【短編 童話】第十二章『ヌァザからの手紙』| 落ちこぼれ魔女ターナ
久しく会えてないお友だち
魔女ターナの下に
お友だちから手紙が届いた。
名を獅子皇ヌァザという。
紅茶とスコーンを用意して
読み始める。
『吾が友ターナ。
久しぶりである。
獅子皇ヌァザである。
息災ないか? 吾はまぁまぁだ。
此方のサバンナは毎日暑い日が続き、
近くにある水場はいつも動物たちの
憩いの場となっている。
先日も水を飲みに来たシマウマと
イボイノシシの間で諍いがあり
そんなときは、吾も臣下に駆り出され
調停を頼まれる。
いやはや、頂点に立つものは
苦労が絶えぬ。
最近では人間たちが観光と称し
吾々の日常を覗きに来ることが
多くなった。
妻リリィもそうだが
動物たちの雌は
おめかしに余念がなく
日夜忙しくしている。
ときどきルール違反で
人間たちのなかには
鉄砲をこちらに向けて来る者もいる。
そんなときは、協力者たちと連れ立ち
追い払うこともままある。
友よ。
同じ人間だからといって
貴女を並べて考えてはいない。
貴女一人を責めている訳ではなく
いつの世にも不届き者はいるものだ』
ターナはスコーンを割りながら
ヌァザの温かさに触れてほっこりとした。
続きを読んだ。
『先日、変わった依頼が
人間たちからあった。
水場近くで
数千年前の遺跡が見つかったという。
人間たちは現地調査を望み、
吾に仲間たちへの橋渡しを頼んできた。
未知の発見というものは
吾々にも目新しく興味深いものだ。
サバンナの景観もしばらく前から
変わりつつある。
土地も水場も大切なたからものである。
協力者たちとともに吾々も
その維持には力を尽くしたいと
常々思っている。
吾が友ターナ。
貴女とも、しばらく会えてない。
また会って
カリーブルストでも頬張りながら
貴女の住む地を散策したいものである。
あの香辛料の味が忘れられぬ。
当面は望めそうもないが。
時間があれば、貴女にもこの地に
来てほしい。
リリィも会いたがっているし、
臣下を紹介して
サバンナの地を案内したい。
なにより水場から望む
真夜中の星空は
絶景である。
是非とも観てもらいたいものだ。

いつになろうとも吾は待つ。
動物たちに呼びかけるとしよう。
あの星空の下で
貴女に祈りを捧げよう。
いつか会えるのを楽しみにしている。
では、またな。
吾が友ターナへ。
獅子皇ヌァザ』
読み終えたターナは
紅茶をひとくち口に含むと
以前訪れたサバンナの地を
懐かしむのだった。
星空への憧れは、今も変わらない。
「会いたいな……。
会えるといいな」
<#4 The Emperor>
つづく
Eva Cassidy - Fields of Gold
次回 第十三章 復活祭の飛梅
