商学部と経営学部の「動詞」の違いを、スターバックスの仕事で解説
「商学部と経営学部ってどっちも会社のことを学ぶんじゃないの?」
「パンフレットを見ても、どちらにもマーケティング、会計、経営戦略って書いてあって、違いがわからない」
高校生と進路相談をしていると、生徒からよく質問を受けました。
この相談を受けたときに、僕がいつも話をしている「スターバックス」の例で「商学部」「経営学部」の違いを説明していきます。
□ 商学部と経営学部の違いは「動詞」で見る
以前の記事で紹介した通り、商学部と経営学部の違いは「名詞」より「動詞」で見た方がわかりやすい場合があります。
商学部の中心にある動詞は「届ける」です。「どうすれば商品やサービスを必要な人に届けられるのか」などの問いを考えていきます。
「届ける」を支えるのが、以下のような動詞です。

一方で、経営学部の中心にある動詞は「動かす」です。「人が力を発揮するためには、どのような仕組みが必要なのか」などの問いを考えていきます。
「動かす」を支えるのが、以下のような動詞です。

ここからは「動詞」で「商学部」と「経営学部」の違いを説明していきます。
□ 「商学部」をスターバックスの仕事で見る
スタバの仕事は、すべて「届ける」という一点に向かっています。
新作のフラペチーノが発売される前、お客さんはその商品の存在すら知りません。そこで店頭のポスターやSNSで「今だけの味」を発信し、スタバというブランドの世界観そのものを世間に「広め」ます。「飲んでみたい」と思う人が増えるほど、届ける相手の数も増えていきます。

実際に店舗にお客さんが来たら、レジで会計をして商品を「売り」ます。これは単にお金を受け取る作業ではなく、「数百円という対価と、一杯のコーヒーという価値」を「交換する」瞬間です。ここでようやく、商品が一人の手に届きます。

届けて終わりではありません。本社は「どの商品がどれだけ売れたか」「最近は甘いドリンクよりヘルシー系が人気」といったデータを集め「分析し」ます。この分析結果が、次にどんな商品を、どう広めるべきかを決める材料になります。

これらの動詞すべてを裏で支えているのが「つなげる」という考え方です。
例えば、エチオピアの農園で収穫された豆と、日本の店舗にいるお客さんは、本来何の関係もありません。商社やスタバが間に立ち、生産者・市場・消費者を一本の線で「つなげる」ことで、はじめて「広める」「売る」「分析する」という活動が可能になります。

以上のように「どうすれば商品を必要な人に届けられるか」という一つの問いを、広める・売る・分析する・つなげるといった動詞に分解して扱う学問だと考えることができます。
□ 「経営学部」をスターバックスの仕事で見る
スタバの仕事は、商品を届けるだけでは成立しません。どれだけ魅力的な新作フラペチーノがあっても、店舗がうまく回らなければ、お客さんに安定して商品を届けることはできません。
そこで必要になるのが、ヒト・組織・仕組みを「動かす」力です。
会社は「どの地域に出店するか」「店舗にどこまで裁量を持たせ、どこから本社が決めるか」といった方針を「決め」ます。この決定がなければ、会社全体が同じ方向に進めません。

方針が決まったら、それを実行する人を「組織し」ます。店長・バリスタ・エリアマネージャーという役割に人を当てはめ、新人バリスタを一人前に「育てる」ことで、初めて現場が動き出します。

人が揃っても、具体的な動き方が決まっていなければ機能しません。混雑時に誰が注文を取り、誰がドリンクを作るかといった業務の流れを「設計し」、待ち時間や接客のばらつきといった課題が見えたら「改善し」ます。

人員・コスト・売上といった資源を「管理し」、店長やマネージャーが現場のメンバーを目標に向けて「導く」ことで、店舗拡大やモバイルオーダー導入といった会社の成長につながります。

成長すればするほど、最初の「決める」に戻る必要が出てきます。1店舗なら店長がほとんどのことを決められますが、100店舗、1000店舗になれば、同じやり方では回りません。
経営学部が考えているのは「商品を届け続けるために、会社の中の人と仕組みをどう動かすか」です。
□ 進路選択ワークブックを作成しました
この記事で紹介した「動詞で学部を考える方法」を、実際の進路面談で使えるワークブックにしました。
生徒が「マーケティングに興味があります」と言ったとき、すぐに「商学部が合いそう」と判断するのではなく、何に惹かれているのか、どのように関わりたいのか、それに近い経験があるのかを整理する内容です。
生徒用ワークシート、教師用見取り表、面談ロールプレイを付けています。ぜひ、ご覧ください。
□ おわりに:学部の違いは「何を動かしたいか」
商学部の「広める」も、経営学部の「成長させる」も、会社の内と外、両方に関わっています。ブランドを広めるには社内のチームが動く必要があります。つまり、商学部と経営学部は、関わる範囲が完全に分かれているわけではありません。
しかし、2つの学部には重心の違いがあります。
商学部は、商品やサービスが「会社の外に出ていく瞬間」に重心を置きます。どう届け、どう売り、どう広めるか。考える起点は「お客さんや市場にどう映るか」です。

経営学部は、商品やサービスを生み出す「会社の内側の動き」に重心を置きます。どう人を配置し、どう仕組みを作り、どう組織を成長させるか。考える起点は「会社の中の人や仕組みがどう機能するか」です。

進路を考えるときも、この違いがヒントになります。「お客さんや市場に向き合うことから考えたいのか」「組織や仕組みを作ることから考えたいのか」。どちらに自分の関心の出発点があるかが、学部選びの一つの軸になります。
学部選びの「適正」については、以下の記事を参考にしてください。
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