見出し画像

ある日、一番弟子がいなくなった(第四話:覚醒の時)

第三話はこちら。

📌第四話:覚醒の時📌

🔶ナカノを教育する

ナカノが直近まで勤めていた長老の現場はレガシーな保守案件だったが、うちはクソSIer業界でもガチ寄りの、0→1スクラッチ式プログラムゴリゴリ開発現場である。何それ?まあ要は無の状態からオーダーメイドで作り込む方式だ。奴のスキルを強化するにはうってつけといえるだろう。

ここでも画面主導ではなく、ドメイン駆動の考え方をベースに導入教育をした。ドメイン駆動とは、言い換えれば業務知識の表現である。業務と技術の両輪を連動させ、柔軟で保守性の高いシステムを目指すのだ。

筆者はIT現場監督としてIT土方を指揮しているが、それはあくまで戦略的な選択にすぎない。周囲との相対的な比較で評価される中、原理原則、本質を理解した絶対的な能力を磨けば、より強い輝きを放つことができる。ナカノはそれを実現しうる素材だ。

しかし、ナカノはストレス耐性が低いため、立ち上げには細心の注意を払った。そして、顧客と接触しない低負荷環境でひたすら業務に集中させたところ、スポンジが水を吸うように力を伸ばしていった。相変わらずコミュ力には難ありだが、それを補ってあまりある実務者としての素質がある。

🔶ナカノの生得術式

毎日身近で接するようになってわかったのだが、ナカノの記憶力は想像をはるかに超えていた。奴の適性はプログラミングよりもむしろ業務知識の習得に強く発揮された。何でもすぐに覚えて、しかも忘れないのである。ほんの枝葉の情報ですら、脳内データベースに索引付きで記憶される。すごい。

また、ナカノ自身も純粋なプログラミングより、顧客の要望を形にすることのほうに楽しみを感じているようだった。もとより、集中力が人外レベルなうえ、それを何時間も継続できるという特別な術式をもっている。これに異次元の記憶力を兼ね備えているため、とにかく作業の精度が高い。

一般に、精度と速度は野球のピッチング同様にトレードオフなのだが、ナカノはこれを極めてハイレベルで両立していた。高精度の成果物を量産する、スーパー作業者の爆誕である。

🔶ナカノ、獅子奮迅の活躍

ナカノが参画した当時、チーム松田は発達障害(ASD/ADHD併発)かつ境界知能(IQ80前後)疑いの新卒(のちに確定診断)と、給与月15万円のブラック企業に所属するWeb開発未経験の2年目パートナー氏で構成されていた。ナカノも実質2年目であり、どう見ても罰ゲームのような編成であった。

手前味噌だが、筆者はこの脆弱な体制で、1年以上に及ぶ大規模開発を緻密なタスク管理と進捗コントロールによって完遂した。成果物の品質も他社を圧倒しており、チーム松田の立場を完全に確立する事案となった。えらい。めっっっ…(中略)…っっっちゃめちゃえらい。

しかし、この偉業はナカノ抜きでは語れない。新卒の働きぶりがあまりにも(マイナス方向に)規格外で途方に暮れていたのだが、ナカノが次から次へと良品を仕上げてくれるため、筆者は尻拭いに専念することができた。このモンスターについてはいずれ別の記事にまとめる。

ナカノは作業者として本当にスペシャルワンであり、この仕事を通じて一家に一台を地でいく存在に昇華してくれた。難点は字が走り書きで読めないことぐらいだろう。社内でポンコツのレッテルを貼った無能どもを見返し、ここまでの成長を遂げられたのは筆者の慧眼の賜物といえる。はっはっは。

第五話へ続く。


いいなと思ったら応援しよう!