時を越える名作、ゴーストトリック【ネタバレあり感想】
ステラーコード発売までに空いていた時間でず~~~っと積んでたものをついに消化しました。なんかSwitchでも買ってあるし、Steamでも買ってるし。
ネタバレゼロの感想としては…
面白すぎますッ!
現状、今年遊んだADVの中では確実に最も完成度の高いゲームだったと思います。多分更新されない。
なんなら今まで遊んだADV全体で見ても…かもしれない。
そりゃ「これ名作だよ」って言われ続けてるわな、と納得。
多分いないとは思いますが、もしもまだ未プレイでこの記事を覗いている場合は絶対に自分で買ってプレイすべきですね。
Q:何がそんなに良かった?
A:全部…?
総じて言うならこれに尽きます。とても隙の無い面白さでした。
質感としては『パラノマサイト』とかに近いタイプの完成度でしょうか。しかし、ある一点の影響を考えるとそれ以上の完成度とすら言えると思います。
このゲームは、何かに「特化」しているわけでは無いです。
そして、ADVの中ではかなりゲーム性が強い方だと思います。
なのでまずゲーム性の良さについて。
ゲーム性
自分は基本的にADVはシナリオを追いかける楽しみをメインにしているので、別にADVにゲーム性が特別必要だとかあった方が良いとかは思っていません。
というかなんなら、「余計」なゲーム性を付けるくらいならテキストだけ並べて貰った方が自分にとってはよっぽど良いとすら思っています。
ゲーム性を付けたほうが広く売りやすい、というのも理解できるので、特にわざわざ不満として挙げたりはしませんが。
『都市伝説解体センター』等はまさにそうですかね。
この作品に関しては特にそのような感想は抱きません。
非常に丁度いいバランスの作品でした。
この作品のディレクターである巧舟さんの作品と言えば『逆転裁判』シリーズでしょう。また、そこから派生して生まれたと言える『ダンガンロンパ』シリーズ、つい最近で言えば『魔法少女ノ魔女裁判』などもですが、これらの「謎解きゲーム」の持っているゲーム性は、比較的ノベルに近いゲーム性だと感じます。
というかまのさばに関しては本当に大部分がノベルですよね。探索パートも削れているので。
シナリオ上の推理の追体験、というか。
推理、裁判、議論などはほぼそのままテキストで表現できますが、今作のゲーム部分をそのままテキストに変換するのは難しいですよね。
今作『ゴーストトリック』のゲーム性は、割としっかりとゲームです。
ノベルと言うよりは、パズルに近いのではないでしょうか。

これは別に特別自分の趣味に合っているわけではないのですが、その上でしっかりと面白かったです。
限られた条件・ルールの中でリアルタイムでピタゴラスイッチを組み立てていくようなシステムは、普段自分が大してパズルゲームに触れていないというのもありますが、ニンテンドーDS時代のゲームにも拘わらず、非常に新鮮で楽しめました。
プレイしたのはSteam版ですが。
ちょっと自力で解答に辿り着けなかったところが3回くらいありましたが、まあそこは仕方ないかなと。「もうちょっとわかりやすくてもよくない?」とは思ったんですが、流石に個人の感想に依りすぎますからね…
脱獄のとことシャンデリアと後もう1個なんだったかな…
特にパズル的に面白かったステージは薬の瓶を届けるところですね。かなりややこしかったけど。
ただ1つゲーム性として気になった点を挙げると、巻き戻し機能か早送り機能のどちらかは欲しかったです。
古めのゲームなのでまあ仕方ないかなと言ったところですが、一手ミスってからミスの前の状況に戻ってくるまでがちょっと長いかな~と。
かなりリトライ前提のゲーム性ですし。
このゲームで唯一気になった点ですね。本当にここくらいです。
またこのゲーム性が、しっかりとシナリオに反映・繋がっているものなのも良かったです。
基本的に自分の楽しむADVって大きくてもシナリオ7:ゲーム性3くらいまでしかゲーム性の比重が大きくなりにくいのですが、このゲームは割と5:5くらいあるにも関わらず、良い感じにシナリオとゲーム性が結びついていることで最後まで飽きることなく楽しむことができましたね。
キャラ
流石に『逆転裁判』の生みの親なだけあるよなぁ~って感じで、ほんとメインからサブ、果てはモブまで大体皆キャラが立ってます。
あと絵柄がシンプルに可愛い。



