「バス運転手はやめとけ」は本当?|運輸業界の離職率を調べたら、まさかの10.2%でした【Her Shift】
「バス運転手 やめとけ」——転職サイトの検索窓に「バス運転手」と打った瞬間、次の候補にこの言葉が並んでいるのを見て、指が止まった。そんな経験はないでしょうか。
実際に検索してみると、体力的につらい、拘束時間が長い、給料が安い…といった声がたくさん出てきます。せっかく気になっていた仕事なのに、これを見て「やっぱりやめておこう」と一歩引いてしまう。もったいないと思いつつ、その気持ちもよくわかります。
この記事では、「やめとけ」と言われる理由を一つひとつ確かめながら、実際に辞める人がどれくらいいるのか、そして今どんな変化が起きているのかを、正直にお話しします。
クイズです。バス運転手を辞める人は、他の仕事より多い?少ない?
きっと「多い」と答えた方が多いのではないでしょうか。「やめとけ」という言葉がこれだけ検索されているのだから、当然そう思いますよね。
——答えは「他の仕事より少ない」です。厚生労働省の令和6年雇用動向調査によると、運輸業・郵便業で働く人のうち1年間で仕事を辞めた人の割合(離職率)はおよそ10.2%でした。これは全産業の平均14.2%より低い数字です(※1)。
もちろんこれはバス運転手だけの数字ではなく、トラックやタクシーなど運輸業界全体をならしたものです。「やめとけ」という声の大きさと、実際に辞める人の割合が必ずしも一致しないのは、意外に感じるかもしれません。
とはいえ、辞める人が一定数いるのも事実です。ここからは、実際によく挙げられる「辞めたくなる理由」を、一つずつ確かめていきます。

壁①:生活リズムが崩れる不安
まず挙げられるのが、早番・遅番・中休勤務といった不規則な勤務時間です。「家族と生活リズムが合わなくなりそう」という不安は、正直な感覚だと思います。実際、早朝便や深夜便がある会社では、体をその働き方に慣れさせる期間が必要になります。

ただ、ここは近年ルールが変わってきているところでもあります。2024年4月、自動車運転者の労働時間を定める改善基準告示が改正され、1日の拘束時間の上限は16時間から15時間に短縮、休息時間も「継続11時間以上を基本」とする方向へ引き上げられました(※2)。働く時間を短く、休む時間を長くする流れは、今もはっきり続いています。拘束時間の実際についてもっと詳しく知りたい方は、こちらでも数字ごと解説しています。
制度が変わっても、日勤中心かどうかは会社によって差があります。ここは求人票だけでは見えないので、見学のときに実際の勤務パターンを聞いてみるのがおすすめです。
とはいえ、生活リズムの壁より先に、多くの人がつまずくのはもっと手前の壁かもしれません。
壁②:大型車を運転する自信がない
「あんなに大きい車、自分に運転できるのだろうか」。これも、よく聞かれる不安です。この感覚も、間違っていません。今のあなたはまだ、大型車を業務として運転した経験がないのですから、自信が持てなくて当たり前です。
ただ、免許を取る段階から、実はハードルが下がってきています。これまでバスの二種免許はマニュアル車の操作が必須でしたが、2026年4月、中型自動車第二種運転免許にAT(オートマチック)限定の区分が新しく設けられました(※3)。クラッチ操作に自信が持てなかった方にとって、免許取得の入り口が広がったということです。大型第二種免許のAT限定区分も、2027年10月に導入が予定されています(※3)。
さらに、免許を取ったあとも、内輪差や死角の大きさに慣れるまでは、先輩ドライバーが同乗して指導してくれるのが一般的です。「一人で判断しなければいけない」という不安は、実際には研修期間である程度やわらげられる設計になっています。もちろん、車両感覚に慣れるまでの期間には個人差があり、誰でもすぐに平気になるわけではありません。
車両への不安がやわらいでも、次に気になるのはやはりお金の話です。
壁③:給料が上がりにくいのではという不安
バス運転手の平均年収は、全国でおよそ461万円といわれています(※4)。「思ったより少ないかも」と感じた方もいるかもしれません。
ただ、この数字をそのまま受け取らない方がいいです。全国平均には定年後に再就職した方の給料も含まれていて、その分が平均を押し下げています。働き盛りの40代だけで見ると、およそ499万円。東京都に限れば、およそ561万円というデータもあります(※4)。月にすると、東京の561万円はだいたい月46〜47万円ほどのイメージです。「どこで、どんな路線を、どれくらいの年数やるか」で、金額はかなり変わってきます。
この背景にあるのが、深刻な人手不足です。大型第二種免許を持つ人は、この5年でおよそ8万人以上減っていて(※5)、国土交通省は2030年に全国でおよそ3万6千人が不足すると見込んでいます(※6)。会社側が「なんとか来てほしい」と考えている状況は、免許取得費用を会社が負担する制度が増えていることにもつながっています。その仕組みはこちらで詳しく紹介しています。
