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60代のリアル|第2幕、第58話【実録・職場の波乱】ただ禁止するのではなく、現場目線で考えるAIの未来(後編)


前回までのあらすじ

2025年9月24日、職場に突如として下された「AI全面禁止令」でした。

背景には「ChatGPTからの情報漏洩」があると説明されましたが、私はセキュリティ面や使い勝手を考慮し、2023年の初期以降はChatGPTを固く止め、安全な設定を施したCopilot一本に絞って業務効率化を図ってきました。

それにもかかわらず、2023年の出来事がなぜ2年近く経った今になって騒がれるのか?

そしてAIの仕組みを知らない管理職からは「AIを使っていたあの人」として疑いの目が向けられるという、不条理な現実に胸を痛めます。

そんな暗闇の中で私を救ってくれたのは、かつてCopilotの使い方を伝えていた嘱託社員の方でした。

「しずるさんのせいじゃない。しずるさんはChatGPTなんて使っていないんだから」――。

現場で正しくAIに向き合ってきた姿勢を理解してくれていたその温かい一言が、理不尽なアウェイの空気の中で一筋の光となったのです。


▼ 前回はこちらです。



「再検討」の知らせと、静かな決意

全面禁止のショックから月日が流れ、9月1日(火)の朝礼でのことでした。「AIの利用について、改めて再検討を行う」と正式に発表があったのです。

一度は完全に閉ざされた扉が、少しだけ開こうとしている――。

本来なら手放しで喜んでもおかしくない知らせですが、私の心の中には、拍子抜けするほど静かで冷静な波が立っているだけでした。

もし再び使ってもいいとなったとしても、以前とまったく同じように使えるわけではないはずです。

おそらく何らかの利用制限が設けられるでしょうし、正社員とパートという立場によって、使用できる範囲や権限が大きく異なってくるような予感がしていました。

パートである私には、どこまで使うことが許されるのでしょうか?

それに、あの時の混乱や、仕組みを知らない管理職から向けられた冷ややかな疑念の記憶は、そう簡単に消えるものではありません。

形だけの「解禁」になったとして、現場が本当に安心して使えるような具体的なガイドラインやルールが示されるのかという不安も残ります。

まだ具体的にどう運用されるかも分からない不透明な状況だからこそ、期待に浮き足立つことなく、事態を静かに見守ろうと思っている自分自身がいました。

職場でのルールがどう決まろうとも、私は焦らず、流されず、正しい知識と安全意識を持って自分自身の足元を固めておきたい――そんな静かな決意が、胸の奥で固まっていった瞬間でした。



現場から考える、本当に必要なセキュリティ

再検討にあたっては、会社側が使用するAIツールを特定し、セキュリティや情報漏洩対策にも十分な配慮を重ねてルールを決めていくのだと思います。

前回の禁止劇という痛い経験を経ているからこそ、組織としての防衛線は慎重に張られるはずです。

しかし、いくら会社側が強固なシステムを整え、学習防止の設定を徹底したとしても、最終的に鍵を握るのは「使う側の意識」ではないでしょうか?

AIへの向き合い方は、現場では大きく3つの層に分かれると感じています。

仕組みがよく分からない人は、ハザードを感じて最初から触ろうとしません。一方で、リスクを正しく理解している人は、入力するデータや設定に最新の注意を払って安全に活用します。

本当にリスクをはらんでいるのは、その「中間の人たち」です。

「便利そうだから使ってみたい」という意欲はあるものの、セキュリティに対する意識はまだ低い。

そして「習うより慣れろ」の精神で、詳しい知識を持たないまま軽い気持ちで業務データを入力してしまう――。

そうした悪気のない一歩こそが、思わぬ情報漏洩やトラブルを引き起こす一番の死角になるのではないかと懸念しています。

例えば、私がCopilotを使う際に必ず確認していた「会話アクティビティによるトレーニング」をオフにする設定。


Copilotのプライバシー設定画面


こうした基本設定の存在すら知らずに使い始めてしまう人が出ないようにするためには、単にツールを配布するだけではなく、

「なぜこの設定が必要なのか」
「何を入力してはいけないのか」

という使う側のリテラシー教育こそが、現場に必要な本当のセキュリティなのだと痛感しています。



60代の今、これからのAIと歩む道

最近では単に指示に答える生成AIだけでなく、Claude CodeやCodexをはじめとする「AIエージェント」を活用して業務効率化を図る時代になりつつあると耳にします。

しかし、「最新のツールを使ってみたけれど、思ったような回答や成果物が得られない」と頭を抱える声もよく聞きます。

けれど、それはAIの性能だけの問題ではないような気がしています。

作成してもらう成果物の方向性(目的や使う場面)を最初に合わせ、途中経過をこまめに確認し、最後にしっかり検証する――。これは、人間同士で仕事のやり取りをするときとまったく同じではないでしょうか?

もし人に仕事を依頼する場合、納期が1ヶ月あれば最初の3日ほどで全体の方向性を確認し、次の数日で構成を詰め、お互いに納得してから本格的な作業に入ります。

作業中も進捗を確認し合っていれば、最終的に「全く違うものが上がってきた」なんてことにはならないはずです。


AIエージェントへの指示も全く同じです。

「どこを人がチェックし、軌道修正すべきか」という仕事のポイントさえ押さえていれば、AIは単なる自動化ツールを超えて、間違いなく「最強のパートナー」になってくれます。

たとえば、正社員の方々が日々多くの時間を割かれている会議についてもそうです。

Zoomなどのオンライン会議が増えている今、NotebookLMなどを活用して議事録作成を効率化できれば、どれほど現場の負担が減るだろうかと思います。


……もっとも、こうした提案をしても、うちの管理職の方々からは「セキュリティが」「前例が」と即座に却下されてしまいそうですが(笑)。

それでも、職場での許可・不許可にかかわらず、AIという道具と出会えたことで私の世界や働き方の視野は大きく広がりました。

道具に使われるのではなく、人間の経験と知恵を持ってしなやかに使いこなす。

60代の今、変化を恐れず、正しい知識と安全意識を携えながら、これからもAIという頼もしい相棒と自分のペースで歩んでいきたいと思います。



🌿次回予告

9月3日(木)

DocuWorksからPDF→Excelへの変換ができないという絶望的なトラブルを抱えたまま、ついに「月末集計」当日を迎えてしまいます。

ツールが使えない中で挑む、怒涛の集計作業。

果たして9月3日中に、無事集計を終わらせることはできるのでしょうか――!?

次回、「PDF変換不能!怒涛の月末集計と現場の奮闘劇」。

次回もどうぞお楽しみに!


▼ 次回はこちらです。



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