鶏肉      2枚 ( 1枚あたり約350g )
塩       小さじ1.5

強力粉     適量

油       適量

個人的には、上顎が傷ついて痛くなるくらい
ゴリっゴリの硬さの唐揚げが好きなので
粉は片栗粉・米粉をよく使う。

最近ハマっているのは強力粉。
パン作りによく使われる「春よ恋」は
粒子が細かいからか、
薄づきでカリッとしながらも
上品な味になる気がする。

唐揚げといえば鶏もも一択だったが
最近は鶏むねの方が美味しく感じる。

だから夫用に鶏もも1枚、
わたし用に鶏むね1枚で揚げている。

160℃で4−5分。
取り出してアミの上で2−3分置いて
180℃で1−2分。

二度揚げできつね色に仕上げて出来上がり。

シンプルだからこそ、
油がかなり味を左右するため
新しく、美味しいものがオススメ。

一番しぼりの表記がある油の方が
胃もたれしにくく、美味しく揚がりやすい、、、
というのが個人的感想。


鶏肉1人1枚は多くない?と思われましたか?

油は時間が経つにつれて酸化し
味が落ちてしまうから、
我が家では1度にたくさん揚げて
残りは冷凍ストックしている。

(次回も使おうと残すのも面倒なので
使い切る方が心の衛生が保たれる。)

おかずが足りない時、
忙しい時にパッとおかずになるので
冷凍しておくとちょうど良い。

今回はそのストックで作るアレンジレシピを。

唐揚げの甘酢あん

〈 材料 〉
唐揚げ       5−6個  
赤・黄パプリカ   各1/2個
舞茸        1パック

Aケチャップ・酢   各大さじ1.5
塩         ひとつまみ

B水        200ml
B片栗粉      小さじ2

〈 手順 〉
01|パプリカは乱切りに、舞茸は大きめにほぐす。
02|フライパンに塩少々、舞茸、パプリカ、A、塩少々を順番に重ねる。

03|中火で熱し、フツフツしたらフタをして3分加熱。
04|03にBを加え、強めの火でとろみが出るまで強めの火で煮詰める。

05|2−3等分に切った唐揚げを加えてサッとあえて出来上がり。



今でも、
私の中で一番おいしい唐揚げは父の唐揚げ。
いろいろなお店で食べてきたけれど、
超えるものにはまだ出会えていない。

ただ最近は少し変化がある。
夫もおいしい唐揚げを揚げるようになった。

揚げたての唐揚げを頬張りながら、
「この人と結婚してよかったな」と思う。

夫の唐揚げに父の唐揚げの思い出を重ねながら
揚げたてを囲んでワクワクする高揚感を思い出す。

人の味覚は、何を食べてきたかだけでなく、
誰と食べてきたかによっても作られるのかもしれない。

高校生までのわたしは、
父の塩味ベースのシンプルな料理を食べてきた。

素材の味を生かした料理が好きなのは、
その影響なのかもしれない。

塩だけで味付けした唐揚げを食べる度に、
わたしはあの頃の食卓も思い出している。

〈 写真:山本りい子 〉


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