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【連載小説3/5】 ✈️栄誉と金と、昇進と。

第一話 ジューヌとルルーの冒険
第二話 空賊ルルーと、白い船

短めのシリーズ物の予定です。


甲板の華奢な姿に、勝手に胸が震え出した。
銃床が、汗ばんだ手のひらでわずかに滑る。

おいおい、やめてくれよ。
もう十年も前の古びた夢だ。

くだらない、子どもじみた、震えるように熱い夢。



飛び出した先の小さな街で、
俺たち子どもの居場所なんかなかった。

食うために金を稼ぎ、
金を稼ぐために夢を失った。

ルルーは、『ルージュ・ブラン』を捨てて、
何を得たんだろう。

俺だけの踊り子になって、
本当に幸せになっただろうか。



「ジューヌ!飛行機を売るってほんとう?」

ルルーの青い瞳は、揺れる水底みたいな目をしてた。

……俺が再び、この瞳にさせてしまったのか。

真っ直ぐな瞳を見るたび、塵のように消えてしまいたくなった。
不甲斐ない俺を、どうしてこの娘は信じてくれたんだろう。

あの頃のことは、今でも喉の奥に引っかかっている。



それから俺は、一人で街を出て、帰らなかった。
飛行機を売った金を、罪悪感と一緒に机に残して。

逃げたんだ。結局、俺は。



ルルーがお尋ね者になっているのは知っていた。
空賊ルルー。
義賊のリーダー。

遭遇することはないと思っていた。
彼女の船は神出鬼没で、一度たりとも捕まらなかったからだ。

ルルーがどうやって、
今の境遇に落ち着いたかは、わからない。
知る権利もないと思った。

逃げ出した俺を、憎んでいるかもしれない。
警官になった俺を、軽蔑しているかもしれない。

眼裏に、薄いブロンドと青い瞳が浮かんだ。
水の揺らめくような、澄んだ瞳。

そして今、甲板の上にも同じ青があった。



甲板越しに、見えた人影。
小さな華奢な、青い瞳。

時が止まった気がした。

あの頃より、大人びて、
あの頃より、現実的な瞳。

俺は銃に力を込めた。
撃つべきだ。警官なら。

空賊のリーダーを撃ち取り、
栄誉と金と、昇進を得るべきだ。

引き金にこめる指がぶるぶると震える。

――君と俺の、未来をのせて。
どこまでも。どこまでも。

古びた夢が追いかけてくる。

やめろ、やめてくれ。
もう、覚えちゃいねぇんだ。

だが知らぬ間に、俺は銃を下ろしていた。

青い船は、雲間に紛れて消えていった。
消えない影絵を、俺の心に残したまま。


つづく


ルルーと過ごしていた頃




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