自分はやっぱり主人公のシセルが好きですね。

主人公として凄い特別なキャラをしているとか全くそんなことは無いんですけど、逆にその純粋な善良さが刺さりました。
性格はともかく設定としてはかなり特殊ですが。
正体に関しては本当に最後の最後まで全然想像付かなくて、最後のパズル開始時に急に出てきたところでやっと「これか…!?」ってなったくらい。
でもその純粋な善良さも、なんとなく正体が判明してみると納得できます。
他にも色々と納得いきますよね。
現実のことは知りませんけど創作における記憶喪失キャラって一般的には短期記憶を失っているだけで長期記憶までほぼ失っていることってあんまり無いと思うんですが、シセルは明らかに一般人なら知っているであろう知識すらも持っていませんでした。
プレイ中はまあそういうもんか、で流してましたけど。
真相がわかるとまあそりゃそうか、ですよね。
構成として本当に上手いのがミサイルの存在だと思います。
彼が早々に登場しているため、この世界の動物の知識レベルを大体プレイヤー視点でも馴染ませてあるという。
純粋な善良さもそうですね。
まあミサイルのキャラとしての上手さは全くそれどころに留まらないんですけど…
そう、勿論ミサイルも大好きなキャラです。
というかこのゲームやっててこの2人?2匹?を好きにならないの難しくないですか?

まず普通に見た目が可愛すぎるんですけど、中身も可愛いです。
クセになる口調してますよね。ご主人様大好きだし。

1人目にレディを救った後、次は誰の死を解決するんだろう?と思ってたらポメラニアンが出てくるのは中々衝撃的。
しかも物語中盤でまさかの2匹目の能力者枠として再登場。
いやそんなチョイスある!?ってなりますけど、終わってみたらそれもむしろ納得。
シナリオの展開って意味だけではなくキャラクター…というか動物としての意味で。
そしてそこからシナリオの最後までずっと大活躍して綺麗に完結かと思ったら全然それだけじゃなくて最後はもう度肝抜かれましたね。
全ての基点お前かよ!!!!って。
シセルとヨミエルもそうなんですけど、動物と飼い主の間の情って凄く刺さります。あっちは飼い主からの感情が強くて、こっちは動物からの感情が強い感じですが。
自分は責任を持てないので現実で動物を飼ったことは無いんですが、それでも刺さります。
ミサイル、忠犬が過ぎるでしょ。
よぼよぼのお爺ちゃん犬になるまで待ち続けたんですよ。
キャラ単品の顛末として見てもめっちゃ美しい上でそれがシナリオの完成度を更に1段階も2段階も上に引き上げており、シナリオ内の登場キャラとして最上の働きをしています。

残像演出とかじゃなくて普通にモデルの尻尾の数が多いのは猫又とか九尾的な表現だったりするんだろうか…関係ないか…
他のキャラも大体全部良いんですが、まあ印象が頭抜けているのはこの二匹かな…
で、『逆転裁判』同様にキャラが良いと前述しているのですが、なんなら今作は自分の中では、『逆転裁判』以上に良いとすら言えると思っています。
その理由として大きいのが、シナリオですね。
シナリオ
『ゴーストトリック』は、『逆転裁判』に比べると本筋の話の一貫性が高い、つまり縦軸が強いシナリオです。
勿論逆転裁判にも縦軸の話は存在していますが、基本的には個々の事件を並べたものの中に縦軸の話が少しずつ絡んできて最後に回収される、といった程度ですよね。
ゴーストトリックは最初から最後まで、一連の話が全て繋がっています。
別にそれ自体はどちらの方が優れているかという話にはならないのですが、キャラ描写の面のみで考えるとこちらの方がより深みが出ると思いました。
魅力的なキャラクター達にメインシナリオ上の一連の流れの中で存在理由を持たせられているからです。
勿論メインキャラであるシセル達も当然その通りで、1作品で概ね掘り切れていると感じられますが、わかりやすい差異はサブキャラの方に出てくると思います。
例えばお隣さん。
めっちゃ濃いけど、本来あくまでサブキャラですよね。旦那の方もまあ、メイン寄りのサブって感じでしょうか。
しかしこの人もちゃんとメインシナリオの流れに一部関わっている人なので、「実は別居していた理由は(操られていた)旦那が不当な処刑指示を下して取り消そうとしないから」ということが話の途中で判明し、特に直接話に絡んできていないのにも関わらず実はかなり熱い人だったことがわかってグッときました。