とはいえ、人手不足だからといって、どの会社でも給料がすぐに上がるわけではありません。処遇の改善スピードは会社によって差があります。お金の壁の先に、もうひとつだけ、正直に向き合っておきたい壁があります。
壁④:女性が少ない職場に馴染めるか
バス運転手のうち、女性の割合はおよそ2.9%です(※4)。100人の営業所があったとして、女性はまだ3人に届かないくらい、という計算になります。「男性ばかりの職場で浮いてしまわないか」という不安は、この数字を見れば自然な感覚だと思います。
これは「女性には向かない仕事だから」ではなく、単純にまだ選択肢として知られていない面が大きいと私たちは考えています。人手不足を背景に、女性の採用に力を入れる会社は増えてきていますし、女性用のトイレや更衣室、仮眠スペースの整備を進める営業所も出てきています。ただし、この整備状況は会社によって差が大きいのが実際のところです。求人票ではわからない部分なので、見学のときに遠慮なく確認してほしいところです。
数字の壁も、環境の壁も、ここまでで一通り見てきました。最後にもうひとつ、正直にお伝えしておきたいことがあります。
正直に:それでも大変な面はあります
ここまで「変わりつつあること」を中心にお伝えしてきましたが、大変な面がゼロになったわけではありません。制度が変わっても、実際の勤務が上限ぎりぎりに近いかどうかは会社差がありますし、大型車の運転そのものが体質的に合わない方もいます。長時間の運転で腰や肩に負担を感じる方もいるでしょう。女性用の設備が整っていない営業所も、まだ残っています。「やめとけ」という言葉の背景には、こうした本当の大変さも含まれています。
まとめ:辞める理由も、続く理由も、人それぞれ
離職率だけを見れば、バス運転手は「他の仕事より辞める人が多い仕事」とは言えません。それでも辞める人がいるのは、生活リズム・運転への不安・お給料・職場環境という、具体的な壁のどれかにぶつかったからです。そして、そのどれもが、ここ数年で少しずつ変わってきている壁でもあります。
ひとりで運転に集中する時間が苦にならない方、決まった路線をコツコツこなすのが得意な方には、合っている仕事かもしれません。逆に、毎日の勤務時間がある程度変わる働き方の方が合っている方には、別の選択肢の方がよい場合もあります。「やめとけ」という声だけで判断せず、実際の会社の中身を見てから決める。それも、大事な判断材料の一つです。
Her Shiftは、女性向けに特化し、タクシー・バス・配送のドライバー職を横断して扱う転職支援サービスとして日本初(※当社調べ、2026年7月時点)。求人票ではわからないこと——女性が何人働いているか、トイレや更衣室、シフトの融通、子育てとの両立のしやすさ——を会社にじかに聞いて、一人ひとりに合った職場探しをお手伝いしています。
「転職するかまだ決めていない」「ちょっと話を聞いてみたいだけ」でも大丈夫です。
▶ 無料で相談してみる
▶ LINEで気軽に相談する
この記事について 株式会社Unitas(Her Shift運営)。子育てと仕事を両立しながら働く社員が多くいる会社です。「働き続けられるかな?」を考えるときに何がわかっていると安心か、同じ目線で考えながら、会社にじかに聞いた情報をもとにお届けしています。 記載のデータは執筆時点の公開情報に基づきます(各記事内に出典を明記)。
※1 厚生労働省「令和6年雇用動向調査結果の概況」表4-2。運輸業,郵便業の令和6年(2024年)の離職率は10.2%(入職率10.0%)。全産業平均の離職率は14.2%(入職率14.8%) ※2 厚生労働省:自動車運転者の労働時間等の改善のための基準(改善基準告示)、2024年(令和6年)4月1日施行の改正内容。バス運転者の1日の拘束時間は改正前の上限16時間・休息期間8時間以上から、改正後は上限15時間(基本13時間以内、14時間超は週3回まで)・休息期間は継続11時間以上を基本とし9時間を下回らない、に変更 ※3 警察庁:中型自動車第二種運転免許のAT(オートマチック)限定区分は2026年4月1日から導入。大型自動車第二種運転免許のAT限定区分は2027年10月1日から導入予定 ※4 厚生労働省「令和6年賃金構造基本統計調査」等をもとにした推計。バス運転者の全国平均年収はおよそ461万円、40〜44歳・45〜49歳の年代でおよそ499万円、東京都はおよそ561万円。女性比率はおよそ2.9% ※5 警察庁「運転免許統計 令和6年版」。大型第二種免許保有者数は令和2年末の847,769人から令和6年末の765,936人へ、5年間でおよそ8万2千人(約9.6%)減少 ※6 国土交通省の推計により、2030年には全国でおよそ3万6千人のバス運転手が不足する見込み
📖 女性ドライバーへの転職を、全体像から知りたい方はこちら
