AIが毎朝ゼロから始まるのを、やめさせました|置き場の設計
「昨日も同じこと言いましたよね」
AIに向かってこれを思ったことがあるなら、たぶん同じ所で止まっています。
言い方が悪いわけでも、性能が足りないわけでもありませんでした。昨日決めたことを置いておく場所を、こちらが作っていなかっただけです。
毎朝、同じ説明から始まっていた
渡し始めたころ、僕の朝はこうでした。
開く。今日やってほしいことを説明する。「ちなみにうちはこういう会社で」と補足する。「あと、この言い方は使わないで」と付け足す。ようやく本題に入る。
翌朝、また同じところから始まります。前の日に3回直したことも、きれいに消えています。
人に渡した時と何が違うのかを考えて、答えははっきりしていました。人は覚えます。というより、人は自分でメモを取ります。こちらが場所を用意しなくても、勝手に貯めてくれます。
AIはそれをしません。だから、メモを取る役をこちらがやることにしました。
置き場を2階建てにした
最初はメモを1か所にまとめていました。これは失敗でした。全部の仕事の注意書きが1枚に集まって、すぐに読み切れない量になり、結局読まれなくなったからです。
いまは2階建てにしています。
1階=全体に効くルール1枚。どの仕事をする時も必ず読むもの。会社としてこれだけは外さない、という中身だけを置いています。増やしたくなりますが、増やすと読まれなくなるので、足すたびに何かを削ります。
2階=仕事ごとのメモ。その仕事の手順、過去にやらかしたこと、触ってはいけない所。ここは仕事の数だけあります。
そしてもう1つ、貯めない層があります。その日の申し送り。前の日の結果を見て「今日はこれを外すな」と1枚書いて、翌朝には上書きします。ここは毎日捨てます。
1階と2階は貯める。申し送りは捨てる。この線を引くまで、置き場はすぐに膨らんで死にました。
何を書いて、何を書かないか
置き場は、書けば書くほど良くなるものではありませんでした。長くなると読まれなくなるので、実質的には「何を書かないか」の勝負です。
書くもの1。判断の基準。「速いほうを選ぶ」「迷ったら人に聞く」のように、その場にいなくても同じ結論が出る形で書きます。
書くもの2。やらかしたことと、その時どうなったか。結果まで書くのが大事でした。「これはやらない」だけだと、状況が少し違うとまたやります。「これをやって、こう壊れた」まで書いてあると、応用が利きます。
書くもの3。触ってはいけない場所。ここは短く、名指しで書きます。
逆に、書かないものもはっきりしました。1つはその日限りの事情。これは申し送りのほうに置きます。もう1つは気持ちや方針の宣言。「丁寧にやる」と書いても、何も変わりませんでした。読んで行動が決まらない文は、置き場を重くするだけです。
古いメモを読ませて事故った日
いい話だけ書くと嘘になるので、失敗も書きます。
置き場を作ったあと、今度は「古いメモを読んで、撤回したはずのやり方でやる」という事故が起きました。前に良いと判断したことが書いてあり、あとで実際の数字を見て撤回したのに、撤回したことをメモに書いていなかったからです。
結果、こちらは「もうやめたはず」のやり方で出てきたものを見て、なぜこうなったのか分からず時間を使いました。原因はAIではなく、撤回を書き残していない自分でした。
いまは、やめたことも同じ場所に書くようにしています。「これは前に良いと思ったが、数字で否定されたのでやらない」と、理由ごと残す。消すのではなく、否定された記録として残すのがポイントでした。消すと、また同じことを思いつきます。
もう1つ、目次だけ見て中身を見ずに書かれたこともあります。置き場が長くなると、要点の一覧だけ読んで済まされる。一覧のほうが古いままだと、そこだけを信じて動きます。いまは「一覧と中身が食い違ったら、中身と実データが正」と書いてあります。
置き場ができて変わったこと
いちばん大きいのは、失敗が資産になったことです。
前は、同じ失敗を何度もしていました。直した記憶がどこにも残らないので、当然です。いまは一度やらかすと、その内容が2階のメモに1行増えます。次からは、その1行を読んでから始まります。
2つめは、誰がやっても同じになったことです。基準が自分の頭の中にしかなかった頃は、説明した相手にしか通じませんでした。文章になっていると、別の仕事にもそのまま流用できます。
3つめは、渡せるようになったことです。置き場ごと渡せば、中身の説明をしなくても、だいたい同じ判断で動きます。
今日ひとつだけやるなら
大げさな仕組みは要りません。テキストファイル1枚で足ります。
今日、AIに向かって「それ、昨日も言った」と思った内容を、そのまま1行書いてください。そして明日、渡す前にその1行を読ませる。
それだけで、毎朝ゼロから始まるのが止まります。賢くするのではなく、続きから始められるようにする。効いたのは、こちらの側の1枚でした。
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僕はAIに会社の実務を渡す話を、毎日1本書いています。
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