常に一貫した縦軸上の話を進めているので、その道中で出てきた魅力的なキャラ達の多くをメインシナリオの一部に絡めることができているんですね。
シナリオとキャラは不可分なものなので、やはりシナリオの本筋に絡んでくる方がよりキャラの味が出やすいです。
キャラ単品の出来そのものには差が無くとも、シナリオの性質の違いでより魅力的にできている形だと思いました。

ここまではキャラとの噛み合いの良さの話なんですが。
単にシナリオの出来の話すると、
パズルゲーム性強めのADVでシナリオもこんなよく出来てることあるんだ…
って普通にびっくりしちゃいました。
シナリオの中身に関しては、普通に自分の好みとかなり合致していたのも大きいですね。
わからないことだらけなところからスタートして、何かがわかったと思ったらまたわからないことが増えていき、それでも最終的にはすべてが氷解するという構成は単純にノベルゲームのような見方で考えた場合、最も楽しみやすい話の構成だと思っています。
「楽しい」がずっと続いて、最終的に「面白かった」に達する感じ。
定期的に読者の興味・推測を引っ張るような要素を上手く出していくのが「面白いADVシナリオ」の鉄板だと考えています。個人的に。
好きなゲームシナリオ大体そんな感じなんですよね。
レイジングループとか、AIソムニウムファイルとか、ひぐらしとか…まあこれはちょっと茶番期間も長いんですけど。
謎解きそのものというよりミステリー風味を好んでいる理由もこれなのだと思います。
逆転裁判やダンガンロンパなどの謎解きゲーは、普通に個々の事件を解くのはめっちゃ面白いんですけど全体を通したシナリオで考えると自分はそこまで常に盛り上がっているわけではないのかな、となりがちなので。
逆転裁判の場合、最終話でそれまでの伏線が一気に回収されて盛り上がっていく傾向が強いと思いますが、そこの部分の美味しさに近いかと。
大逆転裁判1+2が特に好きなのはその面も理由として有りそうです。シリーズの中で言うと縦軸が比較的強めの作品だと思います。
あの辺のゲームはその個々の事件の1つ1つで、そういう「わからないことが氷解していく経験」を毎回させてもらえるのが凄く面白いんだと思いますけども。
逆転裁判シリーズの1本ごとの楽しさの推移をこういう感じだとすると…

