【風まかせ文芸部】夏の終着点|エッセイ
タイトル: 夏の終着点
夏の終着点は、どこにあるのだろう。
暦の上で夏が終わる日。
蝉の声が聞こえなくなる日。
それとも、夕方の風に秋の気配を感じた日。
私は毎年、夏の終わりを探している。
今年も、いつの間にか暑さのピークを越えた。
少し前まで、朝から蝉が大合唱していた。
空には大きな入道雲が浮かび、外へ出るだけで汗が流れた。
それが今では、夕方になると風が少し涼しい。
日が暮れるのも、ほんの少し早くなった。
夏は、終わることを宣言してくれない。
ある朝突然、
「今日から秋です」
と告げられるわけでもない。
小さな変化を一つずつ置いていきながら、静かに遠ざかっていく。
人との別れも、もしかしたら同じなのかもしれない。
最後に「さようなら」と言った瞬間だけが、終わりではない。
会う回数が減ったり、
連絡が少なくなったり、
思い出すことが少しずつ減ったり。
そうやって、いつの間にか距離ができていく。
だから私は、終わりが少し苦手だ。
終わったことを認めるには、少し時間がかかる。
でも、夏の終わりを見ていると、終わることは悪いことばかりではないと思える。
夏が終わるから、秋が来る。
秋が終わるから、冬が来る。
季節は、何かを失いながら、次の何かを連れてくる。
終着点は、行き止まりではない。
次の場所へ向かうために、一度立ち止まる駅なのかもしれない。
夕暮れの空を見上げる。
入道雲は、もう小さくなっている。
遠くで、最後の蝉が鳴いた。
私はその声を聞きながら、心の中で小さく言う。
「今年も、ありがとう。」
夏の終着点。
そこには、少し寂しくて、少し優しい風が吹いている。
そしてその風の向こうから、
まだ名前のない季節が、ゆっくり歩いてくる。
了

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