【あなたの2000年代を聞かせて】第8回ゲスト:さめない社交(その②)
サムオブメンバー(今回はカンノ)が様々なゲストを招いて2000年代についてトークする連載。第8回のゲストはシャーク鮫さんと柿内正午さんによる社交ユニット・さめない社交。(その②)では、「小規模でおもしろいことをしよう」という考えに至るうえで通過する10代のときの憧れについて、柿内さんが10代のときに影響を受けたものについて伺いました。(その①)は下記リンクから。
カンノ:この企画で以前、編集者の九龍ジョーさんに出てもらって、そこで心に残っている言葉があって、「面白いことは、だいたい50人くらいの場所で起きている」と。
カンノ:この50人というのは例えですが、つまり少人数キャパでおもしろいことが起きていると。この収録直後に僕は神谷圭介さんと石山蓮華さんの『偏愛』というユニットの演劇公演を観に行きます。
カンノ:なんか神楽坂のよくわからないスペースで、だいたい30人くらい入ったらお客さんでいっぱいの場所。蓮華さんはTBSラジオ『こねくと』という帯番組をやっているので、土日の3公演だけなんですよ。だから、観れたのって100人くらいのはずなんですよ。僕が観に行った回は、まず入り口でこの企画にも出てくれた矢野利裕さん夫妻を見かけるんです。挨拶して中に入ったら、昔から友達のラジオディレクターの人がいて、またよく見たら最近友達になった音楽雑誌の編集者…。
シャーク:Iさんだよね?この前、飲んだんですよ。
カンノ:それ聞きましたよ(笑)。
柿内:えっ?そこもつながるの(笑)。
カンノ:彼とは隔週くらいで会って飲んでる友達で。
シャーク:「カンノさんっておもしろいですよね~」とか言いながら飲みましたよ。
カンノ:その彼も『偏愛』を観に来ていて。だから、だいたい6分の1が友達だったんですよ。これがすごく東京っぽいと思ったんです。自分のなかで九龍さんが言ってたこととリンクして。そのあとくらいに「さめない社交」があって。ここは肩書き関係なく、少人数でおもしろいことを話そうっていうパーティーだと思うんですが、そこもリンクする。で、小規模でおもしろいことをしようとするってすごく今っぽいと思うし、今やるべきことだと思うんです。でも、大多数は「バズりたい」とか思ってるんですよ。いや、普通に「バズりたい」って言ってるバンドの音楽、聴きたくねえだろ。
シャーク・柿内:アハハハハッ!
カンノ:ということを今思っている前提があったうえでなんですが、僕は1990年生まれ、シャークさんと柿内さんは1991年生まれの同世代なので、2000年代がほぼ10代ですよね。今、30代になってある種、達観した位置で「肩書きとか関係ないよな」とか思えたり、「小規模でなにかやろうよ」とか言えるかと思うんですが、2000年代の10代のときはまだなにか大きい憧れとか、なりたい肩書きとか、言ってしまえば夢とか、ないわけないと思うんです。そういうものを経たうえでの現在だと思うので。そのときに憧れたものや、どういう空間に身を置きたかったのかって柿内さんにしてもシャークさんにしてもあったと思うんです。そうじゃないと、表立ってこういうこともやらないと思うんです。今こういうことをやるに至る10代のころの話とか聞いてみたいと思ってるんですよね。
柿内:僕、今回この企画をやるにあたって、自分なりに年表を作ってきたんですよ。
カンノ:そもそも、こんな野良ブログに気負わなくていいんですよ~(笑)。
シャーク:柿内君は真面目だから。
柿内:2000年が9歳で、そこから18歳で地元を出るまで僕はなにを見てきたかを年表に書き起こしてみた結果、僕は音楽とかお笑い、そしてサブカルも全然通ってない。
カンノ:それもまたおもしろいですよね。
柿内:そんな2000年代の自分の中心にあったものって、ほぼ日刊イトイ新聞なんです。ほぼ毎日読んでました。
カンノ:それはめちゃくちゃ早熟じゃないですか?小学校3年生で糸井重里の話とかしてました?
柿内:僕しかいなかった。
カンノ:そうですよね。だって、そもそもどうやって糸井重里と出会えるんですか?2000年代ってもうあまり表に出てきてないですよね。
柿内:ほぼ日の人になってたからね。
シャーク:2000年代の糸井重里はほぼ日をほぼ毎日更新する人になっていた。
カンノ:ほぼ日と出会うって、どうやって?正直、いまだによくわかってないですもん。
シャーク:たしかに(笑)。僕ら世代で糸井重里とリンクするものといえば『MOTHER』だもんね。というか、それしかないよね。
柿内:ゲームボーイアドバンスで『MOTHER』をやる前からほぼ日は読んでましたね。手帳の会社になるより前ですよ。手帳がバカ売れして以降のほぼ日に対しての僕の気持ちは、ジャスコとかに出店していったヴィレヴァンに対するそれと同じなの。そこで一つフェーズが変わっちゃった感じ。
カンノ:なるほど。
柿内:ほぼ日は父親きっかけですね。父親が糸井重里のファンで、まだアカウントっていう概念がないから、家のパソコンのお気に入り欄から見てたの。それこそ最初のインターネット体験とも言えるんだけど。
カンノ:お父さんはどういったカルチャーが好きな方なんですか?
