総武線、始発電車、朝光に散りぬる。
夏が来るとおもいだす。
あれは、いつのことだったか。
何年前だったかさえ、あやふやになるほどには過去の出来事だ。
もう時効だろう。
幾度呟いたことか。過去に縛られたわたしの魂を解放してやりたい。
春華堂のうなぎパイ(※1)のように何層にも重ねられた積年の悔恨と、酸味と苦味の混じった哀愁とともに。
もういいだろう。
時効のはずだ。時効であってくれと願う。
一抹の希望とバファリンの優しさ成分以上の恥じらいと、愛しさと切なさと心細さとともに。
だから、わたしの犯した罪をここに記すことにしよう。
罪の告白というやつだ。
なんか響きが超イイじゃん。
今すこし自分に酔ってる。
……む、いかん、自分でハードルを上げてどうする。
現実にレイドバックしよう。あれ、これ、使い方あってる? フィードバック? ゲットバック? あ、バックパック? よく知らない言葉を、なんとなくで使っている。
だって、しょうがないじゃないか、
わたしは、そういう人間なのだもの。
このような薄っぺらい人間の語ることなので、
期待値をぎりぎりまで下げて、お読みいただきたい。そうだな、歩き始めたこどもが、やすやすと跨げるくらいの設定で頼む。
では、おもひで補正が終わったところで、過去へと馳せ参じる。
いーざッ!
(※1)春華堂のうなぎパイの生地は、うなぎパイ職人の
常軌を逸した怨念……いや、熟練の手技によって!約9,000層もの織り込みがなされている。
参考までに、不二家のホームパイは薄利多売のがっぽり精神……いや、一人でも多くの笑顔のために!オートメーションにより約700層ほどの織り込みがなされている。
ある夏のひま白む東雲、
わたしは自分史上最大の危機を迎えていた。
ここは、JR総武線下りのホーム。一号車の一番ドア。誰もいない始発電車の長椅子に座り、発車時刻を待っていた。
すこし前まで、友人とその連れの女人たちと戯れていた。まあ、そのあたりのことは割愛しよう。
要するに、深酒して朝帰りというわけだ。
宴は、短い夜を連れて終わり、各人が家路についた。路線が違ったため、親睦を深めた女人らとは駅で別れていた。
開け放たれたドアからは、ぬるい朝風だけが乗り込む。わたしは、ひとり、居座る睡魔と、夏休みのこどものような微熱を抱え、時を持て余していた。
すっかり弛緩した筋肉と、にぶった感覚では、前兆を捉えることができず、見逃した。かかかかった魚を逃してしまう釣り人のように。かが多い気がするが、気にしない。
しばらくして、ようやく発車のメロディが鳴る。なんだか、優しいじゃないか。急かされない合図は、安らぎを与えてくれる。
さんきゅ、ジェーアール。
心のなかで呟く。もしかしたら声に出ていたかもしれないが、しかし、ちいさいことは気にしない。酒の力だ。しまざきわかちこ、しまざきわかちこ。
ぷしゅー、とドアが閉まり、がたん、と音を立て始発電車は動き始める。かすかな振動がわたしの何かを刺激する。
門が開く。
そして、わたしは、催した。
断っておくが、お小水ではない、おゲロの方だ。車両内でおしっこ垂れるほど、理性を捨てちゃいない。
だが、如何ともしがたい。まるで、黄泉の国から戦士たちが帰ってきたかのようだ。脳内で、わたしの体内の様子が可視化される。
「戻ってきた!
黄泉の国から戦士たちが帰ってきた!
続け!戦士たち!
総武線始発電車へ行こう!」
いや、ちゃう、そんな場面ちゃう!
やばい、やばいよやばいよ、出川。
押すなよ、押すなよ、ぜったい押すなよは、
フリじゃないって、竜ちゃ〜んッ!!
