【掌編小説】夏の終着点⌇風まかせ文芸部
季節列車が、ゆっくりと走っている。
車窓から見える海は、青さをたたえて、
きらめく。
蝉もまだ鳴いている。
なのにどこか、終わりの気配が漂う。
私は最後尾の窓から、過ぎていく景色を眺めていた。
入道雲。
麦わら帽子。
割れた、宝石のようなスイカ。
誰かがビーチに置き忘れたサンダル。
全部、少しずつ遠ざかっていく。
やがて列車は、見知らぬ小さな駅に
停まった。
駅名標には、
「夏の終着点」
と書かれていた。
そっと降りてみる。
ホームには誰もいない。
風鈴がひとつ、ちりん、と鳴った。
振り返ると、列車はもう動き始めている。
待って。
まだ、いかないで。
そう思った瞬間、車窓からひらりと何かが
落ちてきた。
拾い上げる。
それは、1枚の向日葵の花びらだった。
思わず微笑む。
夏は終わってしまうんじゃない。
次の季節へ、乗り換えるだけなのだ。
今度は列車が入ってくる音がして、ほのかに
金木犀の香りが漂ってきた。
お題に参加させていただきました。
iさん、ありがとうございます。
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「不運だけど不幸じゃない」をテーマに、頭の中の考えや記憶、気持ちなどをぽこぽこと形にしています。ひとりじゃないんだなと思っていただけたら嬉しいです!