柿内:父親は本ばかり読んで、母親は映画ばかり観てました。
カンノ:そういう下地があるんですね。
柿内:たしかに、そこはデカいと思う。ちゃんと影響を受けてますね。父親からはほぼ日、母親からはBS2の衛星映画劇場。
シャーク:この2つが普通に好きだったんだ。
柿内:これは今となっては言いづらいけど、残念ながら僕の血液の4割は糸井重里でできてます。
カンノ:いえいえ、大丈夫ですよ。
柿内:ほぼ日の画期的だったところは、封切られて2,3年経ったあとの映画について今さら話したりしてるの。世の流れとかは知らないけど、今自分にとってこれがおもしろいと思えることを紹介している。封切られて数年経ってるとか、何年も前の本のこととかを話している。
カンノ:今となっては誰も話題にしていないこと。
柿内:そう。リアルタイムの作品で時代を読むというより、「今さらそれ?」っていうことでもなんでも、自分の今思ったことを取り上げるというか。そういうスタンスの薫陶を受けてましたね。
カンノ:「流行を気にしなくていい」という感覚を培えるんだ。
柿内:それを広告屋の糸井重里から学んでるのが皮肉なんだけどね(笑)。
カンノ:それは皮肉ですね(笑)。
シャーク:糸井が変容していくからね。
カンノ:良い糸井と悪い糸井がある(笑)。
柿内:僕が見ていたのは良い糸井期かもしれない(笑)。
シャーク:白糸井だった(笑)。冷静に見ると、白と黒があったなと思えるよね。
柿内:今にして思えば、あの白さが黒だったのかもしれないとも思うけど。
カンノ:それも良い悪いは置いといて、そのカウンターの打ち出し方自体はかなり広告屋っぽいかもしれませんね。
柿内:そうね~。
シャーク:あと、そのころのほぼ日は誰か出てきたりする?
柿内:そうだね、いろんな人が出てきたんだけど、僕にとって一番デカかったのは保坂和志。本当に影響を受けた人。もうこの時点で計算はおかしいけど、僕の血液の7割は保坂和志でできている。
カンノ:血が11割あります(笑)。
柿内:でも、保坂和志のことを知ったのはほぼ日からだから、この計算間違いは意味がある。
カンノ:なるほど、ちょっとミックスされた部分もあるんですね。
柿内:『カンバセイション・ピース』という小説が出たときにほぼ日で特集が組まれてて、「めちゃくちゃおもしろそうだな」と思ったのが小学6年生。
カンノ:いや、早い。お父さんから本にまつわる影響を受けてるのはデカいですね。まだまだテレビが強い時代だし、そういうときに文章のほうにいけるのは財産ですよね。
柿内:逆にテレビとか音楽がわからない。
シャーク:ORANGE RANGEとかあったじゃん。
柿内:ORANGE RANGEはクラスの人気者が聴いてた音楽で……あっ、思い出した!
カンノ:フフッ。
柿内:小学校のころ、クラスでブイブイいわしてるヤンキーみたいな女の子がいたんです。その子がずっとORANGE RANGEのCDジャケットで、お尻のやつってなかった?
カンノ:「上海ハニー」かな?
柿内:それをウブな小学生男子に見せつけて、「ほらお尻だぞ」みたいなことをやって、みんな赤面することが起きてて、そこに巻き込まれたときにORANGE RANGEが嫌いになった。
カンノ:アハハハハッ!
シャーク:これはいい話ですよ。
柿内:で、これがややこしいのが、母親と一緒に衛星映画劇場を観ていて、衛星映画劇場って大人向けの映画もやっていて。
カンノ:ちょっとピンクっぽいやつ。
柿内:言ってしまえば、映画ってだいたいおっぱいとセックスなんですよ。僕はそれを観てたから。
シャーク:「そういうもんでしょ」っていう。
柿内:お母さんと一緒に観てたから。
カンノ:あんまり聞かないパターンの話ですね(笑)。普通は親子で気まずくなる場面ですが。
柿内:「プリプリのお尻に小学生男子は赤面するもの」というマウントを取る同級生を見て、「ふん、子どもが」って思ってました。「俺はもっとすごいベッドシーンを見てるから」っていう。
シャーク:しかもお母さんと見てるからね。
カンノ:当時のJ-POPとエロでいうと、大塚愛のアルバムのジャケットで顔にいちごジャムがかかってるやつがあって。
シャーク:あったね~!
カンノ:たしか、「顔にかけられてるメタファー云々」みたいな文章を読んだ覚えがあって、それが中学生のころだったので「キャッ!」と思ったのを覚えてますね。それが中学生だったから、よりグレードの上がった気恥ずかしさだったなと今思い出しました。
『さめない社交 ~まだボケていてくれ~』開催!
2026年1月16日(金)
19:00~23:00
チャージ1,000円
@ Communicative bar HANABI(高田馬場駅徒歩5分)


カンノも遊びに行く予定なので、みんなで社交しましょう!
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