あ、だめ……
そこからのわたしは速かった。おそらく、光さえも置き去りにしていただろう。嘘だけど。
反射的に、つまみを持ち窓を開ける。この間、わずか0.5秒(体感的に)。それは進化の過程で細胞に記憶された、生存のための条件反射だったのかもしれない。開いた窓から頭を突き出したところで、わたしの忍耐は力尽きる。
オロッ、オロロロッ……
出口を見つけた戦士たちは我先にと勇んで外の世界へと飛び出していく。
オロッ…オロロロッ……
オ〜ロロロロロロロロロロロロロロロロロロロ……ぅオエッ……
オ〜ロロロロロロロロロロロロロロロロロロロッ……ふヒィッ……
オ〜ロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロ………んオエッ……
オ〜ロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロ………んグヘェ〜………
オ〜〜〜ロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロ〜〜〜〜〜〜〜〜〜ッ!!!!!!!!
戦士たちは射し始めた朝光を浴びて、きら、きら、きらり、と輝きながら散ってゆくであります。
ああ、きれいだな……
ふと、そんなことをおもった。
薄明のなか疾走する車内で最後の理性を拾ったわたしの脳内では、なぜか井上陽水の『最後のニュース』が流れていた。
ただあなたにgood by。
薄れゆく意識の片隅でわたしは声にならない言葉を呟いた。
戦士たちよ、安らかにお眠りなさい、と。
(めでだし、めでたし)
✏︎タネアカシ、とか、あとがき。
なんでまた、こんな記事を書くハメに……書いているかというと、バトンが回ってきたからなのだ。いつだってリレー企画は突然にやってくる、通知とともに。
だから、わては、通知オフにしてる。なんなら、アプリに使用制限もかけとる。じゃけんど、アプリの端っこにまるこいのつく。
あれ、気になる。
気になるから、アプリ開く。すると、もうあかんの、戻れんの。通知マークのところにぎょうさんたまってんの。みちゃうよね〜。そこによ?
『あなたの記事が紹介されましたっ!!!!』
みたいのが書いてあると、(ノ∀ヾ*)イヤン
ってならん? わて、なる。
だれかーが、神みたいなやさしーのが、しょーかいば、してくれたん♡
ってならん? わて、なる。
で、ポチッとタップして、シュンッと見に行くわけさ。で、今回も見に行ったわけさ、シュンッと。
……
……
……
はい、罠でした〜。
エサ、撒かれました〜。
今回の刺客……釣り客? や、お客? てかご紹介者さま、は、京さん。通知ぴろりん、アプリたぷりん、時空わぷりんした結果、わてがたどり着いたのは、以下のno+e記事だった。
京さんやん。
京さんならセーフティーや。
そうおもって安心して読んだら、よ。なんやねん、「エッセイしりとり」って。こんなん「似非(エセ)しりとり」やん。なんなら「似非エッセイSiri取り合戦」やん。わては、呟いたよ。
T、K、G!
ん、なんかちゃうな。
これやと、朝のごちそうご飯やんか。食材の妥協なきこだわりと、食のあくなき探究心の権化の。じゃなくて、こっちゃ。
O、M、G!
ガーって、じぶんのこと欧米のアヒルかとおもったよ。
せやけど、わて、人間やった。まだ人間でいさせて。
せやから、仕方なしに隷属……期待に応える。
これが事の顛末よ。
わては、しりとり被害者救済措置を求む!
無理なら傷ついたマイ・センサリー・ピュアハートにみなさんの気持ちばかりの「♡」をいただけたら、うれしい。
しばらくSNSを遮断し、町を離れ、誰にも会わず、清流と、野草と、木の実ナナで静かに暮らそうとおもっている。逆に、やかましくなりそうなにほいがするが木ノ精(気のせい)だろう。
木の実だけに。
本件の愉快犯
↓
[日程的に最後の記事(ニュース)なので、一首]
愉快犯を回収し走る総武線の窓から散りぬるオロロ

U|君色文庫
(3000字)
