60代のリアル|第2幕、第56話【実録・職場の波乱】突然のAI解禁と、よみがえる「あの日の疑念」(前編)
前回までのあらすじ
職場の激震に不安を抱えつつも立ち止まる暇はなく、8月30日(日)、母が転院した介護医療院へ初めてのお見舞いへ向かいました。
「家に帰れる」と思っていたであろう母にどう向き合うか葛藤しながら、慣れない病院内へ入っていきました。
ナースステーションに人がおらず戸惑いながらも、医療ソーシャルワーカーさんから言われていた書類(レンタルパジャマ等の手続き)を無事に渡され、提出を済ませます。
面会時間、包帯が巻かれた右手で手を振り返すこともできず、じっとこちらを見つめる母。切なさと申し訳なさを胸に残したまま、静かな病室を後にするのでした。
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朝礼での唐突な一手
9月1日(火)
週明けの慌ただしさと、前週末に母のお見舞いへ行った際の切ない余韻がまだ残る中で、その日の朝礼は始まりました。
新体制に向けた引き継ぎや日常業務の連絡が淡々と進む中、突如として上司の口から思わぬ言葉が飛び出しました。
「当社でも、生成AIツールの業務利用について本格的に検討を開始することになりました。具体的にどの業務に対して利用を許可するかは、現在検討中です」
その場の空気が、わずかに揺れた気がしました。
(えっ、また何かあったの……?)
私は心の中でそう呟き、思わず姿勢を正しました。
「検討を開始する」という前向きな言葉とは裏腹に、私の胸に去来したのは期待ではなく、冷や汗が背中を伝うような不穏な予感でした。
なぜなら、この職場における「AI」という言葉には、忘れることのできない苦い記憶が刻まれていたからです。
よみがえる「2025年9月24日」の記憶
時計の針を少し巻き戻します。 忘れもしない、2025年9月24日のことでした。
その日、職場に突然「AI使用禁止」の厳命が下されました。理由として語られたのは、「ChatGPTを介した情報漏洩が発生したため」という衝撃的なものでした。
当時、社内を見渡しても、AIツールを日常的に業務で使おうと試行錯誤していた人はほとんどいませんでした。「AIって何?」「どう使うの?」という状態の人が大半を占める中で、Excelの関数作成やVBAのコード作成、英文の確認などに活用していたのは、おそらく私くらいのものだったのです。
だからこそ、あの「禁止令」が出た瞬間、周囲の視線がどこか私に集まったような、言いようのない居心地の悪さを感じました。
「もしかして、情報漏洩させたのって……私だと疑われている?」
私自身は情報漏洩に繋がるようなデータ入力など一切していませんし、ルールを守って使用していた確信がありました。しかし、他に誰も使っていない環境だからこそ、「生成AIを使用してVBAを作成しているあの人が何かやったのではないか?」と真っ先に疑われるのではないかという恐怖が、唐突に頭をよぎったのです。
ぬぐえない疑惑と、残された違和感
私自身がかつて書いていたnoteの記事――
『Copilotさんが遠くなった日』や『Copilotさんがいない世界』でも綴ったように、相棒を奪われたような静かな不安と同時に、「なぜ私が疑われなければならないのか?」という理不尽な思いがずっとくすぶり続けていました。
周りがAIの存在すらよく分かっていないからこそ、かえって真面目に向き合っていた自分がスケープゴートにされているような、暗い疑心暗鬼。
そして今日、9月1日の朝礼で再び語られた「AIの利用検討」のニュース。
禁止から一転して解禁へと舵を切ろうとする会社の方針を前にして、私の頭の中には、当時のトラウマとともに、拭いきれない大きな「矛盾」が芽生えていました。
(身に覚えのないあの疑念は、一体何だったのか。そして、なぜ今さら……?)
過去の苦い記憶と、これから始まる新たな波乱の予感が交錯する中で、私は静かにPCの画面を見つめていました。
🌿次回予告
朝礼で突然語られた「AI解禁」の動き。 それは、かつて濡れ衣のような疑念に怯えた苦い記憶を呼び覚ますものでした。
2023年、手探りでBardやChatGPTを使い始め、やがてVBAや関数を助けてくれる大切な相棒となったCopilot。 ルールを守り、真面目に向き合ってきたはずの私が、なぜあの日、情報漏洩の影に怯えなければならなかったのか。
あらためて振り返る、私とAIの歩み。 そして、2023年の出来事が2025年になって突然問題視されたという、ぬぐいきれない大きな「矛盾」とは――。
次回、「私のAI史と、2023年のChatGPTという矛盾」。
次回もどうぞお楽しみに!
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