「教育現場のニーズ」に収まりきらないもの——総合教育センターでの実践から【教育シリーズ⑤】
私は普段精神科に勤めながら、
スクールカウンセラーとして
学校に入っています。
こうした「境界またぎ」な
ワークスタイルを継続してきたことで、
教育と医療との連携を積極的に考える
ようになりました。
【医療ー教育連携シリーズ】
①学校視点でみた医療―教育連携の困難さ↓
(学校からみたら、
医療って繋がりにくいですよね…)
②医療視点でみた医療―教育連携の困難さ↓
(逆に、医療からみても、
学校って繋がりにくいところがあります)
③効果的な医療―教育連携によって出来ること↓
(上手く連携が取れるようになった
時の参考例があります)
このような活動を
地道に行なって数年が過ぎた頃。
私が住んでいる市の
教育委員会から
「一緒に仕事出来ませんか?」
というありがたい声が
かかりました。
配置先の総合教育センターは、
教育の充実化と向上を
目的とした施設。
センターが
主に行ってることは、
①学校の先生の研修
初任者研修、経験年数別研修など
「先生のための学びの場」の提供、
② 教育相談・支援
不登校や学校不適応などに関する
相談対応、
学校だけでは難しいケースへの
専門的なサポートの提供、
など。
まさに
最前線の学校現場を後方から
サポートする機関なのです。
私に与えられた役割は
専門的教育相談員
市内の小・中学校から
要請の上がった学校に訪問し、
学校だけでは対応が難しい
ケースへの助言を行なったり、
心理学の視点から
教育センターの先生方に助言を
行なったりするのが仕事です。
そのようにして
あちこち学校を回るなかで、
ここ何年かに渡ってセンターの
教育支援テーマになっているのが、
「学校に来れなかったり
悩みを抱えたりするお子さん
に対する、学校の対応力向上
をどう実現していくか」
です。
そして、
そのためのマニュアル
作成が検討されているのです。
基本的には、
2つの考え方を組み合わせて
理解しようとする試みが
なされています。
一つ目は
氷山モデル
にならった考え方。
これは、
表立って見える問題(不適応)
行動の背後には、
外からでは見えない別の
原因がある、
ということを表した
モデルですね。
例えば、
教室で騒ぐ子や
他児とのトラブル
をよく起こしてしまう子。
何度も指導しているのに
上手く伝わらない子、
など。
学校場面では、
並行して
行わなければならない作業
(例えば授業しながら
特定の子の様子を観察する
など、全体を見ながら個別も
見るような平行作業)
に常に追われるのが
当たり前の状況です。
しかも、
それに加えて突発的なこと
(生徒同士のトラブルなど)
が同時多発的に生じるため、
どうしても問題を表面的に
捉えてしまう傾向があります。
(というか、そうしなければ
全ての案件を処理できない)
そこで、
表立って見える問題の背景に
別の問題がある可能性を
すぐイメージできるモデル
として、
氷山モデルが選ばれているのです。

二つ目は有名な
マズローの欲求階層説
を踏まえた考え方。
ピラミッドの上の欲求に
関心が向いていくためには、
下の欲求が満たされている
必要がある、
とする
モデルです。

例えば、
他者から認められたい、
先生から褒められたい
という承認の気持ちは、
生理的に満足できて
安全・安心が保たれ、
「ただいま」
と言った時に
「おかえり」
と返してくれる
集団があって
初めて持てるようになる
気持ち
ということです。
この氷山モデルと
マズローの欲求階層説を
組み合わせることで、
「表面的には対人トラブルを
起こしやすい子」
であっても、
その背景として
安全・安心が揺らいでいるのか
所属が途切れているのか
承認が満たされていないのか
と、
背後の欲求レベルを想像して
“原因を仮置き”することができる
ようになると
センターでは考えているのです。
この2つのモデルを
組み合わせたマニュアルを
周知していくことで、
「お子さんの様子や状態を
しっかりと理解していく力」
の向上を目指し、
「悩みを抱えるお子さん
に対する、学校の対応力向上
を実現」
していこうという狙いなのです。
少しでも多くの先生方が
お子さんの異変に早期に気づき、
かつ先生方ご自身の
「様々な事を同時にこなす」
情報処理のコストを
圧迫しないモデルの提示
がなされていくことを
望んでいます。
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