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カナダ公共放送CBCとソニーによる、映像の真正性を検証するワークフローの実践例

広報部のSTです。

ある一つの映像コンテンツが、「AI生成されたものではない本物」としてどのように扱われてきたのか。いま放送業界では、その来歴をどう示すかへの関心が高まっています。生成AIの進化によって表現や制作の幅が広がる一方で、コンテンツがいつ、どこで、誰によって作られ、どのような処理を経てきたのかを示すことの重要性も高まっています。報道や番組制作に携わる現場にとって、これは単なる技術の話ではなく、信頼そのものに関わるテーマです。

過去2回にわたってソニーの真正性への取り組みを紹介してきました。3回目となる今回は、2026年4月に米国ラスベガスで開催された国際放送機器展「NAB (National Associations of Broadcasters) Show 2026」での展示内容をもとに、実際の放送局がどのように真正性検証をワークフローに取り込もうとしているのか、改めて振り返ります。


NAB Show 2026 ソニーブース全景

NAB Show 2026:真正性検証は実用フェーズへ

ソニーブースでは、カナダ公共放送CBC (Canadian Broadcasting Corporation)が、Adobe、EBU(European Broadcasting Union:欧州放送連合)と連携して行ったC2PA(※1)検証の具体的なワークフローを紹介しました。 実際の放送局が、編集ソフトウェアや放送業界団体と協力しながら、真正性の仕組みを自社の放送ワークフローにどう組み込むのかを具体的に示した事例として、とても示唆に富む内容でした。

なぜ今、放送業界で真正性が重要なのか

生成AIの進化やコンテンツ流通の変化によって、映像が「どのように作られ、どう扱われてきたか」を示すことの重要性は、これまで以上に高まっています。放送にとって真正性は、報道や制作の信頼をどう支えるかという根本の問いに近く、NAB Show 2026の会場でも、現場でどう扱うかを考えるべき実務的な課題として提示されていました。

カナダ公共放送CBCのC2PA検証が注目される理由

CBCの取り組みが注目されるのは、実際の放送ワークフローの中でどう運用できるのかを検証し、公開した点にあります。撮影、取り込み、編集、配信といった日々の工程に実装する事例として紹介されたことから、自社への導入工程を具体的に検討する一助となったのではないでしょうか。実在の放送事業者による具体的な検証があることで、議論の焦点が「必要かどうか」から「どこから始めるか」へ移りつつあることを強く印象付けました。

『PXW-Z300』を起点にした真正性ソリューションの展示

NAB Show 2026のソニーブースにおける関連展示は、2025年10月に販売を開始したXDCAMハンディカムコーダー™『PXW-Z300』で撮影した映像を起点に、そのコンテンツの信頼性をカナダの公共放送局CBCのワークフローの中でどう運用していくかを具体的に見せるものでした。

NAB Show 2026で展示したC2PA End to End Workflowデモ

『PXW-Z300』は、世界で初めて(※2)動画への真正性情報を記録する(※3)C2PA規格に対応したプロフェッショナルカメラであり、撮影した時点でコンテンツの真正性に関わる情報を扱えることが大きなポイントです。 ブース展示のデモでは、CBCとAdobeが連携し、『PXW-Z300』で撮影した素材が、その後どのように編集システムへ取り込まれ、編集され、確認されていくのかを一連の流れとして紹介されました。

NAB Show 2026で展示した CBCとEBUが連携した End-toEnd Workflow

まず『PXW-Z300』でC2PAにひもづく情報を持った映像を撮影し、その素材をCBCの編集システムに取り込む。さらにAdobe Premiereで編集しながら、C2PAなどに関わる情報を維持しつつ、最後はEBUの対応プレーヤーでその情報を確認する――そうした流れが、現実的なユースケースとして示されていました。

NAB Show 2026で展示した、EBUの対応プレーヤーで確認できるContent Credentials

ここで重要なのは、真正性が「撮った瞬間の証明」にとどまらず、取り込みや編集を経てもなお、コンテンツの出どころや扱いの履歴をたどれるようにしている点です。生成AIや改変コンテンツへの関心が高まるなかで、映像がどこから来たのか、どの工程を経てきたのかを示せることの意味はますます大きくなっています。

★新機能★スタンプツール(ベータ版)- カメラで撮影した画像に組織名を付与できるように -

新機能 スタンプツール(ベータ版)で表示できる真正性情報の例

現在、撮影時に画像へ付加されるC2PA情報には、「誰が撮影したか」「どの組織が検証したコンテンツか」という情報は含まれていませんが、報道機関にとっては、自分たちが検証したことを示すことに大きな価値があります。そこで、IPTC Photo Metadata Standard(報道業界の国際団体IPTCが策定したデジタル画像向けメタデータ標準)のメタデータに組織情報を記録し、その情報を含んだ状態でC2PA署名を付与するスタンプツール(ベータ版、静止画のみ対応)を開発しました。このツールで署名された画像はWEB上で簡単にその情報を確認でき、報道機関による「信頼できるコンテンツ発信」へのサポートを強化しています。

真正性は、放送の信頼を支える新しいインフラへ

真正性への取り組みは、信頼できるコンテンツをどう作り、どう届けるかという、放送業界にとって以前から続くテーマの延長線上にあります。NAB Show 2026のソニーブースにおいてCBC、Adobe、EBUが連携して見せたのは、実際の放送事業者のワークフローに沿った現実的なアプローチでした。仕様や概念に加えて、現場でどう運用できるかを具体的に示した点に意味があります。

ソニーはこれまでも、2025年9月にBBC Research & Developmentと連携して動画コンテンツの真正性を検証したほか、2025年10月にはカナダ最大の全国紙The Globe and Mailと連携し、「Camera Verify」による真正性情報の外部共有について実運用の検証を行うなど、各国の報道機関と共に実用化に向けた歩みを進めてきました。

実用フェーズへと移行している真正性検証への取り組み。ソニーはこれからも制作現場の最前線で求められる課題と向き合い、現場と共に進化し続けることで業界をリードしてまいります。私たちのこれからの取り組みに、どうぞご期待ください。

執筆:広報部ST
技術が信頼を支える現場の熱量を感じることができました。「信頼できるコンテンツを届ける」という放送業界の信念、そして「正しく伝える」という使命の重みを、これからもお伝えしていきたいと思います。


※1:Coalition for Content Provenance and Authenticity。公開者、作成者、消費者がさまざまな種類のメディアの出どころと来歴を追跡できるようにするオープンな技術標準で、デジタルデータの作成や編集に関わる情報の透明性を確保するための仕組みとして規格化されています。ソニーは2022年3月からC2PAの運営委員会メンバー(Steering Committee Member)として参画し、2026年6月現在、共同議長を務めています。

※2:カムコーダーにおける、動画でのC2PA規格対応として。2025年7月時点。ソニー調べ。

※3:動画への真正性情報の記録には、別途アップグレードライセンスが必要です。本ライセンスは提供地域が限られます。対応する動画フォーマットはMP4形式です。