「今はお金がないから」は案外悪くない | 家計管理のきほん
私がこどもの頃、うちの親は「お金がないから買えない」というせりふをふつうに使っていた。
お稽古ごとにはあれこれ行かせてくれたが、休みの日にどこかに連れていってもらうとか、流行りのおもちゃを買ってもらうとか、そういうことについては、こどもがいくらがんばっても、まったく通らない家だった。
お菓子とか、ジュースなども、家にはなく、おやつはおにぎりとか、おいもとかで、飲み物は、いつも麦茶だった。友達の家に遊びに行き、おやつに、ふつうにケーキがでてきたときは、衝撃を受けた。
そんな環境で育ったためか、「お金がないから買えない」「お金がないからできない」ということに対して、みじめだとか、悲しいとか、そういう気持ちも起きない。
「お金がない」というのは、私にとって、ただの「そのときの状況」でしかない。
もちろん、年頃になれば、あれがほしい、これがほしい、となった。けれど、うちの親には通用しないので、早く自分で働いて、好きなものが買えるようになりたい、早くおとなになりたい、お金が稼げるおとなになりたい、と思いながら育った。
社会人になり、会社で働き始めると、ビジネスの場において、資金の回収というのは簡単なことではない、ということを知る。物でも、サービスでも、なにかを売っても、お金を払ってもらえない、ということが起きる。
お店にいって、お金を払わずに商品を持っていこうとしたら、捕まってしまう。しかし、ビジネスの現場では、「今はお金が払えないので」という理由で、支払いを遅らせたり、なんなら、バックレる取引先があったりするのだ。まじか。
サラリーマン時代、財務部で「債権管理」「債権保全」というしごとをしていた頃の経験だ。売ったものの代金(債権)をちゃんと回収することのたいへんさを、身をもって知った。
話を、ビジネスの現場から、消費者である私たち、に戻そう。
今、私たちは、クレジットカードを持っていれば「今はお金がないからな」と買い物を諦める必要がない。家や車など、大きな買い物も、ローンを組めば、なんでも買えてしまう。
果たして、それは、しあわせなことなのだろうか。
本当はお金がないのに、かんたんに買えてしまうことって、よくよく考えると怖くないか?
お店で万引きしたら捕まるように、クレジットカードで使ったお金も、ローンの支払いも、バックレることはできない。クレジットカード会社やローンの会社が、しごととして、本気で債権(私たちが買い物に使ったお金)を私たちから回収する。お金がなくても、支払いから逃げることはできない。
買いたいものがある。お財布にお金がない、デビットカードは持っているが銀行には残高がない。しかたがない。「今はお金がないから」で諦める。そして「今はお金がないから買えないけど、もっと稼げるようになろう!」と思う。買いたいものが買えなくても、希望はある。買えなかったことが、努力をするモチベーションになる。
このとき、クレジットカードで買ってしまったら?
翌月、その翌月も、クレジットカードの引き落としにどきどきする日々が、永遠に続く。お金がない、お金がないと、いつも不安な気持ちだ。こんなことを続けるのは嫌だな、将来が見えないな、と思う仕事もやめられない。
簡単にお金を稼ぐ方法を探すよりも、自分のお金で暮らせるスキルを磨くほうが、だんぜん、人生を身軽にする近道だと思う。
「今はお金がないから」は、実は、自分の味方になってくれるせりふ、ではないだろうか。
「今は」お金がなくても、この先、お金の心配をしないで済むようになればいい。
節約よりも、お買い得を見つけるよりも、少しずつでも毎月定額の貯蓄をして、残りのお金で暮らせるようなスキルを磨こう。
