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PLAYLIST STORIES SONG 02. 「明日のことは決して誰もわからない」Mr.Children『Tomorrow never knows』より SCENE.01歌舞伎町(後編)

交番の蛍光灯は、夜を白く塗りつぶしていた。

壁の時計は午前一時四十七分を指している。
ミカはパイプ椅子に座ったまま、俯いていた。

スクールバッグは足元。
イヤホンは首に掛けている。
ウォークマンの蓋は閉じられたままだった。

若い警官が湯呑みを差し出す。
「温かいから」
ミカは手を伸ばさない。
湯気だけが静かに立ち上っていた。

年配の警官が受話器を置く。
「学校には連絡した。担任が来るそうだ」

ミカは反応しない。
時計の秒針だけが部屋に響く。

四十分ほどして、ドアが開いた。
冷たい風が交番へ流れ込む。

「失礼します」

背の高い男だった。紺色のダッフルコート。
少し乱れた黒髪。まだ若い。

「東都高校の黒田です」

年配の警官が軽く頭を下げる。

「夜分に申し訳ありません」

「いえ」

黒田はそれだけ言うと、ミカの方を見た。
目が合う。ミカはすぐに逸らした。

「事情は説明しました」
警官が言う。

「制服で喫煙。本人は何も話しません」

黒田は黙って聞いていた。
言い訳もしない。
ため息もつかない。

「学校へは報告されますよね」
警官が確認する。

少し間が空いた。
「……はい」

黒田は静かに答えた。
それ以上、何も言わない。

年配の警官は書類を閉じた。
「今回は先生に引き渡します」

ミカがゆっくり立ち上がる。スクールバッグを肩に掛ける。

誰も話さない。

交番を出る。
夜風はさっきより冷たかった。

しばらく二人は並んで歩く。

黒田は何も聞かなかった。

どこへ行っていたのか。
なぜ歌舞伎町にいたのか。

煙草は誰にもらったのか。
何一つ聞かなかった。

新宿通りへ出ると、一台のタクシーがゆっくり近づいてきた。
黒田が手を挙げる。
車は二人の前で止まった。

後部座席のドアが開く。
「乗れ」
それだけだった。

ミカは少しだけ黒田を見る。怒っている顔ではなかった。
笑っている顔でもない。ただ、疲れている顔だった。

ミカは何も言わず、車に乗り込む。
黒田も隣へ座る。

ドアが閉まる。
タクシーは静かに走り始めた。

フロントガラスの向こうで、歌舞伎町の赤いネオンがゆっくり遠ざかっていく。

SCENE.01歌舞伎町 End

次回 SCENE.02 夜明けの海


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