寺田和代「本と歩く アラ還ヨーロッパひとり旅」 第4回 イタリア・プーリア州篇(3)
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(3)ピッツェリア裏の洗濯機付き貸し部屋に安堵
予約した貸し部屋は駅前から市内循環バス数分、下車徒歩10分とある。
すでに夜8時を回っていたけど、まだ開いていた有人切符売り場の不機嫌そうなマダムが、こちらの一夜漬けイタリア語の挨拶に一瞬ニコリとし、バス路線図までくれたことに力をもらう。老眼の目に細かな路線図はもう見えなかったけど、ソロ旅ではそんなことにさえ励まされる。
無事にバスを降り、グーグルマップにも表示されない旧市街の迷路を行きつ戻りつするうち、神の助けか、ある細道からふっと開けた場所に抜けた。
宿主が事前に送ってくれた写真通りの繁盛ピッツェリアが目の前ではないか。
緊張がほどけ、広場のあちこちでピザやビールを楽しむ人々の情景とアドリア海からの潮風を感じながら、ぼんやり突っ立っていると、カズヨ? と小さな声。振り向くと、実直そうな初老男性。
あなたが(宿主の)アレッサンドロ?

到着予定は20〜21時とメールしていたから、広場で1時間近く待っていてくれたのかも。あとでそう思ったけど、その時はゴールした安堵と疲れで口がふがふがしてお礼もお詫びも言えない。
貸して、とリュックを持ってくれた彼の後からピッツェリア脇の小さな扉を入り、細い石段を登った先の扉が2泊予約した部屋だった。
ミニキッチン、洗濯機付きの清潔な1DK。安心と嬉しさで緊張がドッと緩む。設備の簡単な説明を受けてひとりになるや、最後の力を振り絞ってシャワーと歯磨きをし、何も食べずにベッドに倒れ込んだ。日ごろの入眠困難が嘘のように1分でわからなくなった。

翌日、朝の光の中で貸し部屋のよさをしみじみ実感する。
昨夜、半分眠りながら聞いたアレッサンドロの説明によれば、一家が同じ建物内に所有する3部屋のうちの1つらしい。2泊で118ユーロ(1泊59ユーロ/約9440円 約8ヶ月前のweb予約価格)は、ホテルやB&Bはもちろん、似た条件の貸し部屋と比べても良心的価格。
家主の人柄や、設備や清潔さも言うことないし、なんたって洗濯機付きの価値が大きい。というのも一日歩き疲れた晩、小さな洗面所で衣類を手洗いし、ドライヤーで延々乾かす作業をもうしたくないのだ。洗濯機があればいっそう自由な気分で旅ができるし、それがあるから旅の荷物をリュックひとつに圧縮できた。この先も一泊のみで通りすぎる2つの街を除き、予約したのはみな洗濯機付き部屋。
人それぞれだろうけど、長年渡航ひとり旅をしてきた老ツーリストである自分にとっての宿選び5大条件は、安全、アクセス、清潔、手頃な料金、そして洗濯機なのだ。


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