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認知は事業インパクトにつながることが前提。成果を最大化するメディア選定やKPI設計とは|フルファネルラボ

フルファネルマーケティングにおける「認知」。
フルファネルラボでは、認知を「購入につながる認知」と定義しています。

今回は、認知の専門家として、デジタルとマスを統合したプランニングに4年以上携わってきた株式会社Hakuhodo DY ONEの唐鎌 裕貴からかま ゆうきをお呼びし、フルファネルラボの主席研究員亀ノ上 忠昭かめのうえ ただあき中村 太一なかむら たいちが、インタビューしながら認知に関する議論を深めます!


フルファネルで取り組むことで成果につながる

分断しないストーリーを意識したプランニングが重要


亀ノ上:「ソウルドアウトが考えるフルファネルマーケティング」は、購入(CV)を真ん中にして、左の認知領域と右のファン化領域をコアアイデアでつなげていく構造をしています。唐鎌さんは率直にどのようなことを感じられましたか?

唐鎌:この資料を拝見して、私自身、無意識に、潜在層への認知から顕在層への興味喚起まで一貫してプランニングをしているなあ、と感じました。

意識しないと各領域はバラバラになりがちです。改めて、ストーリーを意識してプランニングを考えるべきだ、と思いました。


可視化されたフォーマットがあるとメリットを理解しやすい


亀ノ上:日々のプランニング業務においても思い当たる点があるんですね。

唐鎌:はい、フルファネルで考えることは重要である一方、各領域の分断は頻繁に起こっているような気がします。

企業からは、認知領域のみのサポートをお願いされることも多くて…。購入やファン化の領域は、すでに別の広告会社にお任せしているんですよね。

唐鎌マーケティングによる成果を最大化するためには、すべての領域をまるっとお任せいただきたいのですが、どのようにお話しすればメリットや効果を感じていただけるのか、という点で難しさを感じていました。ですので、こういったフレームワークやスキームがあると、すごくわかりやすいです。

中村:ありがとうございます。

ソウルドアウトでは、購入領域のご支援から、認知やファン化の領域に広げてお任せいただくことが増えてきました。そういったときに、このフルファネルマーケティングの考え方をもとに一本のストーリーとなる戦略を描き、成果につなげていきたいと考えています。

唐鎌:私たちHakuhodo DY ONEでは、認知領域のご支援から始まり、購入、ファン化へと広げていきたい、とご相談をいただくことが多いですね。

また、認知拡大をしたいという相談であっても、本当は違う施策を打つべきときもあります。そういった場合には、認知領域の施策とそれ以外の施策を、直接紐づけて評価すべきなのか、間接的に評価すべきなのか。まとめ方をきちんと設計しなければなりません。

最終的には、認知拡大が目的であっても、売上の話に着地するんですよね。何のために施策を実施するのか、それが売上や事業成長にどのように関係してくるのか。意識して話すようにしています。

亀ノ上:私たちは、認知を「購入につながる認知」と定義づけています。ですがほかにも、「ブランド価値を上げるための認知」もあると思います。何につなげるための認知なのか、企業のフェーズによって変わってきそうです。

株式会社Hakuhodo DY ONE
AaaSビジネス推進本部
マーケットデザイン局 局長
唐鎌 裕貴


「購入につながる認知」とは?

データを駆使してターゲットを深堀り、メディアを選ぶ


亀ノ上:では、認知領域について詳しく伺っていきたいと思います。認知拡大のためには、まずどのメディアを活用するかを選ぶ必要があると思います。唐鎌さんは「売上につながる認知」を実現するために、どのような取り組みをされているのでしょうか?

唐鎌:まず意識しているのは、ターゲットの深堀りです。

年齢や性別といった属性だけではなく、ライフスタイルや仕事、趣味など具体的なペルソナ像を描きます。そして、そのペルソナに対してどのメディアが適切なのか。一人ではなく複数設定して、それぞれに合わせて検討していきます。

その際に活用しているのがAaaSのソリューションです。メディアのアロケーション(※)をしたり、シミュレーションを行なったりすることができます。 

また、市場調査や博報堂DYグループのデータベースを活用して、対象となるペルソナが実際にどのメディアに接触しているのかを紐解いていくケースもあります。

一方で、定量的なデータでは見えてこない部分も重要です。メディアプランナーとしての経験や、市場をみてきた感覚から、数字には表れないけれど効果があると判断できるメディアを選ぶこともあります。