ゴーストトリックはこういう感じ。

こういうのって普通はかなりノベルに偏ったゲームで成立していることが多い面白さなんですよね。
これくらいゲーム性でも楽しめるADVで、ここまでシナリオでもがっつり楽しめる経験ってあんまり無かったです。
あと一番最初の部分が逆転裁判より高くなってるんですけどこれ別に逆転裁判が低いわけじゃなくて、逆転裁判も一般的なノベルゲームの殆どよりは余裕で「面白くなるまで」が早い方です。ゴーストトリックは「何もわからない状態からの謎まみれのスタート」でよりワクワク感を高めてくれているというだけで。
というかノベルゲーム側がかなりスロースターターが多いんですよね…好きなんですが、ジャンル全体を通して抱えがちな問題点だと思います。
自分はそういう序盤も耐えられる方なんですけど、多分多少ノベルゲームに慣れてないと耐えられない人の方が多いので…
だから最初から面白いノベルゲームなどそれだけでも評価すべきだと思っているわけですが。
ゲーム部分もシナリオも双方共に面白い、となるとグノーシアはそこそこ近いでしょうか?
ただグノーシアの場合ゲーム部分とノベル部分がかなり分離しているので、味わいがまたちょっと別だとは思います。
最初の方で「パラノマサイト以上の完成度とも言える」と書いたのはこれが理由です。
パラノマサイトは、ゲーム性自体は控えめです。ポイント&クリック的な要素もあるものの、ノベルゲームの範疇からそこまで逸脱していないです。
それこそ逆転裁判の探索パートくらいの。
そのある程度限られた要素の中で演出とシナリオ展開が非常に上手で完成度が高い、と評したわけですね。
別にそれは何の問題も無いんですが。
ただ、「完成度を高める難易度」は、要素を盛れば盛るほど難しくなっていくと思います。
要するに、「ノベルゲームから逸脱したゲーム性を持っている状態でADVとしての完成度が非常に高いこと」が、このゲームのすごい部分だと感じました。
比較に出すようでアレなんですけど、例えば過去10年以上に渡ってみてもここまでてんこ盛りにしたADVはそうそう無いだろってくらいな盛り方をしている『ハンドレッドライン』は、「完成度」で言うと正直全然高くないと思っています。
めっちゃ好きですが。めっちゃ好きだし良い作品だとは思っている上で割と粗まみれだろと思っています。
アプデで細かい所はだいぶ改善されましたけど。
そしてそれが当然だろう、とも思っています。
盛れば盛るほど完全性を高めるのは難しくなるのが必然です。
パラノマサイトは、要素を絞って完成度を高めました。
ハンドレッドラインは、恐らく完成度はそこまで意識せずにとにかく盛れるだけ盛れという思想で作ったのでしょう。これはこれですごいです。チャイムは発売前に気付いておいて欲しかったけど。
ゴーストトリックは、ちょうど絶妙なラインでゲーム性とシナリオの完成度の双方を維持できているように思えました。
あとやっぱループやらタイムトラベルやらってがっつりじゃなくてシナリオのギミックのちょっとした一部とかでも、上手く使うとすごく映えますね。
「ゲームシナリオにおけるギミックと言えば」の代表例ですらあるかもしれない。

ここまで面白いADVって、殆どの場合プレイ前にかなり何かしらのネタバレ情報が自分のところに勝手に入ってきてしまうことが多かったのですが、このゲームに関しては主要キャラ(シセル、リンネ、ミサイルくらい?)の見た目程度しか知らずにプレイできました。
名作だ、とは聞いてたんですけどその評判の中身は全く知らなかったんですよね。
逆に数少ない情報として、割とパズルゲーム的な側面が強いのは知っていたのですが、そのせいでむしろ「そこまでシナリオに凝っているわけでは無くどちらかと言うとゲーム性が評判良いタイプなのではないか」と思ってしまい、今まで率先したプレイができずに積んでしまっておりました。
愚行ですね。
余談ですが、この作品は「1作品目で完結しているからこその面白さ」でもあったと思います。
「主人公に特殊なギミックが搭載されている作品」だとか、単純に「主人公の背景の掘り下げをシナリオに大きく組み込んでいる作品」とかの面白さですね。
前者はまあ最近話題のアレやらソレから自分の好きなアレやらコレやらとADVで多々あるやつ。後者はジャッジアイズとか龍が如く7(実質1作目)とか、そういうやつ。
別にそれで続編出したらダメだ、とかは無いんですけども、やっぱり「美味しい部分が残っているかどうか」は大きいと思います。
この作品は、シナリオの出来上がる過程で生まれた「美味しい部分」を全てきっちり、10時間で使い切ったからこその面白さだったのではないかと。
一夜にして解決する十年越しの大事件。
素晴らしい結末でした。

