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【風まかせ文芸部】金木犀|エッセイ
タイトル:香りが連れてくる秋
金木犀の香りがすると、秋が来たんだなと思う。
道を歩いていて、ふと甘い香りがする。
あたりを見回しても、最初は花がどこにあるのか分からない。
それなのに、香りだけは確かにそこにある。
金木犀は、季節を知らせるのが少し早い。
「秋ですよ」と声をかける代わりに、風に香りを乗せて教えてくれる。
私は、この控えめな知らせ方が好きだ。
春の桜のように、たくさんの人を振り向かせるわけでもない。
ただ、いつもの道にそっと香っている。
そして、その香りに気づいた瞬間、去年の秋のことまで思い出したりする。
季節には、記憶を連れてくる力があるのかもしれない。
同じ香りを嗅いだだけで、昔の風景や、その頃の自分がふっと戻ってくる。
不思議だけれど、少し嬉しい。
今年もまた金木犀が咲いた。
それだけで、「去年もちゃんと秋を過ごしたんだな」と思える。
季節は毎年巡ってくる。
でも、同じ秋は二度と来ない。
だから今年の秋も、できるだけゆっくり味わいたい。
金木犀の香りを追いかけながら歩く。
どこに花があるのか探しているうちに、いつの間にか少し遠くまで来ていた。
振り返ると、帰り道にも金木犀の香りが残っている。
秋は、目で見るだけじゃない。
風に乗ってやってきて、
記憶の中にそっと咲く。
了

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