*AaaS(Advertising as a Service)は、博報堂DYグループが提唱する、広告メディアビジネスの次世代型モデル。

AaaS(Advertising as a Service)|博報堂

※アロケーション:広告やマーケティング活動を行なう際に、限られた予算やリソースをどのメディアにどのくらい配分するかを決めること


圧倒的な認知を獲得できるテレビCMの活用がカギ


亀ノ上:年代ごとに接触しているメディアの構成比をみると、「テレビ偏重型」と「デジタル偏重型」というように、年齢層によって傾向がわかれています。

唐鎌:50代以上をターゲットにする場合は、視聴率が高く、テレビを主軸にする場合が多いです。

一方で、20代・30代といった若年層に対してはデジタルを中心にすることもあります。ただし、短期で圧倒的に認知を獲得したい場面では、やはりテレビの力を活用するべきだと考えることもありますね。

亀ノ上:若年層がターゲットの場合は、テレビは最初の候補には上がりづらいということでしょうか。

唐鎌:使い方次第ですね。必ずしも外すわけではありません。

若年層が視聴している時間帯をピンポイントで狙って出稿するケースもあります。たとえば、日本テレビが開発した地上波テレビCM向け広告サービス「スグリー」では、時間帯を指定して出稿することができます。

また、CPM(インプレッション単価)の観点からも、TVerやOTT(※)に出稿する場合と遜色がなく、リーチ効率も悪くありません。ですので、テレビを活用する場合も十分にあります。

企業によっては「若年層はテレビを見ない」という考えをもつ方もいらっしゃいます。その場合は、テレビと同等のインパクトをもち、デジタル配信できるコネクテッドTV(※)やOTTを選ぶこともありますね。

※OTT(=Over The Top):インターネットを通じてテレビや動画コンテンツを視聴できるサービス(OTTサービス)のこと。NetflixやAmazon Prime Videoなど。

※コネクテッドTV:インターネットに接続されたテレビ端末のこと。インターネット経由で動画配信サービス(例:YouTube、TVer、Netflix、Amazon Prime Video など)を視聴できる。


リーチ拡大には、複合的にメディアを組み合わせる


中村:若年層へリーチしたいときには、デジタルメディアやSNSも活用されるのでしょうか?

唐鎌:もちろんです!若年層向けに活用するメディアとしては、YouTubeやTVerが中心になってきていますね。

ですが、ほかにも様々なメディアを活用して施策を行なっており、先日はOOH(※)を活用しました。韓国コスメ系の企業で、渋谷や原宿をジャックするような企画を実施したんです。マスメディアと一口でいっても、若年層にフィットするメディアはまだまだ数多く存在していると思います。

※OOH(=Out Of Home):屋外広告のこと。屋外看板や大型ビジョン、電車やバスの車内広告、駅構内のポスターやデジタルサイネージなど。

亀ノ上:なるほど、広い視点でみると、認知領域にはいろいろな手法がありますね。

Gデジタルマーケットデザイン本部
本部長
亀ノ上 忠昭

唐鎌:先日は、旅行予約サービスで、若年層から高年齢層まで幅広く、しかも短期的にリーチしたいという要望をいただきました。そこで、テレビCM、OTT、OOHを複合的に組み合わせた認知施策を行なったんです。

旅行は九州や北海道だと飛行機利用が前提になります。そのため、テレビCMを九州や北海道で出稿し、OTT広告では細かくターゲティングして関東にも配信。さらに空港や空港に接続する駅でOOHを展開し、複数の接触ポイントを組み合わせ、トリプルメディアで複合的にリーチを広げることができました。エリアとメディアの組み合わせを工夫した施策です。

効果検証では、指名検索数やサイト流入数に加え、ブランドリフト(態度変容)の計測も行ないました。


ボリュームが確保でき、効果検証できるKPIを設計する


亀ノ上:かなり緻密に設計して、あらゆるメディアを組み合わせて施策を実施されていることがわかりました。次は効果検証の指標について教えてください。どのような指標をKPIに設定されているのでしょうか?

唐鎌:まず注目するのは、ウェブ上での指名検索です。そこからブランドサイトへの流入の変化をみることもありますし、その際には離脱率や回遊率も確認します。

コンバージョンではないものの、コンバージョンと相関性の高いポイントを、案件ごとに最適なKPIとして設計していくイメージです。

中村:テレビであれば、ツールを活用して指名検索などを計測できると思いますが、ほかのマスメディアの場合は、どのように計測されているのでしょうか?

