見出し画像

AIで作った仕組みが続かないのは、意志ではなく呼び出し方の問題です

AIで作った仕組みを使わなくなるのは、続ける気が足りないからではありません。呼び出すまでに、覚えておく手間が残っているからです。

私自身がそうでした。この連載の2本目で「これで毎月の転記は一言で終わります」と書いた仕組みを、私はその後ほとんど使っていません。手順が壊れたわけではありません。止まっていたのは、呼び出す側の私でした。

AIに手順を覚えさせて仕組みを作ったのに、気づいたら元のやり方に戻っていた。そういう覚えがある方に向けて、今日は何が起きていたのかと、いま実際に動いているほうの形を書きます。

はじめましての方向けに一行だけ。私は非エンジニアの会社員で、そのかたわら一人でデジタルマーケティングの事業を運営しています。AIで実務を仕組み化していく過程を、毎日実録で書いています。

導入したものが使われなくなるのは、珍しい話ではないようです

先に、自分だけの失敗談かどうかを確かめておきます。

中小企業庁の2022年版「中小企業白書」に、デジタル化に取り組む際の課題を段階別に聞いた調査があります。そこでは「従業員がITツール・システムを使いこなせない」を挙げた割合が、取組がどの段階にある企業でも3割以上でした(出典:中小企業庁 2022年版中小企業白書 第2-3-39図。調査は東京商工リサーチ「中小企業のデジタル化と情報資産の活用に関するアンケート」2021年11〜12月・中小企業と小規模事業者20,000社対象・回収4,877社)。

これは組織で従業員が使う話で、一人で仕事をしている人の統計ではありません。それでも、道具を入れたあとに「使われない」という段差ができること自体は、私の手元だけで起きている現象ではなさそうです。

私の場合、使わなかったのは従業員ではありません。作った本人です。

私が作ったのは、合言葉で呼び出す仕組みでした

具体的に何を作ったのかを書きます。

毎月、複数のクライアントの最新の数値を集めて、決まった1か所に転記する作業がありました。数字を見にいって、拾って、並べ替えて、貼る。難しくはないけれど、毎月きっちり時間を取られる種類の仕事です。

そこで、その手順をAIに覚えさせて、貼り付け用のデータだけが出てくる形にしました。呼び出し方は、自分で決めた短い合言葉を打つだけ。作った直後は、これで毎月の転記は終わったと思いました。

思っただけでなく、その回の記事にそう書きました。「一言で毎月の転記が終わります」と、はっきり書いています。当時の記事はいまも公開したままにしてあります。

使わなくなった理由は、その合言葉を思い出せなかったことでした

正直に書きます。私は自分で決めたその合言葉を、覚えていられませんでした。

理由はたぶん単純で、使うのが月に一度だけだったからです。翌月になると、何と打てば動くのかが出てきません。少し考えて、思い出せなくて、結局いつもの手でやる。それを何度か繰り返して、その仕組みは私の中から消えました。

このとき止まっていたのは仕組みの側ではありません。仕組みは呼べば動く状態のまま、置いてありました。止まっていたのは、呼び出す側の私です。

自分で決めた合言葉というのは、自分にしか意味が通じない言葉です。意味が通じないものは、一か月あいだが空くと出てきません。私は、続けるのに記憶力が要る形を、自分で選んでいました。

いま動いているのは、普段の言い方でそのまま頼める形です

その後、この作業は別の形に置き換わりました。

いまは、転記用のデータだけを出させるのをやめて、月報を作ること自体をまとめて頼んでいます。頼み方は「◯◯の月報を書いて」で、普段人にお願いするときと同じ言い方です。

変えたのは中身の高度さではありません。入口のほうです。合言葉を思い出す工程がなくなった時点で、呼び出される回数が戻りました。

同じ道具でも、覚えないと入れない入口を付けるか、いつもの言葉で入れる入口を付けるかで、その後の運命が分かれると思っています。

覚えなくていい入口は、最初から用意されていました

あとで気づいて、少し悔しかったことを書きます。

私が使っているAIのClaude Codeには、手順をまとめて登録しておく「スキル」という仕組みがあります。公式のドキュメントによると、これは「/名前」で直接呼び出すこともできますが、それだけではありません。どんなときに使うものかを説明として書いておくと、関連する場面でAIが自動的に読み込みます(出典:Claude Code 公式ドキュメント「スキルで Claude を拡張する」)。

同じドキュメントの入門手順でも、スキルの動作確認は名前を打つ方法と、普段の言葉で聞く方法の両方が示されています。書かれている例は「What did I change?(何を変えた?)」です。名前を打つかわりに、その場面で自然に出てくる問いかけを使っています。

つまり、覚えて呼び出す形にしなければならない理由は、はじめからありませんでした。私が、覚える前提の入口を自分で付けていただけでした。

続けたい仕組みは、思い出さなくても呼べる形にする

ここまでを、今日試せる形にしておきます。

  1. 使わなくなった仕組みを1つ思い出す(AIに覚えさせた手順、保存したプロンプト、作った台帳、なんでもかまいません)

  2. 最後に使ったのはいつで、なぜ呼ばなかったのかを1行だけ書く。「面倒だった」で止めず、「何が思い出せなかったか」まで書けると、直す場所が決まります

  3. 入口を、自分が普段口にする言い方に置き換える

3番目をAIに頼むときの文例を置いておきます。そのまま打って使えます。

いま作ってもらったこの手順を、次から私が名前を覚えていなくても使える形にしたいです。どんなときに使うものかを一文で説明に書き足して、私が普段の言葉で頼んだときに、この手順が自動で使われるようにしてください。

1つ注意です。月に一度しか使わないものほど、この問題が出やすいというのが私の実感です。毎日触るものは名前でも覚えていられます。忘れる前提で入口を設計しておきたいのは、間隔があくものだけで足ります。

まとめ

  • 毎月の転記が一言で終わると書いた仕組みを、私はその後ほとんど使わなかった。壊れたからではない。呼び出す合言葉を思い出せなかっただけだった

  • 自分で決めた合言葉は自分にしか通じない。月に一度しか使わないものは、翌月には出てこない

  • 直す場所は中身より入口。普段の言い方で呼べる形にすると、呼び出される回数が戻る

明日は、仕組み化したあとも残った作業時間の話を書きます。月次レポートに、月初の9日間で実際に何時間かかっていたかを、実測のまま出します。


このnoteでは、エンジニアではない私が、一人のマーケ事業をAIで仕組み化していく過程を毎日実録で書いています。昨日は、同じ作業が何十回もあるときに、作業そのものより道具のほうをAIに頼んだ話を書きました。気になった方は読んでもらえたら嬉しいです。

9月3日に、このnoteを毎日回している仕組みの中身を、そのまま使える形で出す準備をしています。今日書いた「入口の作り方」も含めた一式です。気になる方はフォローしてお待ちください。

いいなと思ったら応援しよう!