腸内細菌が「甘いもの」を食べさせていた?意志のせいじゃなかった話
甘いものや揚げ物がやめられなくて、「また食べてしまった…」と自分を責めた経験はありませんか。腸内細菌と食欲の意外な関係を知って、食べたい気持ちへのとらえ方がちょっと変わりました。
「食べたい」は腸の中の誰かからのリクエスト?
私たちの腸の中には、数兆個もの腸内細菌が住んでいます。この菌たちにはそれぞれ好物があって、甘いものが好きな菌、脂っこいものが好きな菌、食物繊維が好きな菌がいます。自分たちが生き残るために、好物をもっと食べてほしいと、脳にリクエストし続けているんです。
腸と脳は迷走神経というルートで直接つながっていて、腸内細菌が自分たちが生き残るために、好物をもっと食べてほしいと脳に食欲シグナルを送っているのではないか、というおもしろい研究があります※1。
これは現在も世界中で研究が進められているまだ解明途中の仮説ですが、甘いものや脂っこいものがやめられないのは、自分の意志が弱いからではなく、そういう菌が腸の中にたくさんいるせいかもしれないんです。「自分が悪いんじゃなかったんや…」と、ちょっとほっとしました。
ドラマの中で実際に起きていたこと
韓国の宮廷ドラマ「チャングムの誓い」に、こんな場面があります。糖尿病を持つ超VIPのお客さまに、主人公のチャングムが命がけで野菜料理を出し続けるシーンです。最初は「草の味しかしない!」と怒っていたそのお客さまが、数日後には野菜料理をおいしいと感じるようになり、体調も回復していく、という話です。
これも単なる演出ではなく、食事が変わることで腸内細菌のバランスが変化し、おいしいと感じるものも少しずつ変わっていった様子を描いているのかもしれません。
腸の仲間を少しずつ育てていく
甘いものや脂っこいものが好きな菌たちも、私たちを守ってくれる大切な仲間です。菌の種類が多いと、腸という限られた土地とエサをみんなで満員状態で分け合っているため、悪い菌が入り込む隙間がなくなるんです。また、菌同士でバケツリレーのようにエサを渡し合って、最終的に私たちの体を守る成分を作っています。そんなふうに相互に協力し合ってバランスを取っているんです。このチームをうまく機能させるには、食物繊維が好きな菌たちにもしっかりエサを届けてあげることが必要なんです。
食物繊維は現在の日本人の摂取量が望ましい量よりも少なく、国が生活習慣病予防のために「目標量」を定めているほど不足しがちな重要な栄養素です※2。
海藻やきのこ、野菜、果物などを少しずつ食事やおやつに取り入れていくと、チャングムの誓いのように、「おいしい」と感じるものが自然に変わってくることがあります。食べたいものを無理に抑えようとするのではなく、腸内の仲間たちを少しずつ育てていく気持ちで食事を選んでみませんか。
今、何かを食べたいと感じているのは、ひょっとしたら腸内の誰かからのリクエストかもしれません。
参考文献
※1 Alcock J et al. (2014) "Is eating behavior manipulated by the gastrointestinal microbiota? Evolutionary pressures and potential mechanisms" BioEssays 36(10):940-949. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/25103109/
※2 厚生労働省「令和6年国民健康・栄養調査報告」第1部 栄養摂取状況調査の結果 https://www.mhlw.go.jp/content/001675212.pdf
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