『月収』Audible感想|売れない雑貨店で聴いた、お金と暮らしの話
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Audibleで原田ひ香さんの『月収』を聴いた日の、雑貨店の午後の話です。
朝から、少しだけ雨が降っています。
こちらは月収、あちらは昼寝。
うちの店の午前中は、だいたいいつもこんな調子です。
春の雨は、音まで控えめでいい。
この街のダムはまだずいぶん頼りないので、
最近は雨のほうが少しうれしい。

プクはいつもの椅子の上で、もう昼寝のしたくをしていた。
まだ午前中なのに、仕事が早い。
丸くなる前に二度ほど向きを変えて、眠りやすい場所を決めるあたり、
見ているぶんにはずいぶん丁寧である。
店は相変わらず、閑古鳥が鳴いていた。
こういう日は、きっと雨のせいだと思いたい。
昨日もその前も、たいしてにぎわってはいなかった気もするけれど、
そこまで正直になる必要もない。
前回の買い出しの帰り道から、Audibleがすっかり気に入ってしまった。
最初は電車の中だけのつもりが、最近は料理中にも聴いている。
前に、テレビを見ながら玉ねぎを切っていて、指までざくりと。
あの日以来、台所では画面を見ないことにした。
音楽か、ラジオか。
そこへ、ここ最近はAudibleが加わった。
目は手元に置いたまま、耳だけ別の場所へ行けるのがちょうどいい。
今日は、鍋に火をかけながら『月収』を聴いていた。
ずいぶん、景気のいいタイトルである。
うちみたいな店の午前中に流すには、少し生々しい。
もっと別の題でもよかったのに、こういう日に限って『月収』である。
自分で選んだくせに、耳に入るたび、少し身構える。
棚には雑貨が並んでいる。
レジもある。
店主も、いちおういる。
けれど、売上のほうは、そう簡単に風景になってくれない。

鍋の湯気を見ながら月収のことを考えるのは、なんだか少しおかしい。
おかしいけれど、笑ってばかりもいられない。
猫缶だって、家賃だって、やさしい気持ちだけでは買えないのである。
こちらは月収。あちらは昼寝。同じ店の中とは思えない。
雨が降ると、少しほっとすること。
玉ねぎを無事に切れたこと。
プクが勝手に気持ちよさそうな場所を見つけること。
そういうものは、月収の欄にはたぶん載らない。
載らないけれど、ないことにもならない。

雨はまだ、遠慮がちに降っている。
プクは椅子の上で、もうすっかり眠っている。
店には、相変わらず景気のいい話がない。
私はたぶん、明日も店を開ける。
月収のことを考えないわけにはいかないけれど、
そればかり考えていると、店の中までからからになりそうだった。
だから今日も、少し雨をうれしく思って、
眠そうな猫を見て、
とりあえず昼ごはんを作る。

まあ、それで急に売上が伸びるわけではないけれど。
鍋の湯気は、ちゃんと上がっている。
今回、店番中に聴いていた本
収入額の違う人たちを並べながら、お金だけで暮らしが決まらないところが面白かったです。
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