Gデジタルマーケットデザイン本部
Gストラテジックプランニンググループ
スペシャリスト
中村 太一

唐鎌:数値では捉えきれないメディアに関しては、意識調査など別の手法を取り入れるようにしています。

意識調査といっても、単に施策の実施前後で調査するだけではありません。データクリーンルーム(※)を使ってインプレッションのログを記録し、接触した人とそうでない人を比較することで、その後の行動にどのような違いが生まれるのかを検証しています。

認知度は意識調査でしか測れない一方で、毎回実施するのはコストがかかってしまうのも事実です。そこで私たちは、常時モニタリングできる指標として検索数やサイト流入数など案件ごとに適切な指標を判断材料として、PDCAを回すようにしています。

※データクリーンルーム:複数の企業やプラットフォームが持つデータを、プライバシーに配慮しながら安全に分析・活用できる環境のこと。

亀ノ上:では、KPIの設計で気を付けていることはありますか?

唐鎌最終的に重要なのは、売上や事業へのインパクトにつなげること。それを前提とすると、効果検証を行える状態をつくる必要があります。ですので、KPIは十分なボリュームを確保できることを重視しています。

あまり深いポイントにするとデータが取れなくなりますし、常に安定してモニタリングできるかどうかが大切です。

指標の設計は、シミュレーションを行なったうえでどの指標にするかを設計しています。

中村:シミュレーションの整合性が重要そうですね。

唐鎌:そうですね、ただ大きくずれることはありません。シミュレーション作成時は、ツールを使って数値を算出しています。

これまでの実績値やノーム値(※)をもとに計算することが多いですね。企業のGoogle Analyticsの数値をいただき、組み合わせてシミュレーションを行なうこともあります。

また、当然ながら、さらに精度を高めていきたいと考えています。ほかの広告会社でも、高精度なシミュレーションを提示するのが当たり前になりつつありますね。「このターゲットに、このクリエイティブをみてもらうと、コンバージョンはこう動く」といったレベルの粒度まで求められるようになっています。

施策提案のスキーム自体を変えていく必要があるのかもしれません。これまでは、どうしても認知領域のプランニングだけで閉じてしまう傾向がありました。しかし昨今では、「認知からの購入」というように、コンバージョンベースで認知を捉えていくフェーズに移りつつあると感じています。

※ノーム値:過去に実施された調査データや実績データをもとに算出された基準値(ベンチマーク) のこと。

亀ノ上:いくつかのメディアが候補にあがった際、取捨選択の基準になる指標はあるのでしょうか?

唐鎌:一番わかりやすいところだと、リーチ単価ですね。ただ、それだけではわからない部分もありますが…。シミュレーションをベースにしながら、中間指標のコンバージョン単価や検索単価、セッション単価、ブランドリフト単価などをみています。

指標で評価するのが難しいメディアや手法もありますね。UGC施策やインフルエンサーマーケティングによる「話題化」の効果は、限定的な数字でしか表現できません。テレビCMやデジタルメディア、OOHなどとどう横断的に比較するのか。なかなか継続が難しい、と言われることが多いです。


AIはプランナーの価値を変化させる


亀ノ上:では、最後の質問です。生成AIをプランニングに活用すると、業務はどのように変わると思いますか?

唐鎌:すでに社内でもかなり活用しており、主に使っているのは、市場調査。膨大なデータを一気に引き出してもらえるのが大きなポイントです。

ほかにも、提案のアウトラインを自動で作成したり、ターゲット候補を大量に出してペルソナ像を組み立てたりしています。社内のAIツールでは先日、ペルソナにインタビューして壁打ちできる機能もでき、ターゲットの解像度を高められるようになりました。

基礎的な提案内容の作成や時間のかかる調査、壁打ち相手として活用することが増えています。そのうえで、どのように企業に刺さる提案に仕上げるのかが、人間側の役割になっています。

亀ノ上:時間がかかっていた作業や、自力でやっていた部分がAIに置き換わっているんですね。

唐鎌:そうです。将来的には、企業側もAIを使うようになり、提案そのものがなくなるかもしれません。買い手も売り手もAIエージェント同士でやり取りする。そんな世界観が生まれる可能性もあります。そうなると、マーケティングのプランニング領域や、プランナーの価値自体が見直されるようになると考えています。

亀ノ上・中村:認知領域についての未来まで、理解を深めることができました。本日は興味深いお話をいただきありがとうございました!

編集後記
「認知」と一口にいっても、その手段は多様です。複数のメディアを組み合わせてフルファネルのストーリーを描くことが、成果につながる認知をつくる第一歩だと感じました。
また、プランナーに求められる役割が変化していく昨今のAI時代においては、認知領域の今後のアップデートが楽しみです。

【執筆・編集:みやたけ(@udon_miyatake)】


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