見出し画像

うつの前兆、こころの崩壊|自己紹介シリーズ⑥【世界からベッドへ】

読めない読めない読めない

どうも、タカツダです。
今回は、いつもよりちょっと長めで、少しヘビーな内容になります。こころが崩壊する心理描写を丁寧に書きました。
メンタルが弱ってる方は読まない方がいいかもしれないです。それ以外の方はどうぞ。



離婚して、ひとりになって、研究に集中できるようになった。
……はずだった。

生活は続く。ラボは動く。実験も、打ち合わせもある。
だけど、心はどこか置いてけぼりになったままだった。
「何のために、こんなに頑張ってたんやっけ」
ふとした瞬間に、そんな言葉が降ってくる。


気がつけば、ラボの中で自分がいちばん古参になっていた。
上の先輩たちは卒業や転職でいなくなり、
いつの間にか、自分が「一番よく知ってる人」になっていた。

装置の使い方、測定のコツ、実験の準備……
日中は後輩やポスドクに教えることで終わっていく。
自分の実験は、夜。日が落ちてから、ようやく取りかかる。

博士課程の初期なら、そんな日々でも楽しかった。
学ぶことも多く、自由だったから。
でもこの頃はもう、心からは楽しめなかった。

自分は今、誰のために、何をしているの?



「やりたい」より「やらなきゃ」で埋まっていく感覚。
そして、まぶたがピクピクし始めた。
修士のときと同じ、“あの嫌な感じ”

「またこれか。でも、きっとそのうち治るやろ」
そう思っていた。思い込もうとしていた。


ちょうどその頃、いいデータが取れて、論文にしようという話が出た。
参考文献を集めて、PDFを開いて、読み始めた
──けれど。

読めない。

1、2行なら頭に入る。でも3行目を超えたあたりで、
文字がぐちゃぐちゃになって、溶けて、
ただの黒い線の塊みたいにしか見えない。



何度読み直してもダメ。

読めない、読めない、読めない。

焦る。どうしよう。
やばい。おかしい。こんなはずじゃない。


とりあえずPDFを閉じる。
気を取り直して、メールを開く。
大学からの連絡、共同研究のやりとり、何通も溜まってる。
開けない。読めない。返せない。
「あとで返そう」「今は無理」
そう言い訳して、パソコンをそっと閉じた。

でも、時間は止まってくれなかった。
教授からも聞かれる。
「タカツダくん、論文、どんな感じ?」
優しい口調が、痛かった。
全然進んでない。でも、言えない。
返事をするふりをして、また笑ってごまかした。


心臓がバクバクする。
手が汗ばんで、指が震える。
椅子に座っていられなくて、立ち上がる。
深呼吸してみる。息を吸う。吐く。
自分に言い聞かせる。

大丈夫、大丈夫、大丈夫

あの地獄の修士時代を乗り切ったじゃないか。
だから、

大丈夫、大丈夫、大丈夫


でも、
全然大丈夫じゃなかった…


なんとか手を動かして、作業してるふりをしてごまかす。
でもまたメールのことを思い出す。
また通知が増えてる。
また読めない。

やばい、やばい、やばい、ほんまにやばい。



そして、家でも変化が出てきた。
皿が洗えない。
フライパンも洗ってないから、料理もできない。
キッチンに立つ気力が湧かない。
冷蔵庫の前に立ったまま、何も考えられなくなる。

冷蔵庫の中では、
袋に入れたままの野菜が、
少しずつ液体になっていってた。

気づけば、毎日コンビニ飯。
弁当の容器やペットボトルが、テーブルにどんどん積み上がっていく。
「あとで片付けよう」「土日にやればいい」
そう思いながら、何週間も経っていた。
シンクの中の食器は、もう1ヶ月くらい手をつけていなかった。
テーブルのゴミには、ハエがたかっていた。

それを見ても、もう心が動かなかった。
その程度ではもう、「やばい」とすら、思えなくなっていた。


だんだん、夜に寝るのが怖くなった。

寝たら朝が来る。
朝が来たらメールが来る。
通知が増える。現実が迫ってくる。

怖い。起きるのが怖い。
でも眠るのも怖い。

そんな夜を繰り返しているうちに、
朝7時くらいになって、ようやく意識が落ちる。
けど、ちゃんと眠れたと思ったら、今度は動悸で11時に目が覚める。


「後輩に実験教えなきゃ」「返事もしなきゃ」「論文もやらなきゃ」
でも体も頭もついてこない。
現実だけが、容赦なく進んでいく。

そんな生活を、1ヶ月半くらい続けていた。


それでもまだ、「うつ病かも」とは思っていなかった。
自分は、ちゃんと動けてる。ちゃんと頑張れてる。
そう思いたかった。思い込みたかった。

でも、ほんとうは──

もう、なにをどうすればいいのか、わからなかった。

心の中ではずっと、

やばい、やばい、やばい。

……助けて、って。




次回は、
動けなくなった朝のこと。
そして、初めて「助けを求めた」日の話を書きます。

スキとフォローしていただけると励みになります☺️

あとがき|読むのがつらい日もあるから

この記事を書いてる時は当時のことを思い出して泣いてしまった。

うつのとき、文字を読むのがつらかった。
目で追っても、意味が入ってこない。
そんな日も、確かにあった。

いや、今でも本は読めない。
ネットの記事もAIに要約してもらって、なんとか読める。

だからいま、自分の記事を「音声」で解説する取り組みを始めています。
うつでつらい人たちのために。本当に必要な人たちに届くように。
ラジオ風に、男女2人の声で、やさしく語ってくれます。

今回の記事にはまだ音声版はありませんが、
少しずつ、"耳で聴けるnote"も増やしていくつもりです。

いいなと思ったら応援しよう!

タカツダ スキ・フォロー・コメント、どれも本当に励みになります。 ※スキはnoteアカウントがなくても押せるみたいです! それに加えて、もしも小さなチップまでいただけたなら、 僕の「明日も書こう」という気持ちの、ささやかな灯になります☺️

この記事